「重要土地等調査法案」に反対する平和フォーラム見解

2021/3/26

「重要土地等調査法案」に反対する平和フォーラム見解

フォーラム平和・人権・環境

事務局長 竹内 広人

 3月26日、政府は「重要土地等調査法案(重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律案)」を閣議決定した。法案は、原子力発電所や基地などの「重要施設」の周辺区域の土地が「機能を阻害する行為の用に供される」ことを防止するために制定するとされており、適用区域として「注視区域」と「特別注視区域」が設定される。

 「注視区域」と「特別注視区域」については、政府に利用実態の調査権限が付与され、調査結果をふまえて、対象施設の機能を阻害する行為に利用される恐れがあると判断された時には、政府は中止勧告・命令ができる。またこれに加え、「特別注視区域」では、一定面積以上の土地売買に、利用目的の事前届け出が義務付けられる。従わない際は2年以下の懲役か200万円以下の罰金が科され、虚偽申請にも罰則が設けられる。

 また、法案では、具体的な規制区域や必要とされる個人情報の提供などについて、政令や告示で個別指定されることとなっており、恣意的に運用される危険性をはらんでいる。特に、「特別注視区域」に指定された区域では、「事前届出」の際に、政令で調査項目が歯止めなく拡大することが懸念される。基地や原発周辺1㎞の規制範囲に居住する市民や平和団体事務所等の所有者について、政府が職歴や戸籍などと照合して、思想・信条に立ち入る恐れがある。

 以上の通り、この法案は、日本国憲法第29条で保障された財産権を侵害しかねない内容となっているばかりでなく、個人情報の過度な調査によって、基本的人権そのものを侵害しかねない内容となっており、問題である。私権制限は最小限であるべきで、安全保障をことさら持ち出し、国民の権利に過度な制約をかけるべきではない。

  今後、国会において、「重要土地等調査法案」の審議が行われることとなる。平和フォーラムは、本法案に反対し、立憲野党と連携しながら、廃案を求めてとりくみを進めていく。

以 上

 

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東海第二原発運転差し止め判決に対する原水禁声明

東海第二原発運転差し止め判決に対する原水禁声明

3月18日、首都東京に一番近い原発である日本原子力発電(原電)の東海第二原子力発電所(茨城県東海村)について、水戸地方裁判所(前田英子裁判長)は再稼働を認めない判決を言い渡しました。

判決では、原発事故が起きた際に、住民を避難させるための避難計画や防災体制が、十分整えられていないことを理由に、運転の差し止めを認める初めての司法判断を示しました。判決は、原発を動かす以上、住民の生命を確実に守る必要があるという重要な課題を突きつけています。それは当然、他の原発においても避難や防災の実効性の再検討を求めるものです。

東海第二原発では、原発から半径30km圏内に94万人が暮らし、原発で重大な事故が起きた際に、確実かつ安全に避難させることができるかが問題となっていました。

判決では「30km圏内の住民が避難できる避難計画と体制が整っていなければ、重大事故に対して安全を確保できる防護レベルが達成されているとはいえない」とし、「避難計画の策定は、14市町村のうち避難が必要な住民が比較的少ない5つの自治体にとどまっていて、人口の多い水戸市などは策定できていない。5つの自治体の避難計画も複合災害の課題をかかえている」と指摘しました。そのうえで、現在策定された避難計画も不十分として「実現可能な避難計画や実行できる体制が整えられていると言うには程遠い状態で、防災体制は極めて不十分だと言わざるをえない」と、東海第二原発の再稼働を認めませんでした。「避難・防災」体制の不備が住民に具体的危険がおよぶとして、差し止めの判断を下したことは画期的であり、他の原発訴訟に大きな影響を与えるものです。

一方で、原告が主張した「地震」や「津波」「火山噴火」などについて、「規制委員会の審査に見過ごせない誤りや欠落があるとまでは認められない」としたことには、絶対に承服できません。同日、広島高等裁判所では、伊方原発訴訟に対する四国電力の異議審において、巨大噴火や活断層の存在の可能性を退けた判決が下されました。自然災害のリスクを矮小化し、住民の安全を顧みない姿勢は、福島原発事故を経験した日本社会に、決して受け入れられるものではありません。

これまで原発は、多重防護を前提に過酷事故など絶対に起こらないとしてきました。それが「安全神話」につながり、2011年3月11日の東日本大震災・福島第一原発事故を起こしたと考えます。多重防護が自然災害によって打ち壊された際の最後の砦が、第5層の防災体制であり、そこには実行性ある避難計画の策定が求められます。

日本では防災計画の策定は、自治体に求められていますが、狭隘な国土に人口が密集する日本においては、実効性のある避難計画の策定は、現実的に不可能と言わざるを得ません。そのことを無視し、原発の再稼働を強行することは、今回の裁判でも指摘されているように、住民の「人格権」を侵害するものでしかありません。

原水禁は、原電に対して、避難計画が現実的に不可能なことを認め、再稼働を追及せず、すみやかに東海第二原発の廃炉に踏み切ることを求めます。

2021年3月19日

原水爆禁止日本国民会議

議長 川野 浩一

 

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「福島原発事故から10年」(原水禁アピール)

2011年3月11日の東日本大震災・福島原発事故から10年が経過しました。

東日本大震災・福島原発事故により、お亡くなりになられた方々に心から哀悼の意を表します。また、今もなお、かつての生活を取り戻せず、苦難の日々を過ごされている方々にお見舞い申し上げます。

福島原発事故の廃炉・収束作業は、10年が経過しても、約880トンと言われている溶融した核燃料、デブリの全貌は把握できていません。2021年中の予定とされていたデブリ取り出し開始が断念されるなど、廃炉に向けての作業は、高線量の放射線に阻まれ、困難を極めています。事故収束に向けて、最大の問題であるデブリ取り出しの具体的な工法も見えず、山積する課題に、事故後30年から40年とされた廃炉作業の「完了」は、全く見通しが立たない状況にあります。

たまり続けるトリチウムなどの放射性物質を含む汚染水(ALPS処理水)は、現在約124万立方メートルとなり、日本政府は「海洋放出」によって処分しようとの見解を発表しています。「海洋放出」ありきの議論は、福島県民・漁業従事者などを置き去りにしてすすめられています。復興に向けた、これまでの福島県民をはじめとする多くの方々の努力を水泡に帰きすような事態が想定されます。

事故から10年が経過しても、福島県では県内に7,185人、県外に2万8,505人、避難先不明者13人の合計3万5,703人(2021年2月8日復興庁調査に基づく、3月5日現在の被害状況即報[福島県災害対策本部発表])が、長期の避難生活を余儀なくされています。また、福島県内の震災関連死と認定された人は2,320人[同発表]で、前年度より13人増えています。一方、政府は、避難者の実情を考慮することなく、「帰還困難区域」の指定を解除し、補償の打ち切りや帰還政策をすすめています。被災者を社会的・精神的・経済的に追い詰め、切り捨てていく政策は決して許せません。

事故の責任の所在もあいまいなまま10年が経過しました。いくつかの裁判において、国・東京電力(東電)の責任を認める判決が出されましたが、国・東電は、その責任を果たしていないのが現状です。

東京オリンピック・パラリンピック開催に向けての「復興」のかけ声の中、事故を「風化」させ、なかったものにしようとの企図が見え隠れします。事故から10年が経過しましたが、原因究明や責任追及が終わった訳ではありません。避難者が全て帰還できたわけではありませんし、失われたコミュニティーが全て再建されたわけでもありません。そして廃炉作業が終了したわけでもありません。事故は終わっていません。今も続いていることを私たちは胸に刻むべきです。

日本政府は、脱原発を決断せず、原発再稼働をすすめ、核燃料サイクル計画を推進し、事故以前と変わらない姿勢に終始しています。そのことが、再生可能エネルギーの進捗を拒んでいます。しかし、原子力をめぐる環境は、この10年で大きく変化しました。事故当時54基あった原発は、事故後21基が廃炉となり、新規原発は立ち上がっていません。原子力政策の要と言われた核燃料サイクル計画も、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉などによって政策の破綻は明らかです。今や原発は「廃炉の時代」を迎えています。

 原水禁は、一貫して「反原発」「脱原発」を掲げて運動をすすめてきました。私たちの力がおよばず福島原発事故を許してしましましたが、今後の第2・第3のフクシマを止めなければなりません。原水禁は、一刻も早い脱原発社会の実現に向けて、さらなる努力を重ねることを「3.11」に改めて誓います。

2021年3月11日

原水爆禁止日本国民会議

議長 川野 浩一

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さようなら原発1000万署名 三次提出432,877筆(合計8,811,877筆)

3/5提出しました。

http://gensuikin.peace-forum.com/2021/03/10/20210305sayounra-signature/  原水禁

432,877筆(合計8,811,877筆)

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「審査ガイド」パブコメ無用発言に抗議する

原子力規制委員会委員長 更田豊志 様3月3日の原子力規制委員会において更田委員長は、審査ガイドに関するパブコ
メは必要ないと発言した。そればかりか、審査ガイドは参考に過ぎず、審査官ば
かりでなく、申請者もそれに縛られるべきではない、ガイドの規範化が福島事故
を招いたのだと暴論を吐いた。地震動審査ガイド、火山ガイド等、あらゆるガイ
ドの改定においてパブコメを廃止しようとするものだ。これは福島事故の教訓を
踏みにじり、司法や国民の監視・チェックを拒否して原子力村独自の壁を築こう
とするものである。このような姿勢に強く抗議する。この発言は、議題4「規制基準等の記載の具体化・表現の改善について」の中で
出されている。そこでは、今回は見送りになったものの、昨年12月4日大阪地
裁判決が依拠した地震動審査ガイドの「ばらつき条項」の表現を「誤解を招くた
め」変える事項も含まれている。司法の批判にまともに応えるのではなく、ガイ
ドの表現を変えることによって批判から逃れようとする意図が見えている。この判決に関連して更田委員長は昨年12月9日記者会見で、審査ガイドは「サー
ビス」的なものとの趣旨を述べた。しかし、地震動審査ガイドの目的は、審査官
等が基準に関する規則並びに規則の解釈の「趣旨を十分踏まえ、基準地震動の妥
当性を厳格に確認するために活用すること」と明確に規定されている。基準規則
(地震による損傷防止は4条)の記載は抽象的なので、審査ガイドによって具体
的内容が示されないと審査は成り立たない。
この地震動審査ガイドは、福島事故を受けて13回にわたる検討小委員会での審議
を経て策定され、パブコメを経て確定されたものである。このガイドに審査官が
縛られるべきでないというだけでなく、規制される側の申請者も縛られるべきで
ないとは、これでは規制が成り立たないのは明らかである。

3月3日の委員会では、更田発言に田中委員と山中委員が追随し、他の委員は沈
黙したままであった。福島事故から10年目を迎えたこの時点で、事故の教訓が踏
みにじられようとしていることにわれわれは強く抗議する。

要 請 事 項
1.審査ガイドのパブコメ無用論は撤回し、これまで通りにパブコメを実施する
こと。
2.地震動審査ガイドの「ばらつき条項」の改定方針を撤回すること。

よびかけ おおい原発止めよう裁判の会/原子力規制を監視する市民の会/原
力資料情報室

…※「志賀原発を廃炉に!」訴訟原告団が団体署名しましたので掲載しました。
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ミャンマー軍事クーデターに抗議する(声明)

民主主義を護れ!ミャンマー軍事クーデターに抗議する(声明)

    ミャンマーの国会にあたる連邦議会が開催される予定だった2月1日、国軍部隊によって、ミャンマーの最高指導者アウンサンスーチー国家顧問、ウィミン大統領など国民民主連盟(NLD)の幹部ら多数の関係者が拘束されました。直後、国軍は非常事態宣言を発令し、最高司令官のミン・アウン・フライン将軍が権力を掌握しました。
アウンサンスーチー国家顧問は、約15年にもおよぶ軍事政権による自宅軟禁生活から2010年に解放されると、2015年の総選挙で率いるNLDが圧倒的勝利を得て、政権を獲得しました。2020年11月の総選挙においても、NLDは圧勝しました。このような国民の選択と民主的手続きによって成立した政権を、軍事クーデターという暴力によって倒す暴挙を、私たちは決して許すことができません。
クーデター直後から、ミャンマー国民は「我々は決して軍靴の下にひざまづかない」として、大規模デモや公務員を含む幅広い職種における軍事政権の統治機能を無力化しようとの「不服従運動」を展開しています。これに対して、軍事政権は暴力による弾圧を加え、2月末現在で発砲による犠牲者は少なくとも9人、負傷者も多数に上り多くの国民が拘束される事態となっています。しかし、国民の抵抗が止む兆しはありません。
NLD政権下で任命されたチョー・モー・トゥン国連大使は、2月26日国連総会で演説し、抵抗を続ける考えを明らかにし「ミャンマー軍に対して行動を起こすために、あらゆる手段を使うべきだ」と国際社会に訴えました。国連のグテレス事務総長は「クーデターが失敗に終わるよう全力を尽くす」と述べています。米国のバイデン大統領は「市民の抗議拡大に伴い、平和的権利を行使している人たちへの暴力は容認できない」として軍政関係者への制裁措置を科すとしました。欧州連合(EU)も同様の措置を表明しています。
日本国内においても、在日ミャンマー人らが軍事政権に反対し国際社会の助力を求めて集会を開催しています。私たち「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」は、日本政府に対して、暴力を手段として民主主義による国民の選択を踏みにじるミャンマー軍事政権を許さず、米国やEU諸国などの国際社会と足並みをそろえて行動するよう求めます。
近年、中国やロシアなどの大国において、ベラルーシやアラブの春から10年を経たエジプトなどにおいて、政権による民主主義勢力への弾圧が顕在化しています。日本国内においても、反対する沖縄県民の声を無視し新基地建設を強行するような権力の横暴が目立っています。民主主義は、多くの人々が自らの血を流しながら獲得してきた人類の財産といえるものであり、その脆弱な立場をふまえた私たちの不断の努力を求めています。私たちは、日本国憲法13条「個人の尊重」を基本に、民主主義を護るために闘っている世界の多くの人々と連帯して、全力でとりくんでいくことを改めて決意するものです。

2021年3月1日
戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会

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核兵器禁止条約が発効した今、米新政権の核兵器政策を問う ~「核なき世界」へ向け核兵器の役割低減を求めよう~

核兵器禁止条約が発効した今、米新政権の核兵器政策を問う   ~「核なき世界」へ向け核兵器の役割低減を求めよう~  湯浅一郎

新たなステージに入った「核なき世界」への道

2021年初頭、世界では核兵器に関し新たな胎動が始まった。1月22日、核兵器禁止条約(以下、TPNW)が発効したのである。発効当日にカンボジアが批准したことで、加盟国52か国での船出である。この条約は、2017年7月、核兵器の非人道性の認識を基礎に、開発、実験、保有、使用、及び使用の威嚇などを禁止し、違法化するものとして、122か国・地域の賛成により国連会議で採択された。サーロー節子氏が、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のノーベル平和賞受賞式で「核兵器の終わりの始まりにしよう」と訴えたように、核兵器の存在そのものを禁止する国際法が発効したことで「核なき世界」への道は新たなステージに入った。

そしてTPNW発効の2日前の1月20日、米国で民主党のバイデン政権が誕生した。就任演説でバイデンは、国内に向けて「米国を一つにし、国民を団結させ、この国を結束させる」と述べ、分断した国の修復の重要性を強調した。同時に、「われわれは同盟関係を修復し、再び世界に関与する。(略)。われわれは、平和と進歩、安全保障のための信頼されるパートナーとなる」と述べ、国際協調主義を強調した(注1)。

トランプ政権の一期は、核政策に関するオバマ政権の取り組みをことごとく覆した。オバマ政権が2010年に発表した核態勢見直し(NPR)は、「核なき世界」をめざし、核兵器の役割を縮小させることを目指したものだった。ところが、2018年2月に発表されたトランプ政権のNPRは、核兵器の役割を高める方向で安全保障政策を再構築する核軍縮に逆行するものだった。トランプ政権は、新しいNPRの下、局地攻撃を想定した小型低威力核弾頭や新型の巡航ミサイル開発を進め、宇宙軍を創設した。2019年2月には米ロ間の中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱を一方的に表明し、INF全廃条約は失効し、それを踏まえて、INFのアジア配備を計画した。また2018年5月にはイラン核合意(JCPOA)からの脱退を表明し、米国とイランの対立が深まった。

ここでは、トランプ政権によって核兵器の役割の増大に向かった核兵器政策を、バイデン政権が、核軍縮・不拡散においてどのように変化しうるのかを、米露間の核軍備管理条約である新START(戦略兵器削減条約)問題などから考察する。

 

新STARTは5年延長

TPNWは発効したが、核兵器国はこぞってこれに反対し、それらの国々に対し条約の効力は及ばない。核保有国は、むしろ自らが保有する核戦力の近代化を進めることを意志表明している。そうした状況においては、とりわけ2国の核兵器を合わせ世界全体の91%にもなる米露2国が、核軍縮に向け足並みをそろえることは、核軍拡競争を食い止め、核軍縮を進めるために極めて重要である。

しかし、現実は、米国のINFからの脱退により2019年8月に同条約が失効したことで、米露2国間の核戦力の軍備管理条約は、唯一、新STARTのみとなっている。

新STARTとは、2010年4月に米露間で結ばれた核軍縮条約で、2011年2月5日に発効した。新STARTは、第1条第1項で発効から7年後に達成すべき削減目標を次のように定めている。

米露の戦略核弾頭の配備数を1550発、その運搬手段である大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、及び重爆撃機などの配備数は700基/機、配備及び非配備運搬手段数を800基/機に制限する(注2)。さらに、重要なことは、それらの履行状況を相互に検証する制度を定めている点である。そして両国とも2018年には削減目標を達成している。

その新STARTは、放置すれば2021年2月5日に失効することになっていた。2月に期限切れとなれば、米露間の核軍縮の枠組みは1972年以降初めて消滅することになる。核軍縮を考えるとき、米露2国が相互に核戦力を厳密に検証しあえる条約を有していることは、透明性や相互の信頼醸成の面でも極めて重要であり、当面は新STARTを延長し、その上で、今後の二国間の新たな条約の在り方を産み出していくことが求められていた。

この問題につき、トランプ政権は、2020年になり大統領選挙をまじかに控える頃から、条件を示しながら新STARTの1年延長に動いた。20年8月18日、米国のベリングスリー大統領特使(軍備管理担当)は、新START について、条約に含まれない戦術核を制限する合意などを条件に、延長を検討可能だとする見解を述べた。

当初、米国は条約を延長する条件として、①ロシアが条約枠外で増強する短・中距離の核ミサイルを含むすべての核戦力を制限対象とすること、②査察の枠組みを強化すること、③将来的に中国が参加する枠組みにするという3項目での合意を目標として掲げていた。この米国の提案に対しロシアのリャプコフ外務次官は、「条約延長を支持するが、何らかの代償を払うつもりはない」と述べ、米国が示した延長条件に難色を示していた。

これらの動きに対し、核戦力で米露に圧倒的に劣る中国は、条約への参加を拒否していた。米国は、条約延長には中国の条約参加が必要だと強く主張するだけでは、何も前進しないと判断し、この態度を軟化させ米露交渉を先行させる姿勢を示したのである。

米大統領選がまじかとなった10月20日、ロシア外務省は新STARTに関し、米国の提案していた条約対象外の短・中距離の戦術核弾頭を含む「全核弾頭の保有数の凍結」を1年延長することに応じるつもりであると述べた。戦術核弾頭の保有数でロシアは米国に優位に立つため、ロシアは無条件での延長を求め、交渉が難航していたが、米国の提案を、追加の条件を米国が出さないことを条件に受け入れ、米国務省もこのロシアの譲歩を評価した。

いずれにしろ、大統領選の動向が微妙な時期に入り、新START延長どころではなくなり、1年延長の話は消えてしまった。さらに、大統領選挙で、事実上、バイデンが勝利したにもかかわらず、トランプ大統領が敗北を認めないという異常事態が続いていたため、米露交渉の実質的な前進は何もないまま、1月20日のバイデン政権の誕生となったわけである。

新START失効まで、わずか2週間しかない日程で誕生した米新政権は、新START延長にどのような提案をするのか、期待と不安が付きまとっていた。そもそも新START はオバマ政権が作ったものであり、その時、バイデン新大統領は副大統領として重責を担っていたことからすれば、延長の方向に動くことは十分、期待できるからである。

バイデン政権は、発足後、即座にこの問題に対する意思を表明した。1月21日、ジェン・サキ大統領報道官が記者会見(注3)で、以下のように述べている。

「米国は、条約が認めているように新STARTの5年間の延長を求めるつもりであることが確認できる。大統領は、新STARTが米国の国家安全保障上の利益になることを長い間、明確にしてきた。そして、この延長は、現時点のようにロシアとの関係が敵対的である場合には一層意味がある。新START は、ロシアの核戦力を制限する唯一の条約であり、両国間の戦略的安定の頼みである。」

さらに1月26日、バイデン大統領が、ロシアのプーチン大統領と初の電話会談を行い、「両国が新STARTを5年間延長する意思について話し合い、2月5日までに延長を完了するためにチームを緊急に働かせることに同意した。また、軍備管理と新たな安全保障問題の範囲に関する戦略的安定性の議論を検討することにも同意した」(注4)。トランプ政権が考えた1年延長から5年延長に転換したことになる。そして2月3日、米露両国政府は、新STARTを2026年2月まで5年間延長したと発表した。これにより新STARTの失効は回避され、両国間に唯一残っていた核軍縮の枠組みがなくなるという事態はひとまず回避された。

 

一つの焦点は、先行不使用政策の選択に

時間不足とはいえ、新START延長は、ある程度予想されていたことである。バイデン氏は、オバマ政権が終わる間際の2017年1月11日、スタンフォード大においてオバマ政権の核政策を総括する演説(注5)を行っている。その中で、バイデンは、新STARTについて「同条約で重要なのは、信頼や善意ではありません。重要なのは、世界で最大の核兵器保有国である米国とロシアの間の戦略的安定とさらなる透明性であり、それは、米国とロシアとの関係が徐々に緊張する中で、より死活的に重要になってきました」、「新STARTは、核兵器削減のための厳格な検証と監視のメカニズムを備えています」としていた。この考え方からすれば、5年延長は当然の方針であろう。

この経過から、バイデン政権の核兵器政策は、オバマ政権のものを引き継ぎ、スタンフォード大でのバイデン演説に示されていることを推進することが示唆される。同演説には、次のようなくだりもある。

「他国の核攻撃を抑止することが、核兵器保有の唯一の目的となるような条件を作り出すことを約束しました。この約束に従って、オバマ政権の期間中、私たちは、第二次大戦以来、米国の国家安全保障政策の中で核兵器が持っていた優先度を着実に減らしてきました。」とし、さらに「核攻撃を抑止すること、そして必要であれば報復することを、米国の核保有の唯一の目的とすべきであると強く信じています」と述べていた。

この演説からは、バイデン政権が、核兵器の役割と数を減らしていく方向をめざすことがうかがえる。オバマ政権として一度は検討し、日本政府がこれに強く反対したとされる先行不使用の政策が打ち出されることも十分予想される。とりあえずは、米露首脳が新STARTの5年延長を実現させたことを歓迎し、その上での核兵器の役割低減への動きが進んでいくことを期待したい。

このように見てくると、米政権の核兵器政策や、ここでは扱わなかったが、朝鮮半島問題に関し、日本政府の姿勢や行動が大きな要素となってくることが予想される。米政権が、核兵器の役割を低減し、先行不使用政策を選択しようとした時、日本政府は、どういう立場に立つのか? 北朝鮮政策を日韓とも協議しつつ選択しようとするとき、日本がシンガポール共同声明や南北板門店宣言を尊重する姿勢を示せるのか? 日本の菅政権は、ともにそれを阻害する要因になる可能性が高い。私たちは、日本の市民として、日本政府の安全保障を「核の傘」に依存する姿勢を改めさせようとの世論を形成していくことを急がねばならない。その答えは、核兵器禁止条約が発効した今こそ、北東アジア非核兵器地帯構想の真剣な検討を始めるよう政府に求めていく声を広げていくことである。(ゆあさ いちろう)

 

注1. ホワイトハウスHP(2021年2月20日)。

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/speeches-remarks/2021/01/20/inaugural-address-by-president-joseph-r-biden-jr/

注2. ピースデポ刊:「ピース・アルマナック2020」102ページ。

注3.『ジェン・サキ報道官による記者会見』、2021年1月21日。

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/press-briefings/2021/01/21/press-briefing-by-press-secretary-jen-psakijanuary-21-2021/

注4. ホワイトハウスHP(2021年2月26日)。

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2021/01/26/readout-of-president-joseph-r-biden-jr-call-with-president-vladimir-putin-of-russia/

注5.ピースデポ刊:『核兵器・核実験モニター』第514-5号(2017年3月1日)。

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「改正」コロナ対策関連法成立に抗議する!

「改正」コロナ対策関連法成立に抗議する!

    菅政権は、新型コロナウイルス対策関連法の「改正案」を2月1日当初の刑事罰をはずすなどの修正の上、衆院を通過させ、2月3日には参院本会議で可決・成立させました。わずか4日間の国会審議で与党と立憲民主党などで押し通したのです。

“感染拡大防止の取り組みを効果的に進める”として、改正感染症法にある入院拒否や保健所の疫学調査を拒んだ人に「協力しない場合は、応じるよう命令でき、それでも正当な理由なく応じない場合は」行政罰の罰金刑を課すとしています。しかし、罰則の判断基準が曖昧であり、どのようにでも活用できる恐ろしい内容となっています。新たに創設した「まん延防止重点措置」では政府対策本部長に菅首相が就くことになっています。

そもそも、感染症の専門家や医療現場からの声を聞かずに医療崩壊を招き、生活保障を十分に行なうことなく中小零細事業者に営業時間の短縮を求めて廃業に追い込み、GOTOキャンペーンに固執してコロナ感染を拡大した”張本人“は菅首相ではありませんか。

それにもかかわらず、自らの責任を棚上げにし、感染者に罰則を用いて取り締まることなど到底納得がいくものではありません。

このコロナ関連法の「改正案」に対して、次々と怒りの声が上げられています。1月30日には、70人以上の憲法学者が「政府の失態を個人責任に転嫁するものだ」と反対の声を上げました。2月1日には、医療問題弁護団が「入院を拒んだ人らへの罰則による人権制約を正当化する根拠がなく、感染者への差別、偏見の助長や検査回避の誘発につながる」と声を上げ、ハンセン病違憲国家賠償訴訟原告団協議会は「罰則は、感染者を人権制約の対象とするもの」と批判しています。また、薬害オンブズマン会議は「罰則で入院などを強制すること自体、問題がある」と反対の声を上げているのです。

菅政権は、「5人以下の静かなマスク会食」を呼びかけながら、首相自らが8人で「ステーキ会食」を行っていました。与党の国会議員は“夜の街”に出かけていることが暴き出されています。

コロナ感染が拡大の一途をたどる本年1月7日首都圏一都三県に、1月13日には大阪、愛知、福岡など七府県にさらに拡大して緊急事態宣言を再発令しました。 いま、内閣支持率も急降下し、このことに危機感を嵩じさせた菅政権が自己保身と責任逃れのために閣議決定し、推し進めているのがコロナ関連法「改正案」にほかなりません。

私たちは、菅政権が「感染拡大防止」の名のもと、私権を制限し罰則を導入して強権的に「入院・隔離」することを、野党を巻き込みながら行なっていることに最大限の注意を払わなければなりません。このことは、憲法を改悪し「戦争のできる国」へと突き進む素地づくりであり反対していかなければなりません。

2021年2月5日

石川県平和運動センター

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国連「核兵器禁止条約」発効についての声明

国連「核兵器禁止条約」発効についての声明

1月22日、核兵器の保有、使用などを全面禁止する核兵器禁止条約が、世界50カ国の批准によって発効しました。各種メディアは一斉に「世界は歴史的な一歩を踏み出した」と報じ、核兵器廃絶を願ってきた多くの人たちは“今日は核兵器の終わりの始まり”と喜びの声をあげ、さらに条約の批准が世界の国々に広まるよう呼びかけています。

しかし、世界で唯一の戦争被爆国である日本政府はこの核兵器禁止条約を批准していません。その理由は“米国の核の傘”に依存しているからです。菅総理は1月22日参議院本会議で、「現実的な核軍縮を進める道筋の追求が適切との我が国の立場に照らし、署名する考えはない」と平然とのべています。日本政府は、あくまでも米露中仏英の五大国の核兵器保有を認めたNPT(核拡散防止条約)による核軍縮を呼びかける立場に固執しているのです。

さらに日本政府が福島原発事故の悲劇とその責任には目をつぶり、「原子力は確立した脱炭素技術」とうそぶき原発再稼働を進め、核兵器の材料となるプルトニウムを大量に保有していることは、ロケット技術(月及び惑星探査含む)の開発と併せた「核ミサイル開発」を目論んでいることを見抜かなければなりません。

一方、核兵器を保有する各国の権力者は「条約には縛られない」としてこの条約の発効を無視しています。

しかし、私たちは騙されません。あきらめません。

核兵器は違法だとする国際条約の誕生は歴史上の重要な転換点です。これを一つの機会として、批准した国々の仲間やこれからの世界を背負う若者たちと共に考え、論議し、核廃絶に向けた新たな行動を起こす出発点にしようではありませんか。

1945年、広島、長崎で原爆の直接被害にあい、それ以降、被害者団体をつくり、一貫して核兵器廃絶の声をあげ続けている被爆者の田中煕巳さん(88歳)は、「核兵器は違法化された。人類史上、歴史に明記された日になる」と語り、同じく坪井 直さん(95歳)は、「条約発効を心底喜ぶ。被爆者は核兵器をこの世からなくすことを切望する。」と語りました。

私たちは、被爆によって長い間、差別や病魔、死の不安と闘ってきた被爆者やすでに亡くなられた幾十万の犠牲者の思い、そして広島、長崎の被爆地の訴えを実現するために、核兵器廃絶に向けて力を尽くさなければなりません。

故森滝原水禁議長の「核と人類は共存できない」を合い言葉に、あの76年前に原爆によって、町が焼け、人が黒焦げになった光景を一人一人が思いおこし、世界から核を無くすため、闘いに立ち上がろうではありませんか。

2021年2月2日

原水爆禁止石川県民会議

代表委員 瀧山田庄治

〃   盛本 芳久

〃   野村 夏陽

〃   田村 光彰

〃   佐野 明弘

〃   糸矢 敏夫

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国の責任を不問とした東京高裁判決を許さない(原水禁声明)

国の責任を不問とした東京高裁判決を許さない(原水禁声明)

 1月21日、東京高裁(足立哲裁判長)は、東京電力福島第一原発事故で、群馬県などに避難した住民37世帯91人が、国と東京電力に約4億5,000万円の損害賠償を求めた集団訴訟の控訴審判決で、国の責任を認めた一審の前橋地裁判決を覆し、国の責任を不問とした。一方で東京電力には、原告90人に約1億1,972万円の賠償を認めた。国と東京電力に合わせて62人、3,855万円の賠償を命じた一審の前橋地裁判決より救済範囲を広げたものの、原告の要求からは程遠い。

国と東京電力を被告とした高裁判決は、2020年9月の仙台高裁に続くものだが、国と東京電力の責任を問えるかどうかの判断は分かれた。仙台高裁の判決は、双方の責任を認めたが、今回の判決では、国の責任を不問とした。

両訴訟では、2002年7月に国の地震調査研究推進本部が公表した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価」をめぐって、津波の襲来予測と事故回避の可能性が争われた。仙台高裁の判決では、国の専門機関が明らかにした「福島沖で巨大地震が起きる可能性がある」との長期評価の信頼性を認め、東京電力と国が適切に対応していれば被害を避けられたとした。しかし、今回の東京高裁判決では、長期評価の前提となる「約400年間に3回の津波地震の発生」について異論があったほか、2002年1月に土木学会原子力土木委員会が公表した「原子力発電所の津波評価技術」の知見とも整合しないことを理由に、巨大津波の襲来を予見できなかったとし、「長期評価」の知見を前提に津波対策を講じても原発内への津波の浸水を防止はできなかったとして、「津波対策に関する国の対応に問題があったと認めることは困難だ」とした。

しかし、国や東京電力が、津波の可能性を警告する「長期評価」を無視し、経営を優先して原発事故のリスクを軽視し対応を怠ったことは事実であり、原子力災害を招いた責任から逃れることはできない。

現在20件余りにもおよぶ同様の裁判が進行し、今後も国と東京電力の責任が追及される。そこでは、当事者が真摯に責任を省みることが求められている。

原発事故被害者への賠償は、政府の原子力損害賠償紛争審査会が定めた指針に基づいて進められてきたが、今回の判決においても不十分であることが指摘された。同様の判断は、他の訴訟でも繰り返されている。事故から10年を経た現在においても、被害者の納得する賠償が進んでいなことは、きわめて問題である。東京電力は、審査会の指針以上の賠償を拒否し、原子力損害賠償紛争審査会の調停案にも異議を唱え、福島地裁の和解勧告さえもはねのける姿勢に終始し、被災者からの訴訟が相次いでいる。政府も、避難指示解除にともなって避難者へのさまざまな賠償や支援を次々と打ち切っている。避難者の置かれている実態を考慮せず、一方的に切り捨てようとする姿勢は、許せない。

私たちは、避難者、被災者への誠実な賠償と支援を強く求めると同時に、国の責任を不問とした東京地裁判決に強く抗議する。

2021年1月24日

原水爆禁止日本国民会議

議長 川野 浩一

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