特別決議 「福島原発事故から10年―脱原発に向けて」(原水禁全国委員会)

2011年3月11日の東日本大震災・福島原発事故から10年。福島原発事故の廃炉・収束作業は、高線量の放射線に阻まれ、困難を極めています。約880トンと言われている溶融した核燃料、デブリの全貌は把握できていないままです。2021年中の予定とされていたデブリの取り出し開始が断念されるなど山積する課題の前に、事故後30年から40年とされた廃炉「完了」の時期は見通しが立ちません。

また、たまり続けるトリチウムなどの放射性物質を含む汚染水(ALPS処理水)を、菅義偉首相は「海洋放出」によって処分しようとの方針を4月13日に閣議決定しました。当初から「海洋放出」ありきで議論が進められ、福島県民や漁業従事者などを置き去りにしたままの決定でした。トリチウムをはじめとする放射性物質の影響を無視し、再び福島に放射能の被害を押し付けようとしています。

汚染水については、政府が基本方針で定めた放射能の放出上限まで処分しても、汚染水の発生が上回り、保管する水が減らないことが明らかになり、タンクを増設し続けなければならない可能性がでてきました。

今回の「海洋放出」に対して全漁連や県漁連も「絶対反対」を表明し、県内の自治体の約7割が反対や慎重な対応を求める決議をあげています。中国や韓国など周辺国からも「海洋放出」に対して反対の声があがっており、「海洋放出」は国際問題となっています。これまでの復興に向けた県民をはじめとする多くの方々の努力が水泡に帰すような閣議決定に、私たちは強く抗議し、方針の撤回を求めます。

福島では、事故から10年が経過しても、3万5千人を超える長期の避難者が存在し、2,320人となった県内の震災関連死も増え続けています。補償の打ち切りなどで多くの被災者が現在も苦しんでいます。また、被曝による健康不安やこどもたちの甲状腺障害も増加しています。被災者を社会的・精神的・経済的・健康的にも追い詰め、切り捨てていく菅政権の政策は、決して許せるものではありません。

安倍政権を引き次いだ菅政権は、原発の再稼働をすすめ、核燃料サイクル計画を推進するなど、事故以前と変わらない原発推進路線を堅持しています。原発の再稼働をすすめ、40年廃炉の原則を守ることなく、さらに20年の延長を認めています。行き詰る原子力政策の延命を図るために、脱炭素社会の実現に向けて原発活用を打ち出しています。しかし、原子力は地球温暖化問題の解決には決して役に立ちません。事故のリスク、放射性廃棄物の処理処分など様ざまな問題が山積する原発に未来がないことは明らかです。

第2・第3のフクシマをつくらせないためにも、平和フォーラム・原水禁は、脱原発社会の実現に向けて、さらなる努力を重ねることを決意します。

2021年4月23日

原水爆禁日本国民会議第97回全国委員会

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