桐生悠々と言論の覚悟(9/8北陸中日新聞社説より)

桐生悠々と言論の覚悟 週のはじめに考える

 戦前、藩閥政治家や官僚、軍部の横暴を痛烈に批判し続けた言論人、桐生悠々。その生きざまは、言論や報道に携わる私たちに、覚悟を問うています。

 桐生悠々は本紙を発行する中日新聞社の前身の一つ、新愛知新聞や、長野県の信濃毎日新聞などで編集、論説の総責任者である主筆を務めた、私たちの大先輩です。

 信毎時代の一九三三(昭和八)年、「関東防空大演習を嗤(わら)ふ」と題した論説が在郷軍人会の怒りに触れ、信毎を追われます。

 その後、新愛知時代に住んでいた今の名古屋市守山区に戻った悠々は、三四(同九)年から個人誌「他山の石」の発行を始めます。

日米開戦は「無謀の極」

 悠々が亡くなったのは四一(同十六)年九月十日でした。その三カ月後、悠々が「無謀の極(きわみ)」とした米国との戦争が始まります。

 戦後、悠々が再び注目されるきっかけは五一(同二十六)年、信毎が紙齢二万五千号を記念し、悠々ら同紙で活躍した言論人を紹介した特別紙面でした。

 これを小説家で文芸評論家の正宗白鳥が読み、東京新聞(現在は中日新聞社が発行)に寄せた「人生如何(いか)に生くべきか」と題する随筆で、信毎の論説や「他山の石」などの悠々の言論活動を振り返りながら、こう評したのです。

 「彼はいかに生くべきか、いかに死すべきかを、身を以(も)つて考慮した世に稀(ま)れな人のやうに、私には感銘された。これに比べると、今日のさまざまな知識人の賢明なる所論も、たゞの遊戯文学のやうに思はれないでもない」

 それは、戦後間もない時期の知識人たちの言論活動が、悠々の覚悟に比べれば、いかに腰の据わっていない浅薄なものか、と正宗は問いたかったのでしょう。

 悠々の言論活動は海外にも視野を広げた豊富な知識に基づいて、過去の習慣や時流に流されない、開明的かつ激越なものでした。

言わねばならないこと

 まずは一二(大正元)年、明治天皇の死去に伴う陸軍大将、乃木希典の殉死に対してです。

 信毎主筆として書いた社説「陋習(ろうしゅう)打破論-乃木将軍の殉死」では「殉死もしくは自殺は、封建の遺習である」「野蛮の遺風である。此(こ)の如(ごと)き陋習は、一刻も早く之(これ)を打破せねばならぬ」と指摘しました。自刃をたたえるものが目立つ中、異色の社説です。

 新愛知時代の一八(同七)年に起きた米騒動では米価暴騰という政府の無策を新聞に責任転嫁し、騒動の報道を禁じた当時の寺内正毅内閣を厳しく批判します。

 悠々は新愛知社説「新聞紙の食糧攻め 起(た)てよ全国の新聞紙!」の筆を執り、内閣打倒、言論擁護運動の先頭に立ちます。批判はやがて全国に広がり、寺内内閣は総辞職に追い込まれました。

 そして信毎論説「関東防空大演習を嗤ふ」です。敵機を東京上空で迎え撃つ想定の無意味さを指摘したことは、日本全国が焦土と化した戦史をひもとけば正鵠(せいこく)を射たものですが、軍部の台頭著しい時代です。新聞社は圧力に抗しきれず、悠々は信州を離れます。

 それでも悠々は名古屋に拠点を移して言論活動を続けました。軍部や政権を厳しく批判する「他山の石」は当局からたびたび発禁や削除処分を受けながらも、亡くなる直前まで発行が続きました。

 悠々は「他山の石」に「言いたいこと」と「言わねばならないこと」は区別すべきだとして「言いたいことを言うのは、権利の行使」だが「言わねばならないことを言うのは、義務の履行」であり、「義務の履行は、多くの場合、犠牲を伴う」と書き残しています。

 悠々にとって一連の言論は、犠牲も覚悟の上で、言うべきことを言う義務の履行だったのです。

 正宗が言う「いかに生くべきか、いかに死すべきかを、身を以つて考慮した」悠々の命懸けの言論は戦争への流れの中では顧みられることはありませんでしたが、戦後再評価され、今では私たち言論、報道活動に携わる者にとって進むべき方向を指し示す、極北に輝く星のような存在です。

嵐に鳴く蟋蟀のように

 <蟋蟀(こおろぎ)は鳴き続けたり嵐の夜>

 悠々のこの句作が世に出た三五(昭和十)年は、昭和六年の満州事変、七年の五・一五事件、八年の国際連盟脱退と続く、きなくさい時代の真っただ中です。翌十一年には二・二六事件が起き、破滅的な戦争への道を突き進みます。

 もし今が再び<嵐の夜>であるならば、私たちの新聞は<蟋蟀>のように鳴き続けなければなりません。それは新聞にとって権利の行使ではなく、義務の履行です。

 来る十日は悠々の没後七十八年の命日です。大先輩を偲(しの)ぶとともに、業績や遺訓を思い起こし、私たち新聞のなすべきことを考え続けたいと思います。

 

付録

<特別編>反骨の記者・桐生悠々「言いたい事と言わねばならない事と」全文

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 随時連載「言わねばならないこと」は、2013年12月の秘密保護法成立を受けて始まりました。タイトルの由来は、戦前に軍部を痛烈に批判した反骨の新聞記者、桐生悠々の文章「言いたい事と言わねばならない事と」です。連載100回を迎える前に、あらためて全文を掲載します。

     ◇

 人動(やや)もすれば、私を以て、言いたいことを言うから、結局、幸福だとする。だが、私は、この場合、言いたい事と、言わねばならない事とを区別しなければならないと思う。

 私は言いたいことを言っているのではない。徒(いたずら)に言いたいことを言って、快を貪(むさぼ)っているのではない。言わねばならないことを、国民として、特に、この非常時に際して、しかも国家の将来に対して、真正なる愛国者の一人として、同時に人類として言わねばならないことを言っているのだ。

 言いたいことを、出放題に言っていれば、愉快に相違ない。だが、言わねばならないことを言うのは、愉快ではなくて、苦痛である。何ぜなら、言いたいことを言うのは、権利の行使であるに反して、言わねばならないことを言うのは、義務の履行だからである。尤(もっと)も義務を履行したという自意識は愉快であるに相違ないが、この愉快は消極的の愉快であって、普通の愉快さではない。

 しかも、この義務の履行は、多くの場合、犠牲を伴う。少くとも、損害を招く。現に私は防空演習について言わねばならないことを言って、軍部のために、私の生活権を奪われた。私はまた、往年新愛知新聞に拠(よ)って、いうところの檜山事件(注1)に関して、言わねばならないことを言ったために、司法当局から幾度となく起訴されて、体刑をまで論告された。これは決して愉快ではなくて、苦痛だ。少くとも不快だった。

 私が防空演習について、言わねばならないことを言ったという証拠は、海軍軍人が、これを裏書している。海軍軍人は、その当時に於(おい)てすら、地方の講演会、現に長野県の或(ある)地方の講演会に於て私と同様の意見を発表している。何ぜなら、陸軍の防空演習は、海軍の飛行機を無視しているからだ。敵の飛行機をして帝都の上空に出現せしむるのは、海軍の飛行機が無力なることを示唆するものだからである。

 防空演習を非議したために、私が軍部から生活権を奪われたのは、単に、この非議ばかりが原因ではなかったろう。私は信濃毎日に於て、度々軍人を恐れざる政治家出でよと言い、また、五・一五事件及び大阪のゴーストップ事件(注2)に関しても、立憲治下の国民として言わねばならないことを言ったために、重ねがさね彼等(かれら)の怒を買ったためであろう。安全第一主義で暮らす現代人には、余計なことではあるけれども、立憲治下の国民としては、私の言ったことは、言いたいことではなくて、言わねばならないことであった。そして、これがために、私は終(つい)に、私の生活権を奪われたのであった。決して愉快なこと、幸福なことではない。

 私は二・二六事件の如(ごと)き不祥事件を見ざらんとするため、予(あらかじ)め軍部に対して、また政府当局に対して国民として言わねばならないことを言って来た。私は、これがために大損害を被った。だが、結局二・二六事件を見るに至って、今や寺内陸相によって厳格なる粛軍が保障さるるに至ったのは、不幸中の幸福であった。と同時に、この私が、はかないながらも、淡いながらも、ここに消極的の愉快を感じ得るに至ったのも、私自身の一幸福である。私は決して言いたいことを言っているのではなくて、言わねばならない事を言っていたのだ。また言っているのである。

 最後に、二・二六事件以来、国民の気分、少くとも議会の空気は、その反動として如何(いか)にも明朗になって来た。そして議員も今や安んじて―なお戒厳令下にありながら―その言わねばならないことを言い得るようになった。斎藤隆夫氏の質問演説(注3)はその言わねばならないことを言った好適例である。だが、貴族院に於(お)ける津村氏の質問に至っては言わねばならないことの範囲を越えて、言いたいことを言ったこととなっている。相沢中佐が人を殺して任地に赴任するのを怪しからぬというまでは、言わねばならないことであるけれども、下士兵卒は忠誠だが、将校は忠誠でないというに至っては、言いたいことを言ったこととなる。

 言いたい事と、言わねばならない事とは厳に区別すべきである。

(昭和十一年六月)

(注1)檜山事件 名古屋市の女学校の校長が校内での不倫を隠すため、事実を知った女性教師らを解雇しようとした事件

(注2)ゴーストップ事件 大阪市で信号無視をした陸軍兵を警察官が注意し、けんかとなり、その後、陸軍が警察に抗議し、軍部と内務省の対立に発展した事件

(注3)斎藤隆夫氏の質問演説 いわゆる「粛軍演説」。軍部に綱紀粛正(粛軍)を求めると同時に、議会を軽視し、政治への介入を強める軍部を批判した

<桐生悠々(きりゅう・ゆうゆう)> 1873(明治6)年、金沢生まれ。明治から戦前にかけ、軍部と権力者を痛烈に批判し続けた反骨の新聞記者。東京帝国大卒。本紙を発行する中日新聞社の前身の一つである新愛知新聞や、長野県の信濃毎日新聞で主筆を務めるなど、複数の新聞社で活躍。信毎時代、社説「関東防空大演習を嗤(わら)ふ」を書き、木造家屋の多い東京上空で敵機を迎え撃つ想定の陸軍演習の無意味さを批判。軍部の怒りを買い、退社に追い込まれた。晩年は愛知県で個人誌「他山の石」を刊行。「言いたい事と言わねばならない事と」はここに掲載された。41(昭和16)年に68歳で死去。

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8.27 イラン戦争参加のための自衛隊「有志連合派遣反対!」声明

イラン戦争「有志連合」への自衛隊派兵に反対する共同声明

 米国のイラン核合意からの離脱、経済制裁の復活に端を発して、米国とイランとの緊張が高まっています。ホルムズ海峡などでの船舶の安全確保について、トランプ米大統領は日本に対しても「自国で守るべきだ」と主張し、8月7日に来日したエスパー米国防長官も岩屋防衛相との会談で、同海峡周辺での商船警護の有志連合への参加を日本政府に求めました。

他方、国連安全保障理事会において、8月20日、ポンペオ米国務長官は、ホルムズ海峡周辺で緊張が高まるイラン問題で協力を呼び掛けました。しかし、既に参加を表明した英国とバーレーンの2カ国を除き、ドイツが不参加を表明したほか、主要な同盟国からも緊張緩和を求める声が相次ぎ、海峡警備で米国が提唱する有志連合に理解が広がらない現状が浮き彫りになりました。

ところが、日本政府内では、米国が示した「ペルシャ湾、ホルムズ海峡、バブルマンデブ海峡、オマーン湾」のうち、イランを刺激しないよう、ペルシャ湾外のオマーン湾での活動を想定していると報じられ、具体的には、現在ソマリア沖アデン湾に海賊対処法に基づき派遣している海自護衛艦1隻とP3C哨戒機2機を援用するか、自衛隊法で定めた海上警備行動での商船警護を軸に検討していると伝えられています。

これらは、いずれも米軍の指揮外で、海賊対処要項変更の閣議決定や、海上警備行動の首相承認などで自衛隊の活動が可能になるとしていますが、対米配慮を優先した自衛隊派兵は、海外での自衛隊の活動を恣意的に拡大運用し、事実上の集団的自衛権行使へと道を開こうとする安倍政権の危険な姿勢であると言わざるを得ません。今回のイラン危機に乗じ、海賊対処に名を借りてジブチ共和国内に不平等な地位協定を伴って展開している海上自衛隊基地を拠点として有志連合に参加するなどもってのほかです。

ヨーロッパをはじめ世界の主要国には、イランとの緊張の激化は、世界大の戦争に発展しかねないとのリアルな危機感が共有されているといわれています。日本国憲法に基づく国際平和主義を掲げる日本が、好戦的な米国の片棒を担ぎ、戦争当事国となることは断じて許されません。

よって、私たちは強い危機意識を持って、対イラン有志連合への如何なる参加にも反対を表明します。併せて、海賊対処に名を借りジプチ共和国に居座る海上自衛隊の撤収を求めます。

2019年8月27日

内閣総理大臣 安倍晋三 様

「憲法改悪阻止!戦争法廃止!」を呼びかける八団体

石川県憲法を守る会、石川憲法会議、九条の会・石川ネット、

石川県平和運動センター、石川県労働組合総連合、青年法律家協会北陸支部

戦争をさせない1000人委員会・石川、戦争をさせない石川の会

 

20190828「有志連合」反対を表明、県平和センターなど「戦争法廃止!憲法改悪阻止!」を呼びかける八団体が記者会見

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19.7.23声明 マイナンバー(特定個人識別番号制)の国家・地方自治体職員への強制やめよ!

7.23声明
マイナンバーカードの取得を強要する普及と利活用の促進方針を許さない!(国家・地方自治体職員に、任意である交付申請を強制するマイナンバー反対!)

共通番号・カードの廃止をめざす市民連絡会より無断転載

政府は2019年6月4日のデジタル・ガバメント閣僚会議で「マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針」を決定し、6月21日「骨太の方針2019」で閣議決定した。

この方針は、2022年中にほとんどの住民にマイナンバーカードを所持させようとしている。2016年1月から交付の始まったマイナンバーカードは、3年たっても13%の交付率(交付数約1656万枚、2019年4月1日現在)にとどまり、最近は日1万枚前後しか交付されていない。それを今後3年余りで1億枚以上交付申請させようとする無茶苦茶な方針である。

2015年10月にスタートしたマイナンバー制度は、2018年11月の内閣府の世論調査でも「マイナンバーカードを今後も取得する予定はない」53.0%、「マイナポータルを利用してみたいとは思わない」62.2%、「マイナンバー制度に特に期待することはない」39.8%だったように、政府の度々のPRやカード交付を無料にするなどの普及策を行っても、市民から見放されつつある。 

それは私たちが指摘してきたように、マイナンバー制度が費用ばかりかかってメリットに乏しく、プライバシーや財産の侵害を拡大して国家による監視を強化する危険性が知られてきたためである。全国8か所で争われているマイナンバー違憲差止訴訟では、政府ですら保護措置がなければこれら危険性が生じ得ると認めてきた。そして裁判の中では、この保護措置が機能していない現実が明らかになりつつある。

ところが政府は反省もせず、マイナンバー制度が危険だという「誤解を払拭」する宣伝を集中的に行い、マイナンバーカードの取得を強要しようとしている。

政府の普及策の第1は、消費税増税対策としてのマイナンバーカードを使った「自治体ポイントによる消費活性化策」である。しかしこの自治体ポイントは、全国の自治体の1割以下しか実施していない。実証実験を行った市町村では制度が複雑で利用が広がらず、費用対効果に疑問が示されている。それにもかかわらず、2019年度中に全自治体を参加させようとしている。

普及策の第2は、「マイナンバーカードの健康保険証としての利用」である。しかし今後も保険証で受診でき、患者はマイナンバーカードを使う必要はない。医療機関はカード利用のための設備投資を強いられ、セキュリティ対策や窓口でのトラブルに悩まされる。保険者はマイナンバーカード普及の責任を押しつけられることに不安を抱いている。誰にもメリットはない。

普及策の第3は、マイナンバーカードの申請の押しつけである。役所に来たすべての住民をカードの申請窓口に誘導するとか、2019年度中に職員や家族にカードを取得させるとか、他の行政機関や企業、病院、店舗、自治会などに職員が出向いて申請を受ける等の「交付円滑化計画」の作成を市区町村に求めている。これらの無茶な普及策を強行すれば、職員をいくら増やしても足りず、申請が集中して交付が大幅に遅延した2016年交付開始時の二の舞いになる。

マイナンバーカードの取得は、あくまで本人の申請により任意である総務省も「取得を義務づけることは、本人の協力を強要することになり適当でない」と述べている。なぜ任意なのに、必要を感じない申請を強要されるのか。誰のため、何のためのマイナンバーカードなのか。

私たちは、政府がマイナンバーカード取得の押しつけを直ちに中止することを求める。自治体や保険者が、住民や職員、被保険者への取得強要に加担しないことを求める。市民のみなさん、マイナンバーカードの取得を拒否しよう。

2019年7月23日

 

 

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「戦後最悪の政治指導者トリオに、戦前に引き戻されるのは御免だ」

「戦後最悪の政治指導者トリオに

戦前に引き戻されるのは御免だ」

         連載「eyes 浜矩子」(アエラより無断転載)2019.8.1 16:00AERA#

浜矩子(はま・のりこ)/1952年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。前職は三菱総合研究所主席研究員。1990年から98年まで同社初代英国駐在員事務所長としてロンドン勤務。現在は同志社大学大学院教授で、経済動向に関するコメンテイターとして内外メディアに執筆や出演 経済学者で同志社大学大学院教授の浜矩子さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、経済学的視点で切り込みます。

*  *  *
ボリス・ジョンソン氏が英国の首相に就任した。間違いなく、戦後最悪の英国首相だと思う。これで、戦後最悪の政治指導者は3人目だ。1人目が日本の安倍首相。2人目が米国のトランプ大統領。そして、今回のジョンソン英首相だ。彼らには、三つの共通点がある。一に幼児性。二に不寛容。三に未熟な涙腺。

幼児性がこの3人組の共通点だというのは幼児に失礼ではある。だが、彼らのあの忍耐力の無さや自己中心性は、やはり幼すぎるというほかはない。不寛容な彼らは、自分にとって異質なものを受容することが出来ない。違和感があるものを極端に恐れる。怖いから排除しようとする。不寛容の背後には、臆病者の怯えが見え隠れしている。

彼らは他者のために泣くことが出来ない。他者の痛みがわからない。だから、他者の痛みに思いを馳せてもらい泣きすることが出来ない。自分以外の人間のためには涙腺から涙が出てきそうにない。もらい泣き力は、涙腺成熟度の証しだ。

戦後最悪男(幸い、今のところ男だけだ)が、どうしてこうも次々出現するのだろう。それはつまり、戦後という時代が危機に瀕していることを意味しているのだろう。これは恐ろしいことだ。これから先、二度と再び「戦前」という時代が戻ってきてもらっては困る。「戦前」の次に来るのは戦争だ。我々は、これからずっと、未来永劫、「戦後」という状態を守り抜かなければいけない。戦後最悪男たちの野望や勘違いや愚かさのおかげで、「戦前」状態に引きずり戻されることは、断じて御免被る必要がある。

幼児的で不寛容で涙腺が未熟な戦後最悪男たちは、口汚く他者をののしる。ジョンソン首相は大陸欧州の人々を。安倍首相は野党とそのサポーターたちを。トランプ大統領は、手当たり次第、誰でも彼でも。ののしりの雄叫びは、人々の戦闘性を鼓舞する。戦闘とは無縁の「戦後」を保持していこうとする我らは、ののしりにののしりをもって逆襲してはいけない。そんなことをいうアンタこそののしり屋だろう。そう言われそうだと思いつつ、大人の寛容さともらい泣き力をもって「戦後」を守護する側にいたいと思う。

※AERA 2019年8月5日号

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被爆74周年原水爆禁止世界大会・広島大会基調

被爆74周年原水爆禁止世界大会・広島大会基調

2019年8月 4日

 猛暑の中を全国各地から原水禁世界大会広島大会に足を運んでいただきました皆さまに、心から感謝を申し上げます。若干の時間をいただき、原水禁世界大会の基調提案を行わせていただきます。

 原爆投下から、広島は74年目の夏を迎えようとしています。被爆者の願いであった「核兵器禁止条約」が122カ国の賛成によって採択されてから2年がたちました。すでに70カ国が署名し、8月2日現在24カ国が批准を済ませています。遠からず条約は発効します。

 日本政府は、条約が米国の核抑止力を否定するとして、署名・批准には後ろ向きです。外務省は、「核に頼らない安全保障を考えていかなくてはならない。その状況を作っていきたい」と答えています。その姿勢は、まさに核兵器禁止条約の署名・批准への姿勢なのです。被爆国日本の政府が核兵器禁止条約の署名・批准を行う。そして非核保有国すべてが批准する。そのことで核抑止のあり方を変えていく。唯一の戦争被爆国日本の政府の役割はそこにあります。

 原水禁は、連合、KAKKINとともに、日本政府に対して核兵器禁止条約の署名・批准を求める「核兵器廃絶1000万署名」をスタートさせました。日本から、非核保有国全てへ、そして核保有国へ、核兵器禁止条約の輪を広げていきましょう。原水禁は、核兵器廃絶1000万署名に全力を尽くします。

 「ストックホルム国際平和研究所」が発表した推計によれば、2019年1月時点の米露英仏中の5カ国とインド、パキスタン、イスラエル、朝鮮を加えた計9カ国が持つ世界の核弾頭数は1万3865発で、米露による削減の結果前年度比で600発の減となっています。
新START、新戦略兵器削減条約は、確実に核弾頭数を減らしています。しかし、一方で同研究所は、核弾頭や発射システム、製造施設など核兵器に関わる総体の近代化が進められているとも指摘しています。

 トランプ政権は、この間、「アメリカ・ファースト」「力による平和」を標榜して、一方的、挑戦的な強硬姿勢を貫き、これまで国際社会が作りあげてきた、核軍縮の枠組みを破壊しています。2018年には、イランとの核合意から一方的に離脱し、イランへの経済制裁を再開しました。混迷をますイラン情勢は、ペルシャ湾・ホルムズ海峡での緊張を生み出し、自ら有志国連合を呼びかけることとなっています。

 今年2月には、ロシアとの中距離核戦力全廃条約からも、ロシアの中距離核開発と条約の制約を受けない中国の中距離核開発を理由に離脱を表明し、8月2日に条約は失効しました。米露間では、今後中距離核開発をめぐって軍拡競争へ突入していく危険性も懸念されます。ヨーロッパ地域や東アジア地域の安全保障にとって、重大な事態を招いています。米国からは、同盟国日本への中距離核の配備要請の声も聞こえ、国是である非核三原則に抵触し、その空洞化すら懸念されます。米露両国は、重要な新STRATの継続の協議も含めて、核保有国の責任として、新たな核兵器削減・廃絶の枠組みの構築に努力しなくてはなりません。

 米トランプ大統領との親密な関係を強調し、日米同盟の深化を提唱する安倍政権は、核搭載可能なF35ステルス戦闘機105機、総額で1兆4000億円もの購入を決定し、ヘリ搭載の護衛艦「いずも」をF35B戦闘機を搭載しての空母への改修、敵基地攻撃を目途にした巡航ミサイルなどの導入を決定しています。

 昨年9月には、海上自衛隊は最大級のヘリ空母「かが」を含む護衛艦3隻と潜水艦「くろしお」を南シナ海に派遣し、対潜水艦訓練を目的とした演習を実施しました。ヘリ空母「いずも」と護衛艦「むらさめ」は、今年5月に、米海軍、インド海軍、フィリピン海軍との4カ国共同訓練を南シナ海で実施し、6月には、同じ南シナ海海域で、原子力空母「ロナルド・レーガン」を中心とする空母部隊との共同訓練を実施しています。米国や英国も駆逐艦などを派遣し「航行の自由作戦」を展開し中国と対立するきわめて緊迫した海域での訓練は、極めて異例です。

 安倍政権は、一帯一路政策を推進する中国を仮想敵として、インド太平洋構想を提唱し、米軍と一体となった軍事行動を展開しています。米国は、第2次大戦後も「世界の警察」を自任しながら、自らの覇権かけて、世界各地で地域紛争に介入しつつ、自ら戦争をひき起こしてきました。安倍政権の「日米同盟基軸」の姿勢と「積極的平和主義」の考えは、日米一体となった「日米統合軍」をつくり出し、自ら積極的に米国の覇権に協力することを確実にしています。

 このような情勢を受けて、沖縄県名護市辺野古では、在日米軍海兵隊の新基地の建設が強行されています。県知事選挙、各国政選挙、そして今年2月の辺野古埋立の賛否を問う県民投票、様々な形で示された沖縄県民の辺野古新基地建設反対の意志は、安部政権の建設強行に踏みにじられ、もはや沖縄には民主主義、憲法がないと言うほどの事態を引き起こしています。私たちは、沖縄県民とともに、核のない、基地のない沖縄をめざしてとりくまねばなりません。

 G20大阪サミット後の6月30日に、韓国を訪問したトランプ米大統領は、軍事境界線上の板門店において、出迎えた金正恩朝鮮国務委員長と約50分間にわたって会談しました。会談の中で、今年2月のハノイでの会議以降途絶えていた朝鮮半島の非核化への実務者協議を、再開することで合意をしています。

 朝鮮半島の非核化に向けての議論は、一朝一夕に進むものではありません。米朝間もしくは中国を加えて、朝鮮戦争の終結、平和協定の締結、さらには東北アジア非核地帯構想の実現に向けて進み出すこと、段階的な非核化へのプロセスとそれに伴う制裁措置の解除、話し合いの進展のために連絡事務所の開設など、信頼感を高めながらひとつ一つの課題を克服していく粘り強い努力が必要です。早期の実務者協議の再開が待たれます。

 朝鮮半島情勢が進展する中にあって、制裁の強化に固執してきた安倍首相は、この間、存在感を示すことができないできました。重要課題としてきた拉致問題さえも、米朝首脳会談に託すこととなっています。情勢を打破すべく、安倍首相は突然、朝鮮に対して「無条件の対話」を提起しました。朝鮮政府は、「朝鮮への敵視政策は少したりとも変わっていない」と突き放しています。

 安倍政権は、2002年の「日朝平壌宣言」に立ち返って交渉を開始すべきです。日本国内における、高校無償化からの排除に象徴される在日コリアンへの差別の解消や在朝被爆者への援護開始、国交回復後の拉致問題の解決などを前提としつつ、朝鮮敵視の政策を転換し、まずは連絡事務所の相互開設などによって相互信頼の醸成にとりくみ、対話の中で国交の正常化をめざすべきです。朝鮮敵視政策を継続する安倍政権は、21世紀の東アジア社会での自らの立場を誤っています。

 次に、原子力エネルギーをめぐる現状と福島の今について提起したいと思います。

 雑誌「世界」の2019年7月号、「原子力産業の終焉」と題した特集において、原子力アナリストのマイケル・シュナイダーさんは、原子力発電所の現状について、世界の商業用電力ミックスにおける原子力の割合は、1996年以来17.5%から10%に低下し、様々な要因から原発はもう市場での競争力を失っていると指摘しています。

 安倍政権がアベノミクスの重要な柱に位置づけてきた、日本の原発輸出政策は、インド、ベトナム、トルコ、イギリス、ヨルダンで、全てが頓挫・失敗・撤退しています。安全対策などによる原発建設コストの増大は、原発を市場経済から閉め出す方向に動いています。
東芝、日立製作所、三菱重工の日本を代表する原発メーカーが、政府方針とともに原発建設に拘泥するならば、企業の将来にも、日本経済にも暗雲をもたらすでしょう。原発輸出を基本政策としてきた安部政権の責任は重大です。

 原水禁は、原子力の商業利用にも、一貫して反対してきました。福島第一原発事故に際しては、大江健三郎さん、瀬戸内寂聴さんなどの9人の呼びかけ人と、様々な市民の皆さんの協力を得て、「さようなら原発1000万人アクション」の運動を展開し、「脱原発・持続可能で平和な社会をめざして」の声を上げ続けてきました。私たちの知る限り、脱原発の世論は圧倒的多数を示しています。これほど世論と政治の乖離が大きい政策はありません。

 事故を起こした福島第一原発の現状は、極めてきびしいものがあります。事故収束までの費用を経産省は21兆5千億円と見積もっていますが、70兆円などとの試算も出ており、今後の見通しは全く立たずにいます。

 高線量の放射能に阻まれて、溶融した核燃料は手つかずのまま、冷却を続けるしかない状態で、汚染水はたまり続けています。作業の長期化は避けられません。福島県内には、汚染水のみならず、瓦礫、伐採木、防護服などの焼却灰、そして除染によって出された汚染土など、様々な放射性物質に汚染されたものが、未だに住環境のすぐ側に積み上げられています。事故収束作業や様々な場面で労働者がヒバクする事態は避けるべきであり、何よりも暮らし続ける市民の環境をこれ以上汚染することは許されません。

 福島県は「県民健康調査」において、福島原発事故当時、概ね18歳以下であった子どもたちに甲状腺(超音波)検査を実施してきました。2019年 3月末現在、2018年末より 6人増えて218人が甲状腺がんまたはがんの疑いとされ、174人が手術を受けています。甲状腺評価部会は「現時点で、放射線被ばくとの関連は認められない」としていますが、甲状腺がんを始めとする健康リスクは、原発事故がなければなかったのです。

 国は事故の責任を認め、被爆した人々の医療支援や精神的ケアに全力を尽くすべきです。浪江町や飯舘村では「健康手帳」のとりくみがすすめられています。広島・長崎の被爆者、そして原水禁運動が、長い闘いの中で勝ち取った、原爆被爆者健康手帳と同様の法整備を、国の責任として進めなくてはならないと考えます。

 被災地福島では、8年余経った今も県内に1万1,084人、県外に3万 1,608人、避難先不明者も含めて合計4万2,705人が、長期の避難生活を余儀なくされています。
政府は、法律で定められている年間被ばく限度1mSvに従わず、国際放射線防護委員会が定めた、重大事故時の被ばく基準を勝手に適用し、法の定めの20倍もの被ばく量を、避難指示を解除した地域の住民に押しつけています。

 避難指示解除に合わせて、住宅支援、精神的賠償などの支援を次々に打ち切り、被災者が帰らざる得ない状況を作り出しています。避難指示解除区域では、医療や介護、日常生活に必要な各種インフラやサービスは全く不十分なままで、居住率は25%程度、高齢化率は、事故前の27.3%から44.3%に上昇しています。

 国は、「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」を策定し、福島事故では放射線の被ばくによる健康影響は今後もなく、福島は復興しつつあるとし、事故被害者を切り捨て、原発再稼働を推し進めようとしています。

 復興庁作成の「放射線のホント」や文科省が全国の小中高校に配布した「放射線副読本」などは、放射線のリスクを矮小化し、誤った知識を持って原発の稼働を許そうとするものです。将来のエネルギー政策を選択する権利を持つ者に対して一方的な意見を押しつけることが許されるわけがありません。風評払拭と言う言葉を利用して、フクシマを亡きこととし、原発推進をすすめる環境づくりを許してはなりません

 政府は、電力会社は、目先の利益のみを追求し、膨大な投資を行い、原発の再稼働をすすめようとしています。経団連は、原発を基本とした将来のエネルギー政策を提言し、国の第5次エネルギー基本計画には入れることができなかった原発の新設も、要求しています。中国電力は、地元広島に近い上関原発の埋め立て申請許可の延長を求めるなど、原発新設に前のめりの姿勢を見せています。フクシマの現状を見たとき、第一原発の前に立ったとき、なぜ、原発を将来のエネルギーとして選択できるのか、理解できません。全ての状況が、全ての数字が、「脱原発」を選択していることは明らかです。

 死を目前にする兵士の心情を描いた「桜島」で著名な小説家、梅崎春生は、「どのみち死なねばならぬなら、 私は、なっとくして死にたいのだ」と述べています。1945年8月6日、瞬時に奪われた命は、何を思うのでしょうか。「納得」と言うならば、納得すべき何ものもなく死に見舞われた者は、何を思うのでしょうか。

 広島大会に先立つ福島大会で、多くの原発事故被災者に「ふるさとの喪失感」が伴うとの話を聞きました。故郷を奪われたことを、どう自らに納得させるのか、その困難が、喪失感を生んでいくのでしょうか。

 命と命に付随する人間の全てを、私たちは決して「納得」せずには奪われない。その権利を持っていることを、改めて確認したいと思います。そして、そのことを原水禁の基本に据えて、更なる運動の展開をめざそうではありませんか。

 その決意を申し添えて、被ばく74周年原水禁世界大会の基調提案といたします。

2019年8月2日

 

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中距離核戦力(INF)全廃条約失効に関する事務局長談話

2019年8月2日

 

中距離核戦力(INF)全廃条約失効に関する事務局長談話

原水爆禁止日本国民会議

事務局長 藤本泰成

 米露の二国間で交わされていた「中距離核戦力(INF)全廃条約」が、8月2日失効した。今年2月に米国は、ロシアが条約に反して中距離核の開発を進めているとして、条約からの離脱を表明して以来、ロシアと対立したまま条約が定める失効日を迎えた。核兵器禁止条約が採択され、徐々に署名・批准する国が増加し、核兵器廃絶への声が高まった中で、中距離核戦力(INF)全廃条約の失効の影響は大きい。「核なき世界」を希求してきた国際的機運の後退が懸念される。

INF全廃条約は、東西冷戦の中1987年12月8日に、米国とロシア(旧ソ連)の間で調印され、条約が定める期限(1991年)までに、米露双方の中距離核戦力は全廃された。ヨーロッパ社会の安全保障にとってきわめて重要な条約であったことは間違いない。米トランプ政権は、条約に参加しない中国も含めて新たな核軍縮の枠組みをと提言したが、この間そのような状況が動き出したとは聞かない。一方的な離脱と提言からは、何も生まれてはいない。

「核なき世界」を提唱した米オバマ前政権の政策から一変して、米国トランプ政権は、自国第一主義と力による平和を標榜して、他国に対して様々な圧力をかけ続けてきた。昨年のイランの核合意からの離脱は、ペルシャ湾ホルムズ海峡の不安定化をもたらし、自ら世界各国へ有志国連合への参加を呼びかけるものとなった。INF条約やイラン核合意からの離脱は、その象徴的なものである。これまで世界が長い間地道に積み上げてきた、平和と核兵器廃絶への枠組みを、米トランプ政権が一方的に破壊していくことは絶対に許されない。2021年には、新戦略兵器削減条約(新START)が期限を迎える。更なる削減に向けて米露両国は、条約の延長に向けた交渉をすみやかに開始すべきだ。

米トランプ政権は、核政策の見直し(NPR)において、地域を限定して使用可能とする核弾頭の小型化や通常兵器の攻撃に対して核の使用を可能とするなど、核攻撃能力の強化を狙っている。自らが核に依存する一方で、朝鮮民主主義人民共和国に対して核政策の放棄を要求している。自らの強力な軍事力を背景にして、思うがままに主張していく米国の姿勢が世界平和をつくりあげるとは決して言えない。一方的で独善的な圧力は、予期せぬ事態を誘発していく可能性がある。

日本政府も、日米同盟の深化を標榜し、米国の核抑止に依存し核兵器禁止条約の署名・批准に否定的な姿勢を崩さない。唯一の戦争被爆国を標榜する日本の姿勢とは、到底言えるものではない。

2020年に控えたNPT再検討会議に向けて、米国を中心とした核兵器保有国は、核兵器廃絶へ向けた確固たるアプローチの再構築をめざさなくてはならない。日本は、そのためのイニシアチブを確立しなくてはならない。原水禁は、原水禁世界大会を前に、「核絶対否定」の原則の下、核兵器廃絶の声を後退させることなく、全力でとりくんでいく。

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芥川龍之介の「軍人嫌い」「軍人は小児に近い」

毎日新聞「火論(かろん)」より  玉木 研二客員編集委員

「軍人は小児に近いものがある」と書いたのは芥川龍之介だ。芥川の軍人嫌いはよく知られている。「軍人の誇りとするものは必ず小児の玩具に似ている」とも。

今話題の「アルキメデスの大戦」は1933年が舞台。大陸に進出し国際連盟を脱退したころ。主人公の「櫂(かい)直(ただし)」も軍部への嫌悪感を隠さない。

彼を海軍に引き込んだ山本五十六は、「大艦巨砲主義」らの対米戦を批判し、航空兵力の強化を主張した。巨大戦艦建造計画の見積額の低さを怪しみ、櫂の数式による解析で矛盾を暴こうとした。

フィクションだが、数式を駆使して不合理を証明し、計画をつぶし戦争そのものを亡き物にしようとする発想は歴史を突く。なぜなら、どうして、誰が考えても無謀な太平洋戦争に突入したのか、回避できなかったのか、いまだに未解明な根源的な問いが込められているからだ。

さて、建造された巨大戦艦(大和、武蔵)は、その巨砲で敵を撃滅することもなく、航空機の攻撃で海の露と消えた。小児が欲しがる玩具・武器はいま、核兵器、ミサイル、ロボット、AI、サイバーととめどない。リーダーたちは正義の旗を振りかざし、宇宙軍拡競争さえ唱える。

芥川の警句がある。

正義は武器に似たものである。武器は金を出しさえすれば、敵にも味方にも買われるだろう。正義も理屈をつけさえすれば、敵にも味方にも買われるものである。

米国から高額で購入し地上配備するミサイル防衛システム「イージスアショア」。その過程で縮尺を誤るなどの大ポカがあった。住民は怒り、困惑し、秋田選挙区の結果となった。

その武器は、もちろん「玩具」ではない。

 

 

 

 

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自民、公明、維新の「改憲勢力」が2/3分議席を割り込むも、引き続き立憲主義の回復と安倍政権の退陣を求めて闘いを強化しよう!

自民、公明、維新の「改憲勢力」が3分の2の議席を割り込むも、安倍政権は継続、引き続き立憲主義の回復と安倍政権の退陣を求めて闘いを強化しよう!

2019年7月22日

7月21日投開票された第25回参議院選挙の結果、自民、公明、維新の「改憲勢力」が改憲発議に必要な3分の2の議席を割り込みました。

この間、私たち、平和フォーラムは、13項目にわたる政策合意を基本に野党共闘を推進する市民連合の中心的役割を担いながら、この参議院選挙を改憲阻止の闘いと位置づけ取り組みを進めてきましたが、参議院で改憲を許さない大きな一歩を築くことができました。

全国で奮闘いただいた各都道府県組織及び、中央加盟団体の皆さんに心から敬意を表します。

しかし、安倍晋三首相は、残り2年余の総裁任期の中で「残された任期の中で憲法改正に挑んでいきたい」と主張するとともに、野党の一部の取り込みにも意欲を示しており、私たちは、引き続き平和憲法を守り憲法理念実現をめざす闘いの強化と立憲野党との連携強化が求められています。

一方、私たちは、参議院選挙の中で、安倍政権のもとで強行成立させられた憲法違反の安保法(戦争法)や共謀罪法の廃止、脱原発・再生可能エネルギーの推進、沖縄辺野古新基地建設の中止と普天間基地の返還、森友学園・加計学園や南スーダンにおける日報隠蔽などの疑惑の究明と透明性の高い行政の確立などを求めるとともに、立憲主義を踏みにじり暴走を続ける安倍政権の退陣を求めて様々な取り組みを進めてきました。しかし、与党が過半数を占めるという結果の中で安倍政権は継続されることとなり、改めて、これらの課題に対する総がかり行動実行委員会や戦争をさせない1000人委員会、さよなら原発1000万人アクションの取り組みを強化していかなければなりません。

私たち平和フォーラムは、安倍政権の暴走を阻止し、その退陣を求めるとともに、立憲主義の回復と憲法理念の実現をめざしさらに職場や地域での取り組みを強化していきます。

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与党71議席で勝利 野党“一本化で一定成果” 改憲勢力3分の2は割り込む

与党71議席で勝利 野党一本化で一定の成果か 

改憲勢力3分の2は割り込む

NHKデジタル 2019年7月22日 7時24分参院選

21日投票が行われた参議院選挙で、自民・公明両党は、改選議席の過半数を上回る71議席を獲得して勝利し、安倍総理大臣は引き続き安定した基盤のもと政権運営にあたることになります。ただ、自民・公明両党と日本維新の会をあわせた憲法改正に前向きな勢力は、85議席に届かず、憲法改正の発議に必要な参議院全体の3分の2を維持できませんでした。これに対して野党側は、焦点の全国32の1人区で前回並みの10議席を獲得し、候補者の一本化が一定の成果をあげたとしています。参議院選挙は、選挙区と比例代表を合わせた124の改選議席すべてが決まりました。

各党の獲得議席は
▽自民党は選挙区38、比例代表19の合わせて57議席で、前回3年前の56議席を上回りました。
▽立憲民主党は選挙区9、比例代表8の合わせて17議席で、改選前の9議席から大きく議席を伸ばしました。
▽国民民主党は選挙区3、比例代表3の合わせて6議席を獲得しました。
▽公明党は選挙区7、比例代表7の合わせて14議席で、前回3年前と並び、過去最多となりました。
▽共産党は選挙区3、比例代表4の合わせて7議席でした。
▽日本維新の会は選挙区5、比例代表5の合わせて10議席で改選前の7議席を上回りました。
▽社民党は比例代表で1議席、
▽初めて国政選挙に臨んだれいわ新選組は比例代表で2議席を獲得しました。
また、▽NHKから国民を守る党は、比例代表で1議席を獲得しました。
▽無所属は9議席となっています。
この結果、自民・公明両党は改選議席の過半数にあたる63議席を上回る71議席を獲得し、勝利しました。ただ自民・公明両党と日本維新の会を合わせた憲法改正に前向きな勢力の合計は81議席で、非改選の79議席を合わせても改正の発議に必要な参議院全体の3分の2にあたる164議席には届かず、3分の2を維持できませんでした。
安倍総理大臣は、NHKの開票速報番組で「国民から『安定した政治基盤のもとにしっかりと政策を進め、そのもとで外交を展開し、国益を守れ』という判断をしてもらったと思っている。しっかりと期待に応えていきたい」と述べました。

また、憲法改正について「改憲に必要な3分の2の多数は、これから憲法審査会における議論を通じて形成していきたい」と述べました。

一方、選挙戦で焦点となっていた全国32の1人区は、自民党が22議席、野党の統一候補が10議席を獲得しました。野党側は東北や新潟、大分などで接戦を制して前回3年前並みの議席を獲得し、候補者の一本化が一定の成果をあげたとしています。

また、日本維新の会は、全国の地域政党などとも連携して支持の掘り起こしを図った結果、東京と神奈川の選挙区で初めて議席を獲得するなど、地盤とする関西以外にも支持を広げました。

一方、総務省のまとめによりますと、選挙区の投票率は、48.80%と、50%を下回り、平成7年の44.52%に次いで、国政選挙としては、戦後2番目に低くなりました。

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日経新聞、行政と電力は「あうんの呼吸」・・、それはいまだ続く!

裁判から逃げた裁判長  住民の安全を無視した不当な判決  志賀原発2号機営業運転差し止め訴訟原告団団長  堂下 健一

 第一審井戸判決(2006年3月24日)から3年後の2009年3月18日、名古屋高裁金沢支部は金沢地裁の画期的な一審判決を破棄し、私たちの原発運転やめろの願いを踏みにじる判決を下しました。判決要旨は、北陸電力と国の主張と政策を鵜呑みにしたものでした。現実的に迫る原発震災に対しては目をそむけ、裁判官としての独自判断を放棄した極めて不当な判決でした。地裁判決をことごとく否定した判決に対して原告団としては、最高裁の高い・厚い壁を承知しつつ31日に上告しました。

判決は、原子力安全委員会の定める安全審査の各指針に適合していればよいというのもで、地裁判決の指摘した点については全く触れることもなく「新指針で耐震性は確保された」と国、電力の馴れ合いをそのまま追認したものでした。国が認めているから何ら原発運転に支障はないという判断です。  地裁判決が指摘したように現実的にM7を超える地震が頻発している事態をどのように見ているのであろうか。それを新指針のいうM6・8の地震想定でもかまわないというのでは、安心して暮らせたものではありません。高裁裁判長の想像力の欠如か思考の停止か。
しかもあろうことか判決要旨では、8年間も隠していた臨界事故に対しては、国・北陸電力の報告・処分・対策を無条件に認めています。判決を追い風に、電力は判決翌日には1号機の運転再開を県と地元町に申し入れてきました。日経新聞には行政と電力は「あうんの呼吸」と書かれました。ことはそのように運びました。運転再開の申請から許可まで1週間でした。裁判所に続いて行政も電力を監視・指導するという役目をまたもや放棄してしまいました。これでは住民の生活と安全は守れません。
多くの新聞各紙が指摘していましたが、電力は裁判に勝ったからといって住民の安全が保障されたわけではない。「これで大丈夫」と思えるか。地震が発生する場所、揺れの大きさが、予測を超える事態が相次いでいる。原発で重大事故が起きれば被害は広範囲に及び、取り返しのつかない被害を招く恐れがある。原発の耐震性に「想定外」はあってはならない。
私たちの心配そのままの言葉が並んでいる。原発を止めろという記事はありませんでしたが、私たちの訴えに大きな道理があることは確かです。金沢地裁の判決が国や電力会社により厳格な安全対策を促したことは事実ですが、私たちの願いは原発震災に襲われる前に原発を止めることにあります。
1、2号機とも運転を再開しましたが、原発を止めようという気持ちはいささかも衰えていません。引き続き全国のみなさんと連帯してがんばっていきます。

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