「戦後最悪の政治指導者トリオに、戦前に引き戻されるのは御免だ」

「戦後最悪の政治指導者トリオに

戦前に引き戻されるのは御免だ」

         連載「eyes 浜矩子」(アエラより無断転載)2019.8.1 16:00AERA#

浜矩子(はま・のりこ)/1952年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。前職は三菱総合研究所主席研究員。1990年から98年まで同社初代英国駐在員事務所長としてロンドン勤務。現在は同志社大学大学院教授で、経済動向に関するコメンテイターとして内外メディアに執筆や出演 経済学者で同志社大学大学院教授の浜矩子さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、経済学的視点で切り込みます。

*  *  *
ボリス・ジョンソン氏が英国の首相に就任した。間違いなく、戦後最悪の英国首相だと思う。これで、戦後最悪の政治指導者は3人目だ。1人目が日本の安倍首相。2人目が米国のトランプ大統領。そして、今回のジョンソン英首相だ。彼らには、三つの共通点がある。一に幼児性。二に不寛容。三に未熟な涙腺。

幼児性がこの3人組の共通点だというのは幼児に失礼ではある。だが、彼らのあの忍耐力の無さや自己中心性は、やはり幼すぎるというほかはない。不寛容な彼らは、自分にとって異質なものを受容することが出来ない。違和感があるものを極端に恐れる。怖いから排除しようとする。不寛容の背後には、臆病者の怯えが見え隠れしている。

彼らは他者のために泣くことが出来ない。他者の痛みがわからない。だから、他者の痛みに思いを馳せてもらい泣きすることが出来ない。自分以外の人間のためには涙腺から涙が出てきそうにない。もらい泣き力は、涙腺成熟度の証しだ。

戦後最悪男(幸い、今のところ男だけだ)が、どうしてこうも次々出現するのだろう。それはつまり、戦後という時代が危機に瀕していることを意味しているのだろう。これは恐ろしいことだ。これから先、二度と再び「戦前」という時代が戻ってきてもらっては困る。「戦前」の次に来るのは戦争だ。我々は、これからずっと、未来永劫、「戦後」という状態を守り抜かなければいけない。戦後最悪男たちの野望や勘違いや愚かさのおかげで、「戦前」状態に引きずり戻されることは、断じて御免被る必要がある。

幼児的で不寛容で涙腺が未熟な戦後最悪男たちは、口汚く他者をののしる。ジョンソン首相は大陸欧州の人々を。安倍首相は野党とそのサポーターたちを。トランプ大統領は、手当たり次第、誰でも彼でも。ののしりの雄叫びは、人々の戦闘性を鼓舞する。戦闘とは無縁の「戦後」を保持していこうとする我らは、ののしりにののしりをもって逆襲してはいけない。そんなことをいうアンタこそののしり屋だろう。そう言われそうだと思いつつ、大人の寛容さともらい泣き力をもって「戦後」を守護する側にいたいと思う。

※AERA 2019年8月5日号

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被爆74周年原水爆禁止世界大会・広島大会基調

被爆74周年原水爆禁止世界大会・広島大会基調

2019年8月 4日

 猛暑の中を全国各地から原水禁世界大会広島大会に足を運んでいただきました皆さまに、心から感謝を申し上げます。若干の時間をいただき、原水禁世界大会の基調提案を行わせていただきます。

 原爆投下から、広島は74年目の夏を迎えようとしています。被爆者の願いであった「核兵器禁止条約」が122カ国の賛成によって採択されてから2年がたちました。すでに70カ国が署名し、8月2日現在24カ国が批准を済ませています。遠からず条約は発効します。

 日本政府は、条約が米国の核抑止力を否定するとして、署名・批准には後ろ向きです。外務省は、「核に頼らない安全保障を考えていかなくてはならない。その状況を作っていきたい」と答えています。その姿勢は、まさに核兵器禁止条約の署名・批准への姿勢なのです。被爆国日本の政府が核兵器禁止条約の署名・批准を行う。そして非核保有国すべてが批准する。そのことで核抑止のあり方を変えていく。唯一の戦争被爆国日本の政府の役割はそこにあります。

 原水禁は、連合、KAKKINとともに、日本政府に対して核兵器禁止条約の署名・批准を求める「核兵器廃絶1000万署名」をスタートさせました。日本から、非核保有国全てへ、そして核保有国へ、核兵器禁止条約の輪を広げていきましょう。原水禁は、核兵器廃絶1000万署名に全力を尽くします。

 「ストックホルム国際平和研究所」が発表した推計によれば、2019年1月時点の米露英仏中の5カ国とインド、パキスタン、イスラエル、朝鮮を加えた計9カ国が持つ世界の核弾頭数は1万3865発で、米露による削減の結果前年度比で600発の減となっています。
新START、新戦略兵器削減条約は、確実に核弾頭数を減らしています。しかし、一方で同研究所は、核弾頭や発射システム、製造施設など核兵器に関わる総体の近代化が進められているとも指摘しています。

 トランプ政権は、この間、「アメリカ・ファースト」「力による平和」を標榜して、一方的、挑戦的な強硬姿勢を貫き、これまで国際社会が作りあげてきた、核軍縮の枠組みを破壊しています。2018年には、イランとの核合意から一方的に離脱し、イランへの経済制裁を再開しました。混迷をますイラン情勢は、ペルシャ湾・ホルムズ海峡での緊張を生み出し、自ら有志国連合を呼びかけることとなっています。

 今年2月には、ロシアとの中距離核戦力全廃条約からも、ロシアの中距離核開発と条約の制約を受けない中国の中距離核開発を理由に離脱を表明し、8月2日に条約は失効しました。米露間では、今後中距離核開発をめぐって軍拡競争へ突入していく危険性も懸念されます。ヨーロッパ地域や東アジア地域の安全保障にとって、重大な事態を招いています。米国からは、同盟国日本への中距離核の配備要請の声も聞こえ、国是である非核三原則に抵触し、その空洞化すら懸念されます。米露両国は、重要な新STRATの継続の協議も含めて、核保有国の責任として、新たな核兵器削減・廃絶の枠組みの構築に努力しなくてはなりません。

 米トランプ大統領との親密な関係を強調し、日米同盟の深化を提唱する安倍政権は、核搭載可能なF35ステルス戦闘機105機、総額で1兆4000億円もの購入を決定し、ヘリ搭載の護衛艦「いずも」をF35B戦闘機を搭載しての空母への改修、敵基地攻撃を目途にした巡航ミサイルなどの導入を決定しています。

 昨年9月には、海上自衛隊は最大級のヘリ空母「かが」を含む護衛艦3隻と潜水艦「くろしお」を南シナ海に派遣し、対潜水艦訓練を目的とした演習を実施しました。ヘリ空母「いずも」と護衛艦「むらさめ」は、今年5月に、米海軍、インド海軍、フィリピン海軍との4カ国共同訓練を南シナ海で実施し、6月には、同じ南シナ海海域で、原子力空母「ロナルド・レーガン」を中心とする空母部隊との共同訓練を実施しています。米国や英国も駆逐艦などを派遣し「航行の自由作戦」を展開し中国と対立するきわめて緊迫した海域での訓練は、極めて異例です。

 安倍政権は、一帯一路政策を推進する中国を仮想敵として、インド太平洋構想を提唱し、米軍と一体となった軍事行動を展開しています。米国は、第2次大戦後も「世界の警察」を自任しながら、自らの覇権かけて、世界各地で地域紛争に介入しつつ、自ら戦争をひき起こしてきました。安倍政権の「日米同盟基軸」の姿勢と「積極的平和主義」の考えは、日米一体となった「日米統合軍」をつくり出し、自ら積極的に米国の覇権に協力することを確実にしています。

 このような情勢を受けて、沖縄県名護市辺野古では、在日米軍海兵隊の新基地の建設が強行されています。県知事選挙、各国政選挙、そして今年2月の辺野古埋立の賛否を問う県民投票、様々な形で示された沖縄県民の辺野古新基地建設反対の意志は、安部政権の建設強行に踏みにじられ、もはや沖縄には民主主義、憲法がないと言うほどの事態を引き起こしています。私たちは、沖縄県民とともに、核のない、基地のない沖縄をめざしてとりくまねばなりません。

 G20大阪サミット後の6月30日に、韓国を訪問したトランプ米大統領は、軍事境界線上の板門店において、出迎えた金正恩朝鮮国務委員長と約50分間にわたって会談しました。会談の中で、今年2月のハノイでの会議以降途絶えていた朝鮮半島の非核化への実務者協議を、再開することで合意をしています。

 朝鮮半島の非核化に向けての議論は、一朝一夕に進むものではありません。米朝間もしくは中国を加えて、朝鮮戦争の終結、平和協定の締結、さらには東北アジア非核地帯構想の実現に向けて進み出すこと、段階的な非核化へのプロセスとそれに伴う制裁措置の解除、話し合いの進展のために連絡事務所の開設など、信頼感を高めながらひとつ一つの課題を克服していく粘り強い努力が必要です。早期の実務者協議の再開が待たれます。

 朝鮮半島情勢が進展する中にあって、制裁の強化に固執してきた安倍首相は、この間、存在感を示すことができないできました。重要課題としてきた拉致問題さえも、米朝首脳会談に託すこととなっています。情勢を打破すべく、安倍首相は突然、朝鮮に対して「無条件の対話」を提起しました。朝鮮政府は、「朝鮮への敵視政策は少したりとも変わっていない」と突き放しています。

 安倍政権は、2002年の「日朝平壌宣言」に立ち返って交渉を開始すべきです。日本国内における、高校無償化からの排除に象徴される在日コリアンへの差別の解消や在朝被爆者への援護開始、国交回復後の拉致問題の解決などを前提としつつ、朝鮮敵視の政策を転換し、まずは連絡事務所の相互開設などによって相互信頼の醸成にとりくみ、対話の中で国交の正常化をめざすべきです。朝鮮敵視政策を継続する安倍政権は、21世紀の東アジア社会での自らの立場を誤っています。

 次に、原子力エネルギーをめぐる現状と福島の今について提起したいと思います。

 雑誌「世界」の2019年7月号、「原子力産業の終焉」と題した特集において、原子力アナリストのマイケル・シュナイダーさんは、原子力発電所の現状について、世界の商業用電力ミックスにおける原子力の割合は、1996年以来17.5%から10%に低下し、様々な要因から原発はもう市場での競争力を失っていると指摘しています。

 安倍政権がアベノミクスの重要な柱に位置づけてきた、日本の原発輸出政策は、インド、ベトナム、トルコ、イギリス、ヨルダンで、全てが頓挫・失敗・撤退しています。安全対策などによる原発建設コストの増大は、原発を市場経済から閉め出す方向に動いています。
東芝、日立製作所、三菱重工の日本を代表する原発メーカーが、政府方針とともに原発建設に拘泥するならば、企業の将来にも、日本経済にも暗雲をもたらすでしょう。原発輸出を基本政策としてきた安部政権の責任は重大です。

 原水禁は、原子力の商業利用にも、一貫して反対してきました。福島第一原発事故に際しては、大江健三郎さん、瀬戸内寂聴さんなどの9人の呼びかけ人と、様々な市民の皆さんの協力を得て、「さようなら原発1000万人アクション」の運動を展開し、「脱原発・持続可能で平和な社会をめざして」の声を上げ続けてきました。私たちの知る限り、脱原発の世論は圧倒的多数を示しています。これほど世論と政治の乖離が大きい政策はありません。

 事故を起こした福島第一原発の現状は、極めてきびしいものがあります。事故収束までの費用を経産省は21兆5千億円と見積もっていますが、70兆円などとの試算も出ており、今後の見通しは全く立たずにいます。

 高線量の放射能に阻まれて、溶融した核燃料は手つかずのまま、冷却を続けるしかない状態で、汚染水はたまり続けています。作業の長期化は避けられません。福島県内には、汚染水のみならず、瓦礫、伐採木、防護服などの焼却灰、そして除染によって出された汚染土など、様々な放射性物質に汚染されたものが、未だに住環境のすぐ側に積み上げられています。事故収束作業や様々な場面で労働者がヒバクする事態は避けるべきであり、何よりも暮らし続ける市民の環境をこれ以上汚染することは許されません。

 福島県は「県民健康調査」において、福島原発事故当時、概ね18歳以下であった子どもたちに甲状腺(超音波)検査を実施してきました。2019年 3月末現在、2018年末より 6人増えて218人が甲状腺がんまたはがんの疑いとされ、174人が手術を受けています。甲状腺評価部会は「現時点で、放射線被ばくとの関連は認められない」としていますが、甲状腺がんを始めとする健康リスクは、原発事故がなければなかったのです。

 国は事故の責任を認め、被爆した人々の医療支援や精神的ケアに全力を尽くすべきです。浪江町や飯舘村では「健康手帳」のとりくみがすすめられています。広島・長崎の被爆者、そして原水禁運動が、長い闘いの中で勝ち取った、原爆被爆者健康手帳と同様の法整備を、国の責任として進めなくてはならないと考えます。

 被災地福島では、8年余経った今も県内に1万1,084人、県外に3万 1,608人、避難先不明者も含めて合計4万2,705人が、長期の避難生活を余儀なくされています。
政府は、法律で定められている年間被ばく限度1mSvに従わず、国際放射線防護委員会が定めた、重大事故時の被ばく基準を勝手に適用し、法の定めの20倍もの被ばく量を、避難指示を解除した地域の住民に押しつけています。

 避難指示解除に合わせて、住宅支援、精神的賠償などの支援を次々に打ち切り、被災者が帰らざる得ない状況を作り出しています。避難指示解除区域では、医療や介護、日常生活に必要な各種インフラやサービスは全く不十分なままで、居住率は25%程度、高齢化率は、事故前の27.3%から44.3%に上昇しています。

 国は、「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」を策定し、福島事故では放射線の被ばくによる健康影響は今後もなく、福島は復興しつつあるとし、事故被害者を切り捨て、原発再稼働を推し進めようとしています。

 復興庁作成の「放射線のホント」や文科省が全国の小中高校に配布した「放射線副読本」などは、放射線のリスクを矮小化し、誤った知識を持って原発の稼働を許そうとするものです。将来のエネルギー政策を選択する権利を持つ者に対して一方的な意見を押しつけることが許されるわけがありません。風評払拭と言う言葉を利用して、フクシマを亡きこととし、原発推進をすすめる環境づくりを許してはなりません

 政府は、電力会社は、目先の利益のみを追求し、膨大な投資を行い、原発の再稼働をすすめようとしています。経団連は、原発を基本とした将来のエネルギー政策を提言し、国の第5次エネルギー基本計画には入れることができなかった原発の新設も、要求しています。中国電力は、地元広島に近い上関原発の埋め立て申請許可の延長を求めるなど、原発新設に前のめりの姿勢を見せています。フクシマの現状を見たとき、第一原発の前に立ったとき、なぜ、原発を将来のエネルギーとして選択できるのか、理解できません。全ての状況が、全ての数字が、「脱原発」を選択していることは明らかです。

 死を目前にする兵士の心情を描いた「桜島」で著名な小説家、梅崎春生は、「どのみち死なねばならぬなら、 私は、なっとくして死にたいのだ」と述べています。1945年8月6日、瞬時に奪われた命は、何を思うのでしょうか。「納得」と言うならば、納得すべき何ものもなく死に見舞われた者は、何を思うのでしょうか。

 広島大会に先立つ福島大会で、多くの原発事故被災者に「ふるさとの喪失感」が伴うとの話を聞きました。故郷を奪われたことを、どう自らに納得させるのか、その困難が、喪失感を生んでいくのでしょうか。

 命と命に付随する人間の全てを、私たちは決して「納得」せずには奪われない。その権利を持っていることを、改めて確認したいと思います。そして、そのことを原水禁の基本に据えて、更なる運動の展開をめざそうではありませんか。

 その決意を申し添えて、被ばく74周年原水禁世界大会の基調提案といたします。

2019年8月2日

 

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中距離核戦力(INF)全廃条約失効に関する事務局長談話

2019年8月2日

 

中距離核戦力(INF)全廃条約失効に関する事務局長談話

原水爆禁止日本国民会議

事務局長 藤本泰成

 米露の二国間で交わされていた「中距離核戦力(INF)全廃条約」が、8月2日失効した。今年2月に米国は、ロシアが条約に反して中距離核の開発を進めているとして、条約からの離脱を表明して以来、ロシアと対立したまま条約が定める失効日を迎えた。核兵器禁止条約が採択され、徐々に署名・批准する国が増加し、核兵器廃絶への声が高まった中で、中距離核戦力(INF)全廃条約の失効の影響は大きい。「核なき世界」を希求してきた国際的機運の後退が懸念される。

INF全廃条約は、東西冷戦の中1987年12月8日に、米国とロシア(旧ソ連)の間で調印され、条約が定める期限(1991年)までに、米露双方の中距離核戦力は全廃された。ヨーロッパ社会の安全保障にとってきわめて重要な条約であったことは間違いない。米トランプ政権は、条約に参加しない中国も含めて新たな核軍縮の枠組みをと提言したが、この間そのような状況が動き出したとは聞かない。一方的な離脱と提言からは、何も生まれてはいない。

「核なき世界」を提唱した米オバマ前政権の政策から一変して、米国トランプ政権は、自国第一主義と力による平和を標榜して、他国に対して様々な圧力をかけ続けてきた。昨年のイランの核合意からの離脱は、ペルシャ湾ホルムズ海峡の不安定化をもたらし、自ら世界各国へ有志国連合への参加を呼びかけるものとなった。INF条約やイラン核合意からの離脱は、その象徴的なものである。これまで世界が長い間地道に積み上げてきた、平和と核兵器廃絶への枠組みを、米トランプ政権が一方的に破壊していくことは絶対に許されない。2021年には、新戦略兵器削減条約(新START)が期限を迎える。更なる削減に向けて米露両国は、条約の延長に向けた交渉をすみやかに開始すべきだ。

米トランプ政権は、核政策の見直し(NPR)において、地域を限定して使用可能とする核弾頭の小型化や通常兵器の攻撃に対して核の使用を可能とするなど、核攻撃能力の強化を狙っている。自らが核に依存する一方で、朝鮮民主主義人民共和国に対して核政策の放棄を要求している。自らの強力な軍事力を背景にして、思うがままに主張していく米国の姿勢が世界平和をつくりあげるとは決して言えない。一方的で独善的な圧力は、予期せぬ事態を誘発していく可能性がある。

日本政府も、日米同盟の深化を標榜し、米国の核抑止に依存し核兵器禁止条約の署名・批准に否定的な姿勢を崩さない。唯一の戦争被爆国を標榜する日本の姿勢とは、到底言えるものではない。

2020年に控えたNPT再検討会議に向けて、米国を中心とした核兵器保有国は、核兵器廃絶へ向けた確固たるアプローチの再構築をめざさなくてはならない。日本は、そのためのイニシアチブを確立しなくてはならない。原水禁は、原水禁世界大会を前に、「核絶対否定」の原則の下、核兵器廃絶の声を後退させることなく、全力でとりくんでいく。

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芥川龍之介の「軍人嫌い」「軍人は小児に近い」

毎日新聞「火論(かろん)」より  玉木 研二客員編集委員

「軍人は小児に近いものがある」と書いたのは芥川龍之介だ。芥川の軍人嫌いはよく知られている。「軍人の誇りとするものは必ず小児の玩具に似ている」とも。

今話題の「アルキメデスの大戦」は1933年が舞台。大陸に進出し国際連盟を脱退したころ。主人公の「櫂(かい)直(ただし)」も軍部への嫌悪感を隠さない。

彼を海軍に引き込んだ山本五十六は、「大艦巨砲主義」らの対米戦を批判し、航空兵力の強化を主張した。巨大戦艦建造計画の見積額の低さを怪しみ、櫂の数式による解析で矛盾を暴こうとした。

フィクションだが、数式を駆使して不合理を証明し、計画をつぶし戦争そのものを亡き物にしようとする発想は歴史を突く。なぜなら、どうして、誰が考えても無謀な太平洋戦争に突入したのか、回避できなかったのか、いまだに未解明な根源的な問いが込められているからだ。

さて、建造された巨大戦艦(大和、武蔵)は、その巨砲で敵を撃滅することもなく、航空機の攻撃で海の露と消えた。小児が欲しがる玩具・武器はいま、核兵器、ミサイル、ロボット、AI、サイバーととめどない。リーダーたちは正義の旗を振りかざし、宇宙軍拡競争さえ唱える。

芥川の警句がある。

正義は武器に似たものである。武器は金を出しさえすれば、敵にも味方にも買われるだろう。正義も理屈をつけさえすれば、敵にも味方にも買われるものである。

米国から高額で購入し地上配備するミサイル防衛システム「イージスアショア」。その過程で縮尺を誤るなどの大ポカがあった。住民は怒り、困惑し、秋田選挙区の結果となった。

その武器は、もちろん「玩具」ではない。

 

 

 

 

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自民、公明、維新の「改憲勢力」が2/3分議席を割り込むも、引き続き立憲主義の回復と安倍政権の退陣を求めて闘いを強化しよう!

自民、公明、維新の「改憲勢力」が3分の2の議席を割り込むも、安倍政権は継続、引き続き立憲主義の回復と安倍政権の退陣を求めて闘いを強化しよう!

2019年7月22日

7月21日投開票された第25回参議院選挙の結果、自民、公明、維新の「改憲勢力」が改憲発議に必要な3分の2の議席を割り込みました。

この間、私たち、平和フォーラムは、13項目にわたる政策合意を基本に野党共闘を推進する市民連合の中心的役割を担いながら、この参議院選挙を改憲阻止の闘いと位置づけ取り組みを進めてきましたが、参議院で改憲を許さない大きな一歩を築くことができました。

全国で奮闘いただいた各都道府県組織及び、中央加盟団体の皆さんに心から敬意を表します。

しかし、安倍晋三首相は、残り2年余の総裁任期の中で「残された任期の中で憲法改正に挑んでいきたい」と主張するとともに、野党の一部の取り込みにも意欲を示しており、私たちは、引き続き平和憲法を守り憲法理念実現をめざす闘いの強化と立憲野党との連携強化が求められています。

一方、私たちは、参議院選挙の中で、安倍政権のもとで強行成立させられた憲法違反の安保法(戦争法)や共謀罪法の廃止、脱原発・再生可能エネルギーの推進、沖縄辺野古新基地建設の中止と普天間基地の返還、森友学園・加計学園や南スーダンにおける日報隠蔽などの疑惑の究明と透明性の高い行政の確立などを求めるとともに、立憲主義を踏みにじり暴走を続ける安倍政権の退陣を求めて様々な取り組みを進めてきました。しかし、与党が過半数を占めるという結果の中で安倍政権は継続されることとなり、改めて、これらの課題に対する総がかり行動実行委員会や戦争をさせない1000人委員会、さよなら原発1000万人アクションの取り組みを強化していかなければなりません。

私たち平和フォーラムは、安倍政権の暴走を阻止し、その退陣を求めるとともに、立憲主義の回復と憲法理念の実現をめざしさらに職場や地域での取り組みを強化していきます。

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与党71議席で勝利 野党“一本化で一定成果” 改憲勢力3分の2は割り込む

与党71議席で勝利 野党一本化で一定の成果か 

改憲勢力3分の2は割り込む

NHKデジタル 2019年7月22日 7時24分参院選

21日投票が行われた参議院選挙で、自民・公明両党は、改選議席の過半数を上回る71議席を獲得して勝利し、安倍総理大臣は引き続き安定した基盤のもと政権運営にあたることになります。ただ、自民・公明両党と日本維新の会をあわせた憲法改正に前向きな勢力は、85議席に届かず、憲法改正の発議に必要な参議院全体の3分の2を維持できませんでした。これに対して野党側は、焦点の全国32の1人区で前回並みの10議席を獲得し、候補者の一本化が一定の成果をあげたとしています。参議院選挙は、選挙区と比例代表を合わせた124の改選議席すべてが決まりました。

各党の獲得議席は
▽自民党は選挙区38、比例代表19の合わせて57議席で、前回3年前の56議席を上回りました。
▽立憲民主党は選挙区9、比例代表8の合わせて17議席で、改選前の9議席から大きく議席を伸ばしました。
▽国民民主党は選挙区3、比例代表3の合わせて6議席を獲得しました。
▽公明党は選挙区7、比例代表7の合わせて14議席で、前回3年前と並び、過去最多となりました。
▽共産党は選挙区3、比例代表4の合わせて7議席でした。
▽日本維新の会は選挙区5、比例代表5の合わせて10議席で改選前の7議席を上回りました。
▽社民党は比例代表で1議席、
▽初めて国政選挙に臨んだれいわ新選組は比例代表で2議席を獲得しました。
また、▽NHKから国民を守る党は、比例代表で1議席を獲得しました。
▽無所属は9議席となっています。
この結果、自民・公明両党は改選議席の過半数にあたる63議席を上回る71議席を獲得し、勝利しました。ただ自民・公明両党と日本維新の会を合わせた憲法改正に前向きな勢力の合計は81議席で、非改選の79議席を合わせても改正の発議に必要な参議院全体の3分の2にあたる164議席には届かず、3分の2を維持できませんでした。
安倍総理大臣は、NHKの開票速報番組で「国民から『安定した政治基盤のもとにしっかりと政策を進め、そのもとで外交を展開し、国益を守れ』という判断をしてもらったと思っている。しっかりと期待に応えていきたい」と述べました。

また、憲法改正について「改憲に必要な3分の2の多数は、これから憲法審査会における議論を通じて形成していきたい」と述べました。

一方、選挙戦で焦点となっていた全国32の1人区は、自民党が22議席、野党の統一候補が10議席を獲得しました。野党側は東北や新潟、大分などで接戦を制して前回3年前並みの議席を獲得し、候補者の一本化が一定の成果をあげたとしています。

また、日本維新の会は、全国の地域政党などとも連携して支持の掘り起こしを図った結果、東京と神奈川の選挙区で初めて議席を獲得するなど、地盤とする関西以外にも支持を広げました。

一方、総務省のまとめによりますと、選挙区の投票率は、48.80%と、50%を下回り、平成7年の44.52%に次いで、国政選挙としては、戦後2番目に低くなりました。

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日経新聞、行政と電力は「あうんの呼吸」・・、それはいまだ続く!

裁判から逃げた裁判長  住民の安全を無視した不当な判決  志賀原発2号機営業運転差し止め訴訟原告団団長  堂下 健一

 第一審井戸判決(2006年3月24日)から3年後の2009年3月18日、名古屋高裁金沢支部は金沢地裁の画期的な一審判決を破棄し、私たちの原発運転やめろの願いを踏みにじる判決を下しました。判決要旨は、北陸電力と国の主張と政策を鵜呑みにしたものでした。現実的に迫る原発震災に対しては目をそむけ、裁判官としての独自判断を放棄した極めて不当な判決でした。地裁判決をことごとく否定した判決に対して原告団としては、最高裁の高い・厚い壁を承知しつつ31日に上告しました。

判決は、原子力安全委員会の定める安全審査の各指針に適合していればよいというのもで、地裁判決の指摘した点については全く触れることもなく「新指針で耐震性は確保された」と国、電力の馴れ合いをそのまま追認したものでした。国が認めているから何ら原発運転に支障はないという判断です。  地裁判決が指摘したように現実的にM7を超える地震が頻発している事態をどのように見ているのであろうか。それを新指針のいうM6・8の地震想定でもかまわないというのでは、安心して暮らせたものではありません。高裁裁判長の想像力の欠如か思考の停止か。
しかもあろうことか判決要旨では、8年間も隠していた臨界事故に対しては、国・北陸電力の報告・処分・対策を無条件に認めています。判決を追い風に、電力は判決翌日には1号機の運転再開を県と地元町に申し入れてきました。日経新聞には行政と電力は「あうんの呼吸」と書かれました。ことはそのように運びました。運転再開の申請から許可まで1週間でした。裁判所に続いて行政も電力を監視・指導するという役目をまたもや放棄してしまいました。これでは住民の生活と安全は守れません。
多くの新聞各紙が指摘していましたが、電力は裁判に勝ったからといって住民の安全が保障されたわけではない。「これで大丈夫」と思えるか。地震が発生する場所、揺れの大きさが、予測を超える事態が相次いでいる。原発で重大事故が起きれば被害は広範囲に及び、取り返しのつかない被害を招く恐れがある。原発の耐震性に「想定外」はあってはならない。
私たちの心配そのままの言葉が並んでいる。原発を止めろという記事はありませんでしたが、私たちの訴えに大きな道理があることは確かです。金沢地裁の判決が国や電力会社により厳格な安全対策を促したことは事実ですが、私たちの願いは原発震災に襲われる前に原発を止めることにあります。
1、2号機とも運転を再開しましたが、原発を止めようという気持ちはいささかも衰えていません。引き続き全国のみなさんと連帯してがんばっていきます。

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7月17日、石川県知事に志賀原発の電源車バッテリー火災で申入れ

7月12日北陸電力本社への申入れに続き、7月5日バッテリー火災から12日間を経た7月17日、石川県知事に対し、「重大事故の認識はあるか」「北陸電力は志賀原発を運転する資格なし・廃炉へ」「適合性審査申請書の取り下げ」、そして「原因究明を」求める申し入れを行なった。さよなら志賀原発ネットワークほか3団体14名、対応したのは、危機対策課原子力安全対策室の千葉室長、上野室次長でした。

申し入れ書に対し石川県は、「火災原因は調査中」「廃炉等については規制委の所管」「再発防止の徹底を求める」「規制委には厳格な審査を求めている」との考え方を述べた。これらに対し、「いまだに調査中とは指導が弱すぎる」「あってはならない重大事故と認識しているのか」「プレリリースに反省の色がない」などを追及。県は、「プレリリースは淡々と書きすぎと伝えてある」「早くても中途半端な結論ではさらに悪い」「しっかりした原因究明を行なうよう指導」していると答えた。

私たちは繰り返し、「石川県の『厳しい指導』の結果にもかかわらずこのようなお粗末な事件が繰りかえされる北陸電力にどう対応するか」が問われているのだと追及したが、堂々目ぐりであった。安全協定からも、「地域住民の安全確保のため、関係諸法令及びこの協定に定める事項を遵守し、地域住民に被害を及ぼさないよう万全の措置を講じなければならない」とあり、重ねて「従来の延長線上ではない抜本的な指導強化を」を要請した。具体として、「北電に志賀原発を運転する資格なし」「適合性審査申請書の取り下げ」を迫らないから「北陸電力は甘い対応となる」と指摘。さらに、安全協定に基づく「安管協」での論議が、「規制委員会を説き伏せるくらいの気持ちでやってほしい」「北電は自信を持って対応してほしい」などと、「活断層問題」で四苦八苦している北陸電力の応援団と化している現状・姿勢では、「安全確保」は画餅に帰す。

申入れ後、参加者の感想

「知事が前のめりで、北陸電力はそこを見ているので行政をなめ切っているのでしょう。これまでの、まるで北電の応援団と受け取られても仕方のない言動が今日の事態(北陸電力の無責任な対応・事件・事故)を招いているのでしょう。

 

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米国のイラン攻撃準備反対! 戦争は仕掛けられる

米国のイラン攻撃準備反対!  米国のサイバー攻撃抗議!

米国のスパイ機遊弋反対!  米国のマッチポンプに騙されるな!

有志連合の結成反対!  イランの核開発反対!

日本の戦争参加反対!

 

 

米、日本に有志連合への協力打診 イラン沖で船舶護衛

2019/7/11 2:00    日経新聞より
イラン沖などで民間船舶を護衛するため、米政権は有志連合の結成をめざす(コラージュ、米空母の写真は共同)

イラン沖などで民間船舶を護衛するため、米政権は有志連合の結成をめざす(コラージュ、米空母の写真は共同)

トランプ米政権が中東のイラン沖などを航行する民間船舶を護衛するために同盟国の軍などと有志連合の結成をめざし、日本政府に協力を打診したことが10日、分かった。米国は他の同盟国にも呼びかけており、今後、数週間以内に参加国を決める方針だ。日本政府は米側の具体的な要請を見極めながら、参加の是非や参加する場合の法的な枠組みを判断する。

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米軍制服組トップのダンフォード統合参謀本部議長が9日、ポンペオ国務長官やエスパー国防長官代行らと協議し、有志連合の結成案について詳細を詰めた。ロイター通信によるとダンフォード氏は複数国と調整に入っていると記者団に明らかにし「数週間のうちにどの国が構想を支持するかわかるだろう」との見通しを示した。

日本は原油のほぼ全量を輸入に依存しており、なかでも中東への依存度が高い。財務省の貿易統計によると2018年は中東依存度が88%に達した。国別ではサウジアラビアが38.6%、アラブ首長国連邦(UAE)が25.4%と高く、イランは4.3%だった。

日本船主協会によるとホルムズ海峡を通過する会員各社の船舶は年間延べ1700隻に上り、そのうち約500隻がタンカーだという。海運会社は危険海域を全速力で通過したり、見張りを増やしたりして対応しているが、民間企業だけの対応には限界がある。

野上浩太郎官房副長官は10日の記者会見で「ホルムズ海峡の航行の安全確保は日本のエネルギー安全保障上、死活的に重要だ」と強調した。有志連合への参加の可能性には「日米間で緊密なやり取りをしているが詳細は差し控える」と語った。

米側は有志連合について、警戒活動を指揮する米艦船の周辺で参加国がその米艦船や自国の民間船舶の護衛にあたる仕組みを想定しているとされる。現段階では不透明な部分が多く、日本政府は自衛隊派遣以外の選択肢も含め準備を進める。

自衛隊をホルムズ海峡に派遣する場合、大きく4つの法的枠組みが想定される。安全保障関連法に基づく集団的自衛権の限定行使や後方支援、自衛隊法での海上警備行動、海賊対処法による自衛隊派遣、期限を切った特別措置法の制定だ。

安保法に基づく集団的自衛権は日本に関係の深い国が武力攻撃を受けた際、日本が「存立危機事態」に陥ると判断すれば行使できる。国民の生命、財産などが根底から覆される明白な危険が認められるなど3要件を満たすことが前提で、法的な制約は大きい。放置すれば日本に武力攻撃のおそれがある「重要影響事態」と認定した場合は多国籍軍を後方支援できる。

海上警備行動は日本人が乗船しているなど、日本に関係のある船舶を護衛するために防衛相の判断で自衛隊を派遣できる。外国の船は基本的に護衛対象にならない。海賊対処は攻撃対象が海賊とみなせる場合、射撃などで対応できる。多国間での対処が前提だ。

現行法の要件に合わない場合、特措法を新たに制定する可能性もある。ただ国会審議などで時間がかかる。米側の要請を検討した結果、自衛隊の派遣を見送る選択肢もある。伝統的な友好国であるイランとの関係が悪化する懸念もあり、慎重に判断する。

ホルムズ海峡周辺では6月に日本の会社が運航するタンカーなど2隻が攻撃された。トランプ米大統領は「各国が自国の船舶を守るべきだ」と主張していた。

 

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謎に包まれた「セシウムボール」の脅威(2019.7.16)

謎に包まれた「セシウムボール」の脅威、未知の放射性物質と汚染実態が明らかに

原発事故により少なくとも3万人以上が現在も福島県外で避難生活を続けている

原発は事故を起こさない。東日本大震災の発生以前には、そんな安全神話が信じられていた。しかし2011年3月11日に事故は起き、放射性物質が東日本の広範な地域に飛散した。

福島第一原発事故から8年がたついま、飛散した放射性物質は「たいしたことはない」「健康影響はない」とされているが、はたして本当だろうか。

原発事故後、新しく発見された「セシウムボール」という放射能汚染物質がある。セシウムが含まれた未知の微粒子で、’17年にNHK「クローズアップ現代」で取り上げられ、話題になった。いったいどういうものなのか。研究者に話を聞いた。

東京も通過した『セシウムボール』

’13年、気象研究所の研究チームのひとりである足立光司氏が発表したセシウムボール。水に溶けない性質を持ち、放射性セシウムを含み、放射線を多く出す微粒子だ。過去に研究のない「未知の領域」として、多くの学者が研究を進めている。

その1人、九州大学の宇都宮聡准教授(理学博士)は、米国、英国、フランスと国内の学者との共同研究チームを組み、6本の論文を発表した。

宇都宮氏は、アメリカ・ミシガン大学の原子力工学科で放射性物質や原子力の専門知識を学んだ経歴を持つ。原発事故が起き、その知識が役に立つのではないかと考え、研究に着手。’16年に最初の論文を発表する。

宇都宮氏が率いる研究グループは、福島第一原発から230キロ離れた東京都内の大気エアフィルターからセシウムボールを見つけた。東京都では’11年3月15日午前10〜11時に放射能のピークが観測されている。その同時刻のエアフィルターを分析したのが左下の写真だ。黒い粒は放射性物質の存在を示しているが、その約9割がセシウムボールであると判明している。

このセシウムボールの構造分析も実施。すると、原発事故で溶けた核燃料がコンクリートと反応してできたこともわかった。核燃料は原子炉の圧力容器を突き抜け、格納容器の底のコンクリート部分に溶け落ちて固まった。

これは「燃料デブリ」と呼ばれ、廃炉作業を進めるうえで大きな問題になっている物質だ。セシウムボールは、まれに燃料デブリの小さな破片を取り込みながら、周りの環境に飛んでいくと考えられる。

それを裏づける研究もある。

「圧力容器が破損したケースの実験によれば、溶けた燃料とコンクリートが反応したときにセシウムボールと似たような微粒子ができることが報告されている」(宇都宮氏)

さらに二次イオン質量分析という手法で詳細に分析を行ったところ、放射性物質の含有比率や、原発の何号機から放出されたセシウムボールなのかなどもわかってきた。

いったい何が問題なのか?

セシウムボールの大きさは、0・5〜数ミクロン。例えば、PM2・5の「2・5」は、2・5ミクロン以下のことで、小さいために人間の肺の奥にまで到達しやすいとされ、問題になっている。つまり、セシウムボールも、呼吸により体内に取り込まれる可能性がある大きさだ。

大気エアフィルターや土壌から発見されたセシウムボール。写真は’19年の宇都宮聡・九州大学准教授らの論文から

宇都宮氏による東京の大気エアフィルターの分析では、1立方メートルあたり129個のセシウムボールが含まれていた。別の研究では、事故当時、東京23区にはまんべんなく放射性物質が降りそそいだとされている。

「大ざっぱな計算ですが」と宇都宮氏は前置きしたうえで、25メートル程度の空気の厚みと東京23区の面積で考えると、2×10の12乗(2兆)個ほどセシウムボールが降ったと推測できるという。

さらに呼吸によって体内に取り込んだ場合、ピーク時には1時間あたり17個ほど吸い込む可能性があった。そのうちの20〜40%(数個)が体内に沈着すると考えられる。

宇都宮氏らは、肺の中にある液体を模擬した“肺胞液”にセシウムボールを浸す研究も行った。肺に沈着した場合、セシウムボールが体内で溶けるまでにかかる時間は、2ミクロンの大きさで35年以上かかり、条件によってはもっと長い期間になると推定している。

 加えて、セシウムボールの内部には原発事故由来のウラン酸化物(核燃料成分と同じ物質)が含まれていることも明らかになっている。原発から数キロ地点の土壌から発見されたもので、ウランの構造や構成物の比率などを分析し、このウランが原子炉から出たものであると突き止めている。

「燃料デブリは、ウラン酸化物が主な成分であるだけではなく、構造物や有害な核分裂生成物など、いろいろなものを含んだ放射性のゴミです」(宇都宮氏)

原発事故時に放出されたウランの量から考えると、セシウムボールに含まれていたとしても極めて微量だ。ウランはセシウムよりも放射線を出す威力は弱いが、放射能が半分になる“半減期”は億年単位とケタはずれに長い。

さらにアルファ粒子というセシウムとは異なる種類の放射線が出ている。ウランの人体への健康影響は古くからの研究データがあり、今回のウランの濃度では重大な健康影響は出ないとされている。

その一方で、溶けた高温の核燃料がコンクリートと反応してセシウムボールができたときに、空気中の浮遊物を取り込んでいるとすれば、さまざまな物質が含まれていてもおかしくはない。

原子炉核燃料の被覆材であるジルコニウムとウランの混合酸化物も発見され、核燃料の被覆管が溶け混ざったものであることもわかっている。実際、セシウムボールには、セシウムやウラン以外の重要な放射性物質が含まれている可能性もあるという。

宇都宮氏らは研究を進め、「未知の領域」に踏み込み、知見を積み重ねている。

「この研究は、燃料デブリのカケラが環境中に放出されてしまったことを伝える一方、廃炉作業で困難とされる燃料デブリの取り出しに向けて、知らなければならないデブリの性質の一部を明らかにすることができるはずです。取り出し作業を安全に行うための手がかりになってほしい」(宇都宮氏)

科学者たちは、いまなお、セシウムボールの研究をさまざまな角度から続けているのだ。


懸念される内部被ばくへの影響

過去のデータからは、放射性セシウムが体内に取り込まれたとき、その量が体外に排出されて半分に減少するまでの期間は乳児で9日、50歳で90日とされてきた。しかし、それは水溶性であることが前提にある。

大気エアフィルターや土壌から発見されたセシウムボール。写真は’19年の宇都宮聡・九州大学准教授らの論文から

’17年3月、原発事故の内部被ばくへの影響に関するシンポジウムが開かれた。そこで、セシウムボールによる内部被ばくの影響について、学者が発表を行っている。

日本原子力研究開発機構の佐藤達彦氏は、局所被ばくの可能性も示唆しながら「従来の被ばくと応答(影響)は異なる可能性がある」と発表。放射線医学総合研究所の松本雅紀氏も「従来の可能性を仮定した吸入による被ばく線量評価と異なる可能性」を前提に、シミュレーションや生体内挙動モデルを検討。両者とも過去の知見が適用できない認識は共通している。

また、大分県立看護科学大学・国際放射線防護委員会(ICRP)の甲斐倫明氏も前出の番組の中で「内部被ばくの影響は見直していく必要がある」と話している。核や原子力を推進する組織の学者たちが、セシウムボールの影響については、これまでの知見を適用できないとする慎重論を述べているのだ。

数々の原発訴訟に関わる井戸謙一弁護士は、このセシウムボールの健康影響を特に懸念している。

「リスクがはっきりしないのであれば、そのような環境を避けるのが最良の対策です。それができなくても、マスクなどの対策はしてほしい。でも、いまの日本は、マスクで防護を行うだけでも攻撃される可能性がある」

事故直後から、被ばくを恐れると、特に国の避難指示のなかった地域では「過剰反応だ」と叩かれる風潮もあった。被ばくに関しては「いちばんのリスクはストレス」(元原子力規制委員長・田中俊一氏)との発言があるなど、実際の健康影響は否定されがちで、自己防衛すら「風評被害」と責められる空気もある。

「広島・長崎の原爆症認定訴訟でも、ニュアンスはさまざまあるが、内部被ばくを考慮しないのは適切ではないという内容の判決も出てきています」(井戸氏)

国際的にみても、核開発当時から、内部被ばくの軽視は問題にされてきた。

「そこをはっきりさせてしまうと、核開発は非人道的なものと評価され、続けられないのでしょう。日本はその問題に正面から向き合い、考えなくてはならないと思います」(井戸氏)

原発事故後、安倍政権は原発に反対する多くの世論をよそに、大飯、高浜、玄海、川内、伊方など、国内の原発を次々と再稼働させてきた。また同時に、海外に向けては原発輸出を進めてきたが、米国、英国、台湾、ベトナム、リトアニアなどで輸出はすべて失敗した。

世界が脱原発に舵を切る中、電気事業連合会の会長に新たに就任した関西電力の岩根茂樹氏は今年6月、「原発新増設」に言及。日立製作所の株主総会では、社長の東原敏昭氏が、「引き続き(原発を)推進していく覚悟だ」と強気な構えを見せる。

福島第一原発事故で生まれたセシウムボールという「未知の領域」である課題を抱え、事故被害者や住民の健康を軽視したまま、日本はどこへ行くのか。

(取材・文/吉田千亜)


吉田千亜 ◎フリーライター。福島第一原発事故で引き起こされたさまざまな問題や、その被害者を精力的に取材している。近著に『その後の福島 原発事故後を生きる人々』(人文書院)

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