「防衛費=軍事費」2016年度第3次補正予算案・2017年度予算案について

1.社会保障は削減するが、防衛関係費は「聖域扱い」
政府は本日(12/22)の閣議で、2016年度第3次補正予算案、ならびに2017年度予算案を同時に決定した。補正予算と次年度当初予算を併せて編成する事実上5年連続の「15か月予算」となったが、安倍政権下における「15か月予算」は、補正予算を利用し、次年度予算の事業を「前倒し計上」する粉飾的手法が常態化している。しかも、今回の第3次補正予算では、防衛省が2017年度の概算要求に盛り込んだ弾道ミサイル防衛関連経費の一部を「前倒し計上」することとした。2017年度予算案における防衛費は5年連続で増加し、過去最大の5.1兆円となったが、第3次補正予算の「前倒し計上」分も併せれば5.3兆円規模となる。さらに、2017年度予算における海上保安庁による大型巡視船の購入費や安倍政権によるバラマキ外交のためのODA予算も増額となった。まさにこの「15か月予算」は、医療・介護の負担増で社会保障の自然増を1400億円圧縮してミサイル防衛等の防衛費増に回すことに顕著なように、社会保障費は削減するが、防衛関係費は「聖域扱い」する「アベ政治丸出し」予算となった。

2.アベノミクス失敗による税収減を赤字国債で賄う第3次補正予算案
第3次補正は「ロシア補正」になるとも言われていたが、日露首脳会談が期待外れに終わったことなどと相まって、自衛隊の増強に対し追加歳出がなされることとなった。
歳入面では、アベノミクスの失敗により、税収を下方修正するとともに、減収分を補うため赤字国債(特例公債)を追加発行することになった。安倍総理は「社会保障の充実に赤字国債を発行するのは無責任」とレッテルを貼っているが、赤字国債で税収不足を賄うことは許されるのか。安倍政権は、アベノミクスによる「税収増」を成果として強調してきたが、この間の法人税減税などと相まって、その税収増という「果実」は減ずることとなった。もはやアベノミクスによる「税収増」の期待は、剥がれ落ちたとしか言いようがない。

3.消費税依存の歳入
歳出規模97.45兆円の2017年度予算案における歳入は、配偶者控除の見直しなど「所得税改革」のかけ声もむなしく、所得税制の抜本改革はなされず、相変わらずの消費税依存となっている。また、アベノミクス失敗による税収の伸び悩みにより、「埋蔵金」を活用せざるを得なくなり、外為特会の運用益などを税外収入として活用することとした。その結果、2016年度当初より、新規国債発行額をわずかに減少させることに一応は成功はした。しかし、税収見通しの前提である「政府経済見通し」は、本年8月にアベノミクスの失敗を自ら認めたに等しい「未来への投資を実現する経済対策」と称する旧来型の大型公共事業の効果なども見込んでおり、それは事実上、効果が不透明な経済対策を通じた「景気回復による税収増」を演出し、財政再建を堅持している姿勢を印象付けようとの思惑が透けて見える。もはやアベノミクスでは「税収増」は期待できず、経済政策の転換、消費税依存税制からの脱却、さらには発効のメドがないTPP対策予算の執行停止などで財源を捻出すべきである。
さらに、2017年度予算では、改正特例公債法により、赤字国債を2020年度まで自動発行できる状況となっており、国会のチェックもなしに「防衛費等の膨張のために赤字国債を発行」するのは「無責任」である。

4.削減優先の社会保障

5.拡大を続ける防衛予算

2017年度予算の防衛関係費は前年度比710億円増(1.4%増)の5兆1251億円となり、過去最高を更新した。安倍政権の成立後5年連続の増額である。同時に決めた2016年度第三次補正予算の防衛省分1706億円を合計すると5兆2957億円となっており、苦しい財政事情の下で防衛予算を聖域化し防衛力の拡大をはかろうとする安倍政権の姿勢がいっそう明確になった。当初予算で比べると安倍政権前の2012年度の4兆7138億円から約9%の拡大である。
次期主力戦闘機F35機を6機・880億円、垂直離着陸輸送機オスプレイ4機・391億円、新型潜水艦の建造728億円、C-2輸送機3機・553億円、16式機動戦闘車33両・233億円、滞空型無人機グローバルホーク168億円など、戦争法による新たな任務を見据えた装備の導入、南西警備部隊の配置など島嶼防衛態勢の整備が急ピッチで進んでいる。
このペースが続けば2014年から18年の中期防衛力整備計画の枠(23兆9700億円+調達改革等による7000億円)を上回るのは必至であり、防衛費が際限なく膨張していくおそれが強い。

6.沖縄の民意を完全無視
普天間飛行場の名護市辺野古への移設や岩国飛行場への空母艦載機移駐等をすすめる費用として、米軍再編等関連経費2039億円が計上された。辺野古新基地建設など、米軍の求める基地再編をさらに強行する姿勢が表われている。沖縄県知事選挙や総選挙、県議会議員選挙などの結果が、県内への新基地建設反対の民意を明確に示す中で、問答無用で工事を進めるための予算は到底認められない。
在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)は前年の1933億円から1946億円に微増となった。別枠の米軍再編関係経費も同じ性質の予算が多く含まれ、米軍の肩代わりをするための予算全体が急増している。基地周辺対策経費(1220億円)や施設借料・補償経費等1363億円と合わせ基地対策等関連経費は4529億円に及んでいる。
米国のトランプ新政権がさらに日本の負担増を求めてくる可能性は高く、日米地位協定はもとより特別協定上の対象ともならない法的根拠のない支出がさらに拡大していく可能性がある。
沖縄縄振興予算は3150億円と前年度より200億円の減となった。とくに沖縄振興交付金は16年度の1613億円が1358億円に16%近く削減されており、辺野古の基地新設に関する政府と沖縄県の対立を背景にした、懲罰的な減額とも考えられる。そもそも沖縄振興予算は米軍基地受け入れの対価ではなく、沖縄の「特殊事情」を考慮して本土との格差是正や沖縄の自立的発展を目的とするものだ。安倍政権の露骨な基地と予算のリンク論は、これまでの沖縄振興制度を否定するものであり、到底認めることはできない。

 

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