- 2017/10/3 0:31 日本経済新聞 電子版
9月26日深夜、小池、前原、連合会長の神津里季生(61)は都内で極秘に会談した。3人は「政権交代に向けて一緒に力を合わせていこう」との方針で一致した。衆院解散を2日後に控える中での会談には、それぞれの思惑があった。
小池が自ら旗揚げした新党「希望の党」は無党派層が多い首都圏では「小池ブーム」による集票が期待できる。半面、自民党が強い地方では「足場がないため苦戦を強いられる」(自民党中堅)。組織票や選挙の実務をバックアップしてくれる連合を取り込む利点は大きい。
会談翌日の27日の記者会見で神津は「小池さんは今、日本中に風を巻き起こしている。並大抵の風、力ではない」と持ち上げた。地方組織の連合東京は7月の東京都議選で、小池が率いた地域政党「都民ファーストの会」を支援した。連合は共産党への拒否感が強く、保守を自認する前原、小池と連携し、民進党と共産党との共闘路線を転換させる狙いもにじむ。
しかしボタンの掛け違いは次第に表面化する。
小池は29日に民進党の前議員と政策が一致しない場合は「排除する」と明言し、衆院選の公認候補として認めない方針を示した。連合は民進党の公認内定者について「かなりは希望の公認で出馬できる」と見ていた。
組織内候補さえ漏れるとささやかれ、民進党のリベラル系を支援する労組からは「合流方針を撤回すべきだ」との声まで出始めた。連合は小池側に「社会の分断を包摂する、寛容な改革保守政党を目指す」と記す希望の綱領を挙げ、リベラル系も含む幅広い候補者を公認するよう求めた。
前原は28日の両院議員総会で、自身を除く民進党の衆院議員全員が離党したうえで、希望から公認候補として擁立する方針を示した。連合の組織内からは「話が違う」との批判が高まっていった。
前原と神津は連日、面会したり、電話で現状について意見交換した。9月30日、神津が党本部で「民進党公認を出すべきだという声もある」と迫ると、前原は「出せません」と否定したうえで「大丈夫です。今(調整を)やってますから」などと応じるにとどめた。
結局、枝野らリベラル系は離党に踏み切り、民進党は分裂した。もともと、保守的な考え方を持つ前原が思い描いてきたのは、野党の保守勢力を結集して非自民の受け皿をつくる姿だ。前原は「左と右に分かれて、新しい党をつくるべきだ」との構想を漏らしたこともある。
真相は分からないものの、保守系の前議員の一人は「前原氏は最初からリベラル系を切るつもりだったのだろう。自分で切れないから、小池氏を使った確信犯だ」と指摘する。
小池は民進党丸ごとの合流は「選挙互助会と見られる」として当初から民進党の全議員を受け入れることには否定的だった。旧社会党を支援してきた官公労も抱える連合との接触が表ざたになったのは「改革保守」を唱える小池にとって「誤算だった」(民進党関係者)との見方もある。
小池は2日、枝野らが結党する立憲民主党について記者団に語った。「非常にわかりやすい構図になった。選択肢がより明確になる」(敬称略)
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