令状なしGPS捜査に関する最高裁判所大法廷判決についての会長談話(日弁連)
本日、最高裁判所大法廷は、いわゆるGPS捜査の違法性が争われていた事案の上告審において、GPS捜査は強制処分に当たり、令状を取得することなく行われたGPS捜査は違法であり、憲法、刑訴法の諸原則に適合する立法的な措置が必要であるとする画期的な判決を言い渡した。
第一審の大阪地裁判決は、本件GPS捜査は、対象車両使用者のプライバシー等を大きく侵害することから、強制処分に当たるものと認められると判示したが、原審の大阪高裁判決は、「本件GPS捜査に重大な違法があるとは解されず、弁護人が主張するように、これが強制処分法定主義に違反し令状の有無を問わず適法に実施し得ないものと解することも到底できない。」と判示していた。
これに対し、本判決は、憲法第35条の保障対象には、「住居、書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれるものと解した上で、「個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって、合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるGPS捜査は、個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして、刑訴法上、特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たる」と判示した。
また、本判決は、GPS捜査について、大要、①対象車両にGPS端末を取り付けることにより対象車両及びその使用者の所在の検索を行うこと、②GPS端末を取り付けるべき車両及び罪名を特定しただけでは被疑事実と関係のない使用者の行動の過剰な把握を抑制することができないこと、③GPS捜査においては、事前の令状呈示を行うことは想定できないところ、これに代わる公正の担保の手段が仕組みとして確保されていないこと、を理由として、刑訴法上の検証許可状では、適正手続の保障という観点から問題が残ると判示した上で、GPS捜査の特質に着目して憲法、刑訴法の諸原則に適合する立法的な措置が講じられることが望ましい旨判示した。
当連合会は、2017年(平成29年)1月19日付け「GPS移動追跡装置を用いた位置情報探索捜査に関する意見書」において、大要、警察庁が実施しているGPS捜査を直ちに中止すべきであり、GPS捜査について、捜査対象者のプライバシー権を不当に侵害することのないよう、一定の要件及び手続を法律によって定めるべきであるとの意見を発出していたところである。本判決は、GPS捜査が強制処分に当たるとされ、また、新たな立法措置が必要であるとされた点のいずれにおいても、当連合会の意見の趣旨に沿うものであり、高く評価できる。
当連合会は、今後、裁判官の厳格な審査により発付された令状の下でGPS捜査が行われるよう、一定の要件及び手続を定める特別法の立法に向けて尽力するものである。
これに対し、本判決は、憲法第35条の保障対象には、「住居、書類及び所持品」に限らずこれらに準ずる私的領域に「侵入」されることのない権利が含まれるものと解した上で、「個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって、合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入する捜査手法であるGPS捜査は、個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を侵害するものとして、刑訴法上、特別の根拠規定がなければ許容されない強制の処分に当たる」と判示した。
また、本判決は、GPS捜査について、大要、①対象車両にGPS端末を取り付けることにより対象車両及びその使用者の所在の検索を行うこと、②GPS端末を取り付けるべき車両及び罪名を特定しただけでは被疑事実と関係のない使用者の行動の過剰な把握を抑制することができないこと、③GPS捜査においては、事前の令状呈示を行うことは想定できないところ、これに代わる公正の担保の手段が仕組みとして確保されていないこと、を理由として、刑訴法上の検証許可状では、適正手続の保障という観点から問題が残ると判示した上で、GPS捜査の特質に着目して憲法、刑訴法の諸原則に適合する立法的な措置が講じられることが望ましい旨判示した。
当連合会は、2017年(平成29年)1月19日付け「GPS移動追跡装置を用いた位置情報探索捜査に関する意見書」において、大要、警察庁が実施しているGPS捜査を直ちに中止すべきであり、GPS捜査について、捜査対象者のプライバシー権を不当に侵害することのないよう、一定の要件及び手続を法律によって定めるべきであるとの意見を発出していたところである。本判決は、GPS捜査が強制処分に当たるとされ、また、新たな立法措置が必要であるとされた点のいずれにおいても、当連合会の意見の趣旨に沿うものであり、高く評価できる。
当連合会は、今後、裁判官の厳格な審査により発付された令状の下でGPS捜査が行われるよう、一定の要件及び手続を定める特別法の立法に向けて尽力するものである。
2017年(平成29年)3月15日
日本弁護士連合会
会長 中本 和洋