本日(8月12日)、四国電力は、多くの県民が事故への不安を抱く中で、伊方原発3号機(愛媛県)の再稼働を強行した。原水禁は、危険な再稼働に強く抗議し、一刻も早く運転を中止し廃炉に向けた決断を強く求める。
再稼働に「安全」のお墨付きを与えた原子力規制委員会、民意を問うこともなく安易に再稼働を許容した地元愛媛県知事、再稼働を政権運営の柱とする安倍政権に対しても強く抗議する。
伊方原発の再稼働については、先の参議院選挙中に行われた地元紙の県民世論調査において、「再稼働すべきでない」と「どちらかというと反対」という否定的な回答が54.2%と半数を超えている。再稼働に関しての県民の不安や不満はいまだ強く、県民合意にはほど遠い結果となった。
現在唯一稼働している九州電力・川内原発が存在する鹿児島県の知事選において、脱原発を標榜する三反園訓候補が現職をやぶり当選した。熊本地震の発生などによって再び原発への不安が高まっている。
高浜原発の稼働を差し止めた大津地裁の判断は、福島原発事故の甚大な被害を考えるなら住民らの人格権が侵害される恐れが高く、発電の効率や経済的利益を優先することはできないとし、「新規制基準」についても「福島第一原発事故で得られた教訓の多くが取り入れられておらず、過酷事故対策が不十分である」としている。
伊方原発が存在する佐多岬沖の伊予灘には、国内最大規模の活断層「中央構造線断層帯」が走っている。また近い将来予想される南海トラフの地震の想定震源域にも近く、多くの専門家から重大事故の可能性が指摘されている。中央構造線上にあるとされる日奈久・布田川断層帯で起こった4月14日の熊本地震では、震度7で地震動の最大加速度は1,580ガルを記録した。伊方原発の基準地震動は650ガルでしかなく、「中央構造線断層帯」が引き起こす地震動は、それらを上回る可能性があり、福島原発事故に続く原発震災の惹起が強く懸念される。
伊方原発のある佐多岬半島の地形の特殊性は、土砂崩れや路肩崩壊、橋梁破損等による道路の寸断などによって、地域住民が孤立する危険性を高めている。津波の可能性も危惧される中で、県が策定した船舶を利用する避難計画は、実効性に乏しい。避難計画の課題さえ解決できずに強行される再稼働は、県民の命の軽視するものであり、決して許されない。
さらに防災拠点となる免震重要棟についても、耐震性不足が指摘され対策が求められた。新たに敷地内に建設した緊急時対策所は、平屋建て約50坪程度と狭く、重大事故の発生に対して中長期にわたって対応できるのかとの指摘もある。福島原発事故の教訓さえまともに活かされていない。
伊方原発3号機は、すでにプルサーマル発電で使用するMOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料16体を原子炉に装填している。プルサーマル発電は、燃料棒が破損しやすくなるなど事故のリスクが高まること、毒性の高いプルトニウムを利用することで事故の影響もより大きくなることが指摘されている。
無責任極まりない原発の再稼働を許すことはできない。四国電力は、今年5月に伊方原発1号機を廃炉にした。引き続き2号機、3号機の廃炉を、原水禁は強く求める。その実現に向けて現地の人びとと連帯して、再稼働阻止に向けた運動をさらに強化していく。
2016年8月12日
原水爆禁止日本国民会議
議長 川野 浩一