2022年8月29日
「核なき世界」へ、真摯な対話を
NPT再検討会議閉会にあたって原水禁声明
原水爆禁止日本国民会議
共同議長 川野浩一
金子哲夫
藤本泰成
8月1日から行われてきた核拡散防止条約(NPT)再検討会議が、26日閉会した。コロナ禍で何度も先延ばしされてきた再検討会議は、ロシアによるウクライナ軍事侵攻が続く中で行われた。核兵器使用をほのめかし他国を威嚇するロシア・プーチン大統領の発言やロシア軍によるウクライナのザポリージャ原発占拠といった核をめぐるきびしい現実の中での再検討会議は、ロシア一国が反対して最終文書が採択されない残念な結果に終わった。ロシア政府には猛省を促したい。ロシアのザポリージャ原発占拠への懸念やウクライナの核放棄と引き換えに安全を保障した「ブダペスト覚書」の遵守などの表明に対するロシア政府の反発が原因とされるが、最終文書には核保有国に配慮する形で「核の先制不使用」が書き込まれず、「消極的安全保証」の記述も不十分なままになっていた。核保有を五カ国に限定して認めているNPTの限界を見る思いだ。核保有国に課された核軍縮の責任を再度確認すべきではないか。
日本の岸田文雄首相は、歴代首相の中で初めて再検討会議に参加し発言した。核保有国が参加しない核兵器禁止条約(TPNW)の署名批准を拒んでいる日本政府は、「NPTこそが『核なき世界』への現実的アプローチ」と主張し、核保有国と非保有国の橋渡し役を自任するが、その役割を果たしているとは到底言えない。TPNW批准国を代表して最後に演説したメキシコ代表は、核抑止論や核軍縮の停滞を批判しつつ、「『核なき世界』をめざす全ての国に、TPNWへの参加を求める」と結んだ。唯一の戦争被爆国である日本が、核の非人道性を基本にして、その生産から使用までを禁じるTPNWに批准し、被爆の実相を粘り強く訴えていくことがどれほど大きな意味があるかを考えるべきだ。被爆の実相の中にしか「核なき世界」を実現する可能性はない。
TPNWを批准しその推進に努める国々は、進まない核軍縮への強い不満を表明している。そのことこそが、TPNWの発効につながった原動力だ。NPTとTPNWが対立を生むものではないことは、それぞれの目的が「核なき世界」へ向けたものであることで明らかだ。唯一核保有国も参加するNPT再検討会議の重要性は言うまでもない。がしかし、核保有国の態度如何ではその意義の低下は免れまい。
核の脅威がかつてないほど高まっている現在、しかし、核廃絶への声もかつてないほど高まっている。非核保有国を中心に、核保有国間の真摯な対話を促していくこと、再検討会議の議論を無駄にすることなく、あらゆる機会を通じて対話の環境を作りあげて行くことが重要だ。原水禁は、日本政府にその役割を果たすことを強く求める。