原子力防災計画・安全協定に関する質問書

2022年8月25日

羽 咋 市 長

岸   博 一 様

さよなら!志賀原発ネットワーク

志賀原発を廃炉に!訴訟原告団

石川県平和運動センター

原水爆禁止石川県民会議

社民党石川県連合

 

原子力防災計画・安全協定に関する質問書

 

東京電力福島第一原発事故から11年5カ月が経過しました。いまだ原子力緊急事態宣言は発令中であり、事故収束の目途は立っていません。今なお羽咋市の人口の約1.5倍となる30、226人(2022.5月時点)もの人たちが故郷を追われ、避難生活を強いられています。過酷な避難行動や長引く避難生活の中で亡くなられた震災関連連死とされる人は2,333人を数えます。

福島原発事故で安全神話が崩壊した中、新たに発足した原子力規制委員会(以下「規制委」)は「重大事故は起こりうる」との前提に立った原子力災害対策指針(以下「指針」)を作成し、原子力防災体制は大転換が図られました。

これにより羽咋市は市内全域が志賀原発の原子力災害対策重点区域となり、地域防災計画原子力災害対策編(以下「防災計画」)と羽咋市広域避難計画(以下「避難計画」)が策定されました。羽咋市は、福島原発事故前から市独自で学校や保育所にヨウ素剤を配備するなど、原子力防災に積極的に取り組む自治体であったことは承知しています。しかし、万が一志賀原発に重大事故が起これば、羽咋市内には志賀町や七尾市、中能登町から避難住民が押し寄せ、金沢方向へと避難していきます。中能登の交通の要衝・羽咋市は大渋滞、大混乱の中、果たして市民の安全を確保することはできるのでしょうか。

一方、自治体が志賀原発の安全規制に関与する根拠となる原子力安全協定(以下「安全協定」)も、いまだ締結には至っていません。山辺前市長は七尾市、中能登町とともに立地町と同等の権利を盛り込んだ安全協定を求めてきましたが、一昨年11月に就任された岸新市長は、この間の取り組みをどのように継承し、前進させていくのか、羽咋市民のみならず多くの県民が注目しています。

原子力防災にゴールはないと言われます。安全協定による自治体の関与も、再稼働の是非に関係なく廃炉作業が完了するまで求められます。常に課題を確認し、計画や協定の策定・改定を重ねる努力が不可欠です。同時に現時点での到達点、そして未達成の課題について市民の前に明らかにし、広く共通認識を形成し、原発についての議論を深めていくことが重要だと私たちは考えます。そのような思いから、以下質問をさせていただきます。

1 防災計画および安全協定の前提となる問題について

  • 志賀原発は安全神話の下で設置が許可され、運転が開始された。この間、羽咋市に立地の諾否を問われることはなかった。安全神話が崩壊したいま、羽咋市全域が放射能で汚染されるリスク、全市民が避難を強いられるリスクに晒されている。国の一元的管理の下にある原子力行政=「国策」によって地方自治体と住民が翻弄されている現状について、市長はどのように受け止めているか。
  • 福島原発事故後に国が採用した国際原子力機関(IAEA)の安全基準(深層防護)では、防災計画・避難計画の実効性確保も安全基準の一つとされている。羽咋市が策定した防災計画に住民を守れる実効性はあるのか、残された課題はないか、避難の現場を預かる自治体の判断が問われている。自治体が原子力規制に関与する根拠となる安全協定を締結し、活用することも重要である。防災計画・避難計画と安全協定は、自治体が原子力災害から住民を守るための二本柱であり、羽咋市の自治力が問われている。両課題に取り組む市長の認識と決意を聞く。

2 安全協定の締結に向けて

  • 山辺芳宣前市長は、志賀町と同等の権利を盛り込んだ安全協定を北陸電力に求めてきた。この方針は岸市政でも継続されると受け止めてよいか。
  • 安全協定の締結にあたっては、北電との粘り強い交渉に加え、県や他の関係市町との連携、さらには市民の支援が不可欠だと思うが、今後の市長の取り組み方針について聞く

3 防災計画・避難計画の総論的課題について

  • 避難計画の目的は、国の指針や県の防災計画に従い、「住民等の被ばくをできるだけ低減する」とある。被ばくの回避ではなく、ある程度の被ばくを前提とした避難計画である。これでは住民を守る計画とは言えないのではないか。住民は了解しているか。
  • 「できるだけ低減」では上限とする被ばく線量が不明である。上限値を国や県に確認し住民の了解を得ること、上限値を超えない計画であることを防災訓練やシミュレーションなどで確認していくことが不可欠だと思うがどうか。
  • 内閣府は地域防災計画・避難計画等の具体化・充実化を支援するため志賀地域原子力防災協議会を設置し、県は構成員として参加している。これまで作業部会が7回開催されているが、協議内容について県から報告を受けているか。
  • 志賀地域原子力防災協議会へのオブザーバー参加を求め、羽咋市の課題を積極的に提起していく考えはないか。

4 基本的な避難行動について

  • 全面緊急事態(EAL3)の判断があった場合、志賀町の住民だけでなく、プルームの拡散状況によっては七尾市や中能登町の住民も含め羽咋市内を通過し、金沢方面へ向かって避難する。市内全域がUPZである羽咋市では、こうした状況にあっても空間線量が一定レベルに上がるまで市民には屋内退避が求められることを、市は市民に周知しているか。市民は理解し、納得しているか。羽咋市内へ避難指示が出ても、渋滞ですぐに避難行動を開始できないこともありうると思うがどうか。
  • 余喜地区や邑知地区、神子原地区は氷見市方向への避難を想定することも重要だと思われる。富山県との協議は県に一任か、それとも羽咋市も積極的に関与しているのか。
  • 安定ヨウ素剤の配布について、県は避難行動時にドライブスルー方式で配布する方法を想定している。具体的な実施場所、人員配置、説明者など検討しているか。プルーム到着後の配布となるが、配布遅れや配布漏れなど課題はないか。事前配布を行う考えはないか。

5 長期避難への対応について

  • 原子力災害対策指針は福島第一原発事故と同程度(セシウム137で1万テラベクレル相当)の事故は起こりうるとの想定で策定されている。広域かつ大量の放射性物質の放出による避難の長期化を想定した避難計画が求められる。防災計画では「長期避難への対応」の項目があるが、長期避難はどの程度の期間を想定しているか。
  • 避難が長期に及ぶかもしれない、帰れない可能性もあるということについて、住民への周知は徹底されているか。
  • 避難生活が長期化した場合の住民への支援(住居、仕事、子どもの保育・教育環境、健康管理、損害賠償請求など)について、市の基本的な考え方を聞く。
  • 原子力災害応急対策として実施された立ち入り制限、交通規制、飲料水・飲食物の摂取制限及び農水産物の採取・出荷制限等の各種制限措置の解除の基準は把握しているか。

6 児童、生徒の避難について

  • 市内の小中学校、保育園、幼稚園での児童・生徒の保護者引き渡し開始は警戒事態発生時か、敷地施設緊急事態に至った段階か。
  • 全面緊急事態に至るまで引き渡し出来なかった児童生徒がいる場合、あるいは避難に緊急を要する場合(福島原発事故では地震から1時間50分後、非常用炉心冷却装置不作動=EAL3に該当)は小中学校の単位で避難場所への避難もありうる。最大で児童・生徒1,266人(2021年度)の移動に必要なバスは確保できるか。学校と保護者の避難先が異なることも多いと思われるが、避難先での児童・生徒の引き渡し方法は検討しているか。
  • 保護者がいずれも市職員や消防署員、学校教職員、医療・福祉関係など防災業務に携わる立場にある児童・生徒への対応は検討しているか。
  • 市内3つの高校の避難計画の概要と市外から市内の高校へ通う高校生への対応、市外の高校へ通学する高校生への対応について聞く。
  • とくに乳幼児・児童・生徒の場合、初期甲状腺被ばくのスクリーニング検査は重要だが、その体制を聞く。

7 在宅の避難行動要支援者の避難について

  • 在宅の避難行動要支援者のうち福祉避難所への避難が必要な住民は何人か。避難に必要な車椅子専用車両、ストレッチャー専用車両、車椅子・ストレッチャー専用車両の台数はそれぞれ何台か。現在手配できる車両はそれぞれ何台か。
  • 放射線防護施設を備えた施設は、邑知中学校と公立羽咋病院だけである。邑知中学校の受け入れ可能人数は、付添人を含め250人程度とされているが、市内で把握できている「避難の実施に通常以上の時間がかかり、避難行動により健康リスクが高まる避難行動要支援者」は何人か。食糧、医療、介護など屋内退避生活を支える体制は整えられているか。

8 複合災害への対応について

  • 地震や津波、暴風雪などの自然災害との複合災害時、住民は直面する命を脅かす自然災害に対する避難行動を優先せざるを得ない。原子力防災計画は機能しないことを認め、防災計画にも明記すべきではないか。
  • 感染症の流行はいつ起きても不思議ではなく、恒常的な対策が求められる。避難所に求められる1人当たりの面積についても従来の2倍以上を基本し、早急に避難元地域と避難先施設のマッチィングの見直しを行うべきではないか。

9 計画の実施体制について

  • 代替庁舎を具体的に特定した業務継続計画は策定されているか。
  • 防災計画の実施には市職員だけでなく警察や消防、学校関係者、医療・福祉関係者、民間事業者など多く「防災業務関係者」の活動が求められ、防災ボランティアの活用方針も示されている。一方、避難計画では「防災業務関係者の被ばく管理」として、実効線量限度が50mSv/年である放射線業務従事者を参考とするとし、「できるだけ少なくする努力が必要」としている。極めてあいまいで、防災業務関係者の安全が守られるとは思えない。国に対して明確な基準と健康障害が出た場合の補償体制を明示するよう求めるべきではないか。
カテゴリー: 人権, 住民の暮らしに直結する課題, 全国・中央・北信越, 原水禁, 友誼団体, 反核・脱原発, 志賀原発, 環境(原水禁、核燃、放射能・食品汚染) パーマリンク

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