EUが原発を「持続可能な経済活動」と認める方針を発表したことに対する原水禁声明

2月2日、ヨーロッパ連合(EU)の執行機関・ヨーロッパ委員会は、温室効果ガスの排出削減に役立つとして、原子力発電を条件付きで「持続可能な経済活動」として認め、民間の投資を促していく方針を正式に発表した。ヨーロッパ委員会のマクギネス委員は、まだ再生可能エネルギーだけに頼ることはできないという認識を示したうえで、「今回の方針は完璧ではないかもしれないが、現実的な解決策だ。脱炭素という究極の目標にわれわれを近づけるものだ。」と述べた。

EUは、温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする目標を実現するため、「環境面で持続可能な経済活動」を選定して民間の投資を促していく計画で、気候変動対策などとして原発を新設する方針を打ち出すEU加盟国が相次いでいる。今回の方針では、原発を新設する場合、持続可能と認める条件として、①2045年までにEU加盟国の当局から建設の許可を得ること、②高レベル放射性廃棄物については、EU加盟国が2050年までに処分場を稼働するための具体的な計画を作ること、などとした。

EU加盟国のうち、脱原発を進めているドイツやオーストリアは、今回の方針に当然反対している。2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて脱原発を進め、2022年内にすべての原発の運転が止まる予定のドイツ・ハーベック経済・気候保護大臣は、「原子力エネルギーにはリスクがあり、コストも高い」としてEUの方針を批判したうえで、今後の対応を検討する考えを示した。また、国内の原発利用を40年以上禁じてきたオーストリア・ネハンマー首相は、「原子力はグリーンでも持続可能でもない。EUの決定は理解できない」と表明し、オーストリア政府は、ヨーロッパ委員会をEU司法裁判所に提訴する方針を表明した。ルクセンブルク・トゥルメスエネルギー大臣もオーストリアとともに法的措置を検討すると表明した。

しかし、今後、6ヶ月以内にEU加盟27ヶ国のうち少なくとも20ヶ国が反対するなどしなければ、2023年1月から適用され、原発を「環境にやさしい」「持続可能」と、EUがお墨付きを与えることになる。

日本国内の福島原発事故およびその後の廃炉状況、高レベル放射性廃棄物処理の問題等を見れば、原発は、大規模な事故のリスク、核廃棄物処理、さらにはウラン採掘にともなう被曝や環境汚染など、多くの問題があり、とても「持続可能」ではない。今回のEUの方針を原水禁は絶対に認めることはできない。

原水禁は、2021年3月、2030年までに原発・石炭火力ゼロを訴えた政策提言をまとめ、原水禁エネルギー・シナリオとして発表し、政府、経済産業省や国会議員へ提出してきた。原水禁は、脱原発・脱炭素社会の実現は、気候危機に対する唯一の解決策であり、困難な道のりではあるが、達成可能と考えている。福島原発事故からまもなく11年。新たな状況を踏まえ、硬直化したエネルギー政策を見直し、脱原発・脱炭素社会へむけた行動を強く求める。環境に優しく、持続可能な社会は不可能ではない。

2022年2月3日
原水爆禁止日本国民会議
共同議長 川野 浩一
金子 哲夫
藤本 泰成

カテゴリー: 全国・中央・北信越, 原水禁, 環境(原水禁、核燃、放射能・食品汚染) パーマリンク

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