辺野古設計概要変更申請に抗議する声明
2020年4月24日
フォーラム平和・人権・環境
共同代表 藤本 泰成
勝島 一博
防衛省は4月21日、辺野古新基地建設にかかわり大浦湾に広く存在する軟弱地盤の改良を押し進めるために、建設計画の設計概要の変更申請を沖縄県に提出した。申請の時期、経過、そしてその内容をふまえると、政府の行為は暴走以外の何物でもない。
新型コロナウイルス感染症対策で安倍政権は16日、緊急事態宣言の対象を全都道府県に広げた。沖縄県の玉城デニー知事も20日に県の宣言を発表して対応に当たり、政府からの不要不急の外出自粛要請を受け県庁職員の出勤も二分の一に減じていた矢先に申請は出された。コロナ禍で社会、経済が混乱を極める中、国と自治体が一丸となってコロナ感染症対策に当たるべきであるにもかかわらず、この機を推し量るように申請した政府の姿勢は火事場泥棒と非難されても仕方がない。
1800頁にも及ぶ設計概要変更申請書の内容についても、これまでに防衛省が明らかにしてきたところをみると極めて問題が多い。大浦湾の埋め立て区域約120ヘクタールのうち、実に半分の約66ヘクタールに軟弱地盤が広がっている。特に「B27」地点では、海面から90メートルに達する「マヨネーズ並み」の軟弱地盤があると指摘されている。ここには護岸が設置される予定であり、地質の専門家によれば、国土交通省の港湾施設基準を満たさず、護岸崩壊の恐れもあるとされる。こうした声があるにもかかわらず、「B27」地点のボーリング調査の必要性はないと切り捨てている。そして、その他の軟弱地盤対策では、外周護岸を完成させる前に土砂を投入する「先行盛り土」を行うとしている。土砂による汚濁が外洋に広がり、貴重なサンゴや生態系に壊滅的なダメージを与えることは明らかだ。
本来なら、申請を出す前に徹底的な調査が行われてしかるべきだ。そして、第三者機関が調査結果を基に、技術的な課題、自然環境に与える影響などを綿密に議論すべきである。しかしながら、政府が設置した土木の専門家で構成される「技術検討委員会」(清宮理委員長・早稲田大学名誉教授ら8人)は、「B27」地点の調査の必要性を認めず、さらには防衛省の調査資料データの不備について不問に付した。辺野古新基地建設強行の「お墨付き」をあたえる機関としか考えられず、専門家による検討委員会の役割を果たしているとはいえない。
埋め立て用の土砂についても、多くを県外から搬入することとなっていたが、「県内で調達可能」と方針を変更した。これも特定外来生物を規制するための沖縄県の土砂条例からのがれるための方策でしかない。政府は県内の調達先を明らかにはしていない。しかし莫大な量の土砂を県内から採取すれば、当然にして沖縄県の自然環境に甚大なる影響を与える。設計変更による辺野古新基地建設工事、およびあらたな土砂採取にかかわり、環境影響評価が必要なことはいうまでもないだろう。しかし、政府は「同一事業として事業に着手した後であれば、やり直す必要はない」として、自然保護団体などからの再調査を訴える意見に耳を貸さない。
たとえ実定法上の不備で環境影響評価のやり直し規定がないとしても、アセスを実現し、安倍首相自身が常に述べている「ていねいに説明し、理解を求める」ことを実行すべきではないか。そのことが民主主義的手続きとして、県民理解への基本にあるべきだ。その姿勢すら示さない安倍政権は、沖縄県、県民を愚弄しているとしか言いようがない。
政府は設計概要の変更申請を取り下げよ。そして辺野古新基地建設を中止せよ。航空機の墜落、部品落下の他、PFOS(ピーホス)等の毒物をまき散らす普天間飛行場の即時運用停止を実現せよ。
平和フォーラムは、沖縄県民に連帯し、いのち、くらしを守るため、引き続き辺野古新基地建設阻止に向け総力を挙げていく。