辺野古問題での「関与取消訴訟」最高裁判決にかんする事務局長談話

辺野古問題での「関与取消訴訟」最高裁判決にかんする事務局長談話

2020年3月26日、最高裁判所第1小法廷(深山卓也裁判長)は、辺野古新基地建設を巡って沖縄県が国を相手に起こしていた関与取り消し訴訟で、県の上告を棄却しました。

国の機関である「沖縄防衛局」が「私人になりすまし」、行政不服審査法に基づいて国土交通大臣に審査請求をしたことを、最高裁が認める初の司法判断となりました。

そもそも、行政不服審査法は、違法・不当な行政権の行使に関して、「国民の権利利益の救済」(行審法第1条)することが目的となっています。そして、このことを明確にするために、2016年に施行された改正行政不服審査法第7条2項で、「国の機関が固有の資格において当該処分の相手となるもの」には、行審法は適用しないと明文化しているのです。

仮に地方自治体の処分が違法・不当であるとするならば、地方自治法(第245条)に基づく「是正の要求」を行えばよいにもかかわらず、あえて私人救済の行政不服審査法を持ち出した国のあり方は、行政不服審査法の濫用どころではなく法治主義の崩壊を導くといってもよいでしょう。

国の異様と言える法解釈と運用に対して、法の番人たる最高裁の明確な判決が期待されました。ところが今回の最高裁の判断は、公有水面埋立にかかわる県の権限である私人に対する「免許」と国に対する「承認」の2種類の処分があるが、処分を受けて事業を進めるにあたっての条件や規律は実質的に異なることはないとして、国は私人とかわらないとしたものです。公有水面埋立法に規定されている国の立場をしっかり見極めることなく、国側の主張をそのまま取り入れて「沖縄防衛局の私人なりすまし」を認めた「忖度判決」といえるでしょう。こうした解釈は結果として、国が主で普通公共団体は従とする戦前からの中央集権的な考え方を復活させる恐れがあり、国と地方自治体の対等・平等な関係を保障した地方分権改革の流れを阻害し、地方自治法で規定された以上の「地方自治権の侵害」を正当化するものにほかなりません。

そしてまた、辺野古新基地建設を強引に進めるための法の濫用を最高裁が認めたことで、安倍政権はあたかも工事推進のお墨付きを得たかのような政治的アピールを行い、設計概要の変更を申請し、90メートルにも及ぶ軟弱地盤の埋め立てにむけ、事実上不可能にもかかわらず工事の強行を図っていこうとすることでしょう。

つまり最高裁の今回の判断は、地方自治に関して今後大きな禍根を残すこととなるとともに、辺野古新基地建設強行する安倍政権に加担し、沖縄の民意に背き、豊かな自然環境を壊滅的な破壊へと導くものであるといわざるを得ません。

現在、沖縄県が国に対して提訴しているもう一つの裁判である「抗告訴訟」が進行しています。平和フォーラムはこの訴訟の動向を注視し、憲法に保障された地方自治と法治主義の観点から明確な審理が行われ、承認撤回の本質的な議論が深まることを司法に望むとともに、国による専横を許さず辺野古新基地建設を断念させる取り組みをより一層強化していきます。

 

2020年3月30日

フォーラム平和・人権・環境

事務局長 勝島一博

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