米、新たに宇宙軍と宇宙統合戦闘軍 日本は航空宇宙自衛隊・・・ こんなことしかできない権力者!

米国宇宙軍の創設  懸念される宇宙の軍事化・宇宙戦争  漫画のような本当の話! 先行する中国・ロシア

2019年12月31日 森山拓也

新たに創設された宇宙軍と宇宙統合戦闘軍

2019年12月20日、トランプ米大統領が2020年度の国防予算を定めた国防権限法に署名し、米国では陸軍、海軍、空軍、海兵隊、沿岸警備隊に続く6つ目の軍の部門として、宇宙軍(Space Force)が創設された[1]。米国で新たな軍の部門が設置されるのは1947年の空軍以来、72年ぶりとなる。
現在、米国には陸軍、海軍、空軍、海兵隊、沿岸警備隊の5つの「軍サービス」が存在する。陸、海、空軍は、それぞれ国防総省内の陸軍省、海軍省、空軍省が管轄するが、海兵隊は海軍省に属し、沿岸警備隊は国防総省の外にある国土安全保障省に属している。新たに創設された宇宙軍は、海兵隊が海軍省に属すのと同様に、空軍省の内部に設置される。
宇宙軍の創設に先立ち、米国は2019年8月、宇宙空間での軍事活動を統括する統合戦闘軍として、「宇宙統合戦闘軍」(Space Command)を正式に発足させている[2]。統合戦闘軍とは、米軍戦闘組織の最も大きい単位で、太平洋軍(Pacific Command)などの地域担当軍と、特殊作戦軍(Special Operations Command)や戦略軍(Strategic Command)といった機能別軍がある。宇宙統合戦闘軍は新たな機能別軍として、11番目の統合戦闘軍に加えられた。
トランプ大統領はもともと、2018年6月の国家宇宙評議会における演説[3]で、陸軍省、海軍省、空軍省と同格の宇宙軍省を創設するとしていた。しかし宇宙軍省の創設には議会の承認が必要であり、共和・民主両党から予算増大や組織の複雑化などの観点で反対論が示されていたため、すぐには進展が望めなかった。そこでトランプ大統領は当初の構想を後退させ、2018年12月、まずは宇宙統合戦闘軍の創設を国防総省に指示し[4]、2019年2月に宇宙統合戦闘軍の創設に関する大統領令に署名した[5]。
新たに創設された宇宙軍には、これまで空軍で宇宙関連の任務についていた部隊から、およそ1万6000人の人員が割り当てられる。また、一部の空軍基地が宇宙軍基地に改名される。トランプ政権は宇宙軍の創設により、宇宙空間を新たな「戦闘領域」として活動を強化する。

米国が進める宇宙の軍事化
米国が宇宙軍の設立に動いた背景には、現代の戦争において人工衛星などの宇宙インフラの重要性が増していることと、中露などが米国の宇宙利用を妨害する能力を高めていることへの警戒感がある。
衛星を使った偵察や通信といった宇宙の軍事利用は冷戦期から行われてきた。しかし現在、軍の活動にとって衛星などの宇宙インフラの重要性は格段に増し、それなしには任務遂行が困難なほどになっている。性能をさらに向上させた偵察や通信に加え、GPS衛星による巡航ミサイルの誘導、通信衛星を介したドローンの操縦、敵ミサイルの発射探知や迎撃ミサイルの誘導などは、宇宙インフラなくしては成り立たない。宇宙インフラへの依存が強まるほど、それが攻撃されれば大きな弱点ともなる。
米軍はこれまで、宇宙インフラの脆弱性を残したまま、宇宙インフラへの依存を強めてきた。米軍が軍事活動において宇宙を初めて本格的に活用したとされる1991年の湾岸戦争では、60機以上の衛星が偵察、通信、測位、ミサイル警戒、気象予測などで作戦を支援した[6]。それ以降に米軍が戦った相手はユーゴスラビア、タリバン、アルカイダ、イラクなどであり、米軍の宇宙インフラへの攻撃力をほとんど持たないアクターであった。そのため米軍は宇宙空間を利用して地上での戦闘をいかに効果的に支援するかに力を注ぎ、宇宙インフラの防衛には十分な関心が向けられてこなかった。
中国やロシアは、衛星攻撃兵器(ASAT)やサイバー攻撃能力を開発して、米軍の宇宙利用を妨害する能力を向上させているとされる。ASATには衛星を物理的に破壊する地上からのミサイルのほか、センサーや通信のジャミング(電波妨害)、他の衛星をアームで捕獲したりレーザーで攻撃する「キラー衛星」などがあり、様々な方法で敵の衛星の機能を妨害することを目的として研究・開発が行われている。中国は2007年に地上からのミサイルで衛星を破壊する実験に成功したほか、2015年にサイバー空間や衛星防衛を担う戦略支援部隊を人民解放軍に新設しており、ロシアも2015年に空軍を再編して航空宇宙軍を創設した。中露は米国のGPSに頼らない独自の衛星測位システムも実用化している。
2018年8月9日、ペンス米副大統領は国防総省での演説[7]で宇宙軍を2020年までに創設すると発表するとともに、中国やロシアの脅威に言及した。同日に米国防総省が議会へ提出した報告書「国防総省の国家安全保障宇宙コンポーネントのための組織および管理構造に関する最終報告」[8]も、米国の潜在的敵国が危機に際して米国の宇宙利用を拒絶する方法を活発に開発していることを脅威として挙げている。特にロシアと中国については、「両国は、米軍の有効性を減じるための手段として、様々なASATの開発を追求し続けるだろう」という国家情報長官による評価を紹介し、その他の潜在的敵国によるジャミング、ダズリング(目くらまし)、サイバー攻撃などに対しても警戒を示した。米国が宇宙軍を創設したのは、宇宙インフラを敵の攻撃から守り、場合によっては敵の宇宙インフラを攻撃することで宇宙空間における優位性を確立・維持するためである。
宇宙の軍事利用に向けた開発競争は米中露以外にも広がりつつあり、19年3月にはインドが世界で4か国目となるミサイルによる衛星破壊実験に成功した。19年7月にはフランスでもマクロン大統領が宇宙軍司令部を創設すると発言し、続いてパルリ国防相がASATを開発する計画を発表した[9]。安全保障における宇宙の役割は日本でも注目されており、防衛省は2020度予算の概算要求に、航空自衛隊に「宇宙作戦隊」を新設する関連費用を盛り込んだ[10]。

人類の共有財産としての宇宙利用のため、各国は協力すべき
衛星を介した通信や放送、気象予報、GPSによる地図ナビゲートなど、宇宙インフラは経済・社会活動にとっても欠かせないものとなっている。宇宙が戦場となり、宇宙インフラの利用が妨げられれば、日常生活にも多大な影響が生じる。宇宙空間の利用は、人類共通の利益につながるものであり、共有財産として適切に管理する必要がある。
宇宙利用の拡大により問題となっているのが、宇宙空間の過密化だ。地表から300~1200kmの地球周回軌道上には多数の衛星が集中しており、民間企業が衛星運用に参入したことでさらに過密化が進んだ。同じ軌道上にはロケットの残骸や寿命を終えた衛星に加え、中国やインドの衛星破壊実験、2009年の米露の衛星衝突事故で発生した破片が大量に漂っている。こうした宇宙デブリ(宇宙ゴミ)との衝突は衛星に大きな損害を与える。他の衛星やデブリとの衝突から衛星を守るためには、宇宙状況の監視や多国間の情報共有が重要だ。
米国は中露の宇宙開発を警戒していると書いたが、実は中露は2008年に「宇宙空間における兵器配置防止等条約案」(CD/1839)[11]を提案し、2014年には改訂版(CD/1985)[12]を作成して、国連総会で条約交渉を呼びかけている。米中露が参加し1967年に発効した宇宙条約は、宇宙空間の平和利用を定め、地球周回軌道上への核兵器や大量破壊兵器の配備を禁じているが、通常兵器やASATの配備は禁止していない。中露の提案は宇宙空間への通常兵器の配備も禁止するものだ。しかし、米国は条約交渉に反対し続けている。宇宙の軍事利用の無制限な拡大を防ぐとともに、人類の共有財産としての宇宙利用を安定的で持続可能なものとするために、宇宙条約の改良も含め、宇宙利用に関する新しいルールを作る国際的努力が求められる。

森山拓也

  1. 米国宇宙軍HP:
    https://www.spaceforce.mil/News/Article/2045991/department-of-defense-establishes-us-space-force
  2.  米国防総省(19年8月29日)「米国防総省が宇宙司令部を設立する」
    https://www.defense.gov/Newsroom/Releases/Release/Article/1948288/department-of-defense-establishes-us-space-command/
  3.  ホワイトハウスHP.
    https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-president-trump-meeting-national-space-council-signing-space-policy-directive-3/
  4. ホワイトハウスHP
    https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/text-memorandum-president-secretary-defense-regarding-establishment-united-states-space-command/
  5. ホワイトハウスHP
    https://www.whitehouse.gov/presidential-actions/text-space-policy-directive-4-establishment-united-states-space-force/
  6. 福島康仁 (2015)「宇宙の軍事利用における新たな潮流:米国の戦闘作戦における宇宙利用の活発化とその意義」『KEIO SFC JOURNAL』Vol.15, No.2, pp.58-76.
    https://gakkai.sfc.keio.ac.jp/journal_pdf/SFCJ15-2-03.pdf
  7. 米国防総省HP。
    https://dod.defense.gov/News/Article/Article/1598071/space-force-to-become-sixth-branch-of-armed-forces/
  8. 米国防総省HP
    https://media.defense.gov/2018/Aug/09/2001952764/-1/-1/1/ORGANIZATIONAL-MANAGEMENTSTRUCTURE-DOD-NATIONALSECURITY-SPACE-COMPONENTS.PDF
    ピースデポ『核兵器・核実験モニター』554号に抜粋訳
  9. 『AFP通信』(19年7月25日)
    https://www.afpbb.com/articles/-/3236964
  10. 『時事通信』(19年8月31日)
    https://www.jiji.com/jc/article?k=2019083001048&g=pol
  11. https://documents-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/G08/604/02/pdf/G0860402.pdf?OpenElement
  12. https://documents-dds-ny.un.org/doc/UNDOC/GEN/G14/050/66/pdf/G1405066.pdf?OpenElement
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