裁判から逃げた裁判長 住民の安全を無視した不当な判決 志賀原発2号機営業運転差し止め訴訟原告団団長 堂下 健一
第一審井戸判決(2006年3月24日)から3年後の2009年3月18日、名古屋高裁金沢支部は金沢地裁の画期的な一審判決を破棄し、私たちの原発運転やめろの願いを踏みにじる判決を下しました。判決要旨は、北陸電力と国の主張と政策を鵜呑みにしたものでした。現実的に迫る原発震災に対しては目をそむけ、裁判官としての独自判断を放棄した極めて不当な判決でした。地裁判決をことごとく否定した判決に対して原告団としては、最高裁の高い・厚い壁を承知しつつ31日に上告しました。
判決は、原子力安全委員会の定める安全審査の各指針に適合していればよいというのもで、地裁判決の指摘した点については全く触れることもなく「新指針で耐震性は確保された」と国、電力の馴れ合いをそのまま追認したものでした。国が認めているから何ら原発運転に支障はないという判断です。 地裁判決が指摘したように現実的にM7を超える地震が頻発している事態をどのように見ているのであろうか。それを新指針のいうM6・8の地震想定でもかまわないというのでは、安心して暮らせたものではありません。高裁裁判長の想像力の欠如か思考の停止か。
しかもあろうことか判決要旨では、8年間も隠していた臨界事故に対しては、国・北陸電力の報告・処分・対策を無条件に認めています。判決を追い風に、電力は判決翌日には1号機の運転再開を県と地元町に申し入れてきました。日経新聞には行政と電力は「あうんの呼吸」と書かれました。ことはそのように運びました。運転再開の申請から許可まで1週間でした。裁判所に続いて行政も電力を監視・指導するという役目をまたもや放棄してしまいました。これでは住民の生活と安全は守れません。
多くの新聞各紙が指摘していましたが、電力は裁判に勝ったからといって住民の安全が保障されたわけではない。「これで大丈夫」と思えるか。地震が発生する場所、揺れの大きさが、予測を超える事態が相次いでいる。原発で重大事故が起きれば被害は広範囲に及び、取り返しのつかない被害を招く恐れがある。原発の耐震性に「想定外」はあってはならない。
私たちの心配そのままの言葉が並んでいる。原発を止めろという記事はありませんでしたが、私たちの訴えに大きな道理があることは確かです。金沢地裁の判決が国や電力会社により厳格な安全対策を促したことは事実ですが、私たちの願いは原発震災に襲われる前に原発を止めることにあります。
1、2号機とも運転を再開しましたが、原発を止めようという気持ちはいささかも衰えていません。引き続き全国のみなさんと連帯してがんばっていきます。