2018.11.11原子力防災訓練に対する抗議声明

そもそもなぜこんな訓練をやらなければいけないのか、やはり関係する皆さん全員に考えていただきたい。(北野進「志賀原発を廃炉に!」訴訟原告団長のサイトより)
なぜ一企業の、一つの発電手段でしかない原発、動かなくても生活や経済活動に何ら支障のない原発のために多くの住民が命や暮らしを脅かされなければならないのか。
あらためて「常識」に立ち返ることを訴えたい。

本日の訓練に対する調査団の抗議声明

本日午前7時から志賀原発の事故を想定した石川県原子力防災訓練が実施された。東京電力福島第一原発事故後7回目となる防災訓練である。この間、私たちは再稼働前提の訓練に抗議すると同時に、福島原発事故の教訓を踏まえるなら最善の原子力防災は原発廃炉であると訴えてきた。しかし、石川県はじめ関係自治体は今回も志賀原発の再稼働を前提とした非現実的で実効性のない訓練を実施した。強く抗議し、以下、問題点を指摘する。

1.停止中の原発の危険性を直視せよ
(1)再稼働路線容認の防災訓練
志賀原発直下の断層について有識者会合は全会一致で活動層との評価書をまとめたが、北陸電力は志賀再稼働の方針を変えず、原子力規制委員会の新規制基準適合性審査に臨んでいる。しかし、ここでも北陸電力の見解は次々と否定され、北電社内でも「本当に動くのか」との声が上がるあり様である。こうした中、県が繰り返し再稼働前提の訓練を繰り返すことは、北電の再稼働路線を容認し、あるいは期待しているかのようなメッセージを県民に送ることになる。「敷地内断層問題の決着が最優先」という谷本知事の発言とも矛盾している。

(2)向き合うべきは停止中の原発の危険性
志賀原発は来年度も稼働しないことが確定している。しかし、停止中とはいえ原発には今なお使用済核燃料や新燃料が存在している。そしてその直下には活断層が存在する。私たちは地震などの自然災害はもちろん、武装集団によるテロ攻撃や大規模停電など様々な原因による過酷事故の危険にさらされ続けている。実際、1昨年は雨水大量流入事故が発生し、原子力規制委員会の田中俊一委員長(当時)から冷却機能喪失で「重大事故につながる危険性があった」という深刻な指摘を受けている。防災上の最優先課題は核燃料の一日も早い撤去であり、撤去までの間は停止中の原発の過酷事故を想定した訓練を実施すべきである。

(3)リアリティのない訓練で緊張感が低下
停止中の原発の危険性に向き合わない訓練は、周辺住民に「停止しているからとりあえず安心」との誤解を生み、なにより防災訓練参加者の緊張感の低下を招いている。今年2月の原子力規制委員会との訓練では北陸電力社内の情報共有システムがダウンし発電所内の情報が伝わらない、先般は敷地内のモニタリングポストが浸水するなど、過酷事故に対応できない事態が続発している。

2.実効性のない訓練の繰り返し
(1)新たな安全神話をつくる「スムーズな避難」
原子力防災における避難行動は、被ばくの恐怖に直面する中、時間との勝負となる。しかし、あらかじめ決められたごく一部の住民が参加する避難訓練では、避難指示の伝達漏れはなく、避難バスも事前に配車され、自家用車による避難の渋滞もなく、スクリーニングポイントでの順番待ちもない。課題として残るヨウ素剤の配布や服用指示の訓練は今回も実施されなかった。訓練全体に手抜き感が漂うが、その中で毎回確実に実現する「スムーズな避難」は、新たな安全神話をつくるものである。

(2)どうする?半島先端への避難
今回の避難訓練は輪島市や能登町への避難に重点が置かれているが、半島先端方向への避難は当初から様々な課題が指摘されている。避難車両やスクリーニングポイントでのマンパワーと資機材は確保できるのか。地震など複合災害の場合の避難路は確保できるのか。季節によっては多くの観光客や帰省客がいる。里山海道が寸断されれば混乱必死である。要支援者の避難先での生活や医療面での支援も含め課題は山積、不安は尽きない。加えて、風向きや放射能の放出量によっては半島先端までもが汚染区域となることが予想される中、果たして計画通り半島先端方向へ住民は避難するのかという問題も残されたままである。

(3)課題から逃げまくる非現実的訓練
PAZ圏内、UPZ圏内それぞれの住民へのヨウ素剤の配布、服用指示は重要な課題であるが、いまだ必要な住民への配布が可能かどうか検証はできていない。観光客など一時滞在者、特に近年増加する外国人旅行者への避難情報の伝達、避難、ヨウ素剤の配布等も懸念される。SPEEDIの使用を中止した中、緊急時モニタリングを迅速、的確に実施し、UPZ圏内の住民の避難行動につなげることができるのか、実践的な訓練も求められている。防災業務従事者の被ばく対策や交代要員の確保も重要な課題である。加えて先に述べたように半島先端方向固有の課題もある。課題を列挙するときりがない。この間の訓練同様、今回もやりやすい項目をつまみ食いするだけで課題の検証から逃げた訓練だと言わざるをえない。

3.繰り返して指摘する「今こそ常識に立ち返れ」
一 企業の、電気を生み出す一手段に過ぎない志賀原発。7年8カ月停止状態が続いても停電にもならず経済活動にも支障がでない志賀原発。そして今後、稼働する可能性はほとんどないと思われる志賀原発のために今も多くの県民が命や暮らしを脅かされ、財産を奪われ、ふるさとを追われる危険に晒され続けている。このような異常な事態を放置し、さらには覆い隠すかのように防災訓練が繰り返されている。
私たちは毎回、すべての原子力防災関係者に常識に立ち返るよう訴え続けてきた。避難させるべきは住民ではなく核燃料である。北陸電力は人災である原子力災害を防止するため、直ちに志賀原発の廃炉を決定せよ。活断層上にある核燃料を速やかに撤去せよ。

2018年11月11日

社会民主党石川県連合、自治体議員団 2018年石川県原子力防災訓練監視・調査団

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