話題 ベトナム体験から平和学んだ 1000校に講演録(元兵士)
毎日小学生新聞2018年5月14日より
日本を訪れて戦争の現実を訴え続けた生前のアレン・ネルソンさん
アメリカの海兵隊員(かいへいたいいん)としてベトナム戦争(せんそう)に参加(さんか)した体験(たいけん)に基(もと)づいて、平和(へいわ)の大切(たいせつ)さを訴(うった)え続(つづ)けた人(ひと)がいました。2009年(ねん)に61歳(さい)で亡(な)くなったアレン・ネルソンさん。日本(にっぽん)で講演(こうえん)などの活動(かつどう)を支(ささ)えた市民(しみん)たちが、本(ほん)やDVDのセットを1000校(こう)を目標(もくひょう)に学校(がっこう)へ贈(おく)る取(と)り組(く)みを始(はじ)めます。
学校へ贈る教材を手にする支援者の平塚淳次郎さん
ネルソンさんは貧(まず)しさから抜(ぬ)け出(だ)すために18歳(さい)で海兵隊(かいへいたい)に入(はい)りました。沖縄(おきなわ)などで敵(てき)の人間(にんげん)を殺(ころ)す方法(ほうほう)について厳(きび)しい訓練(くんれん)を受(う)けた後(あと)、ベトナム戦争(せんそう)の最前線(さいぜんせん)へ送(おく)られました。ネルソンさんは、ゲリラとみられるベトナム人(じん)の男性(だんせい)だけでなく、女性(じょせい)や子(こ)どもまで何人(なんにん)も殺(ころ)したそうです。
しかし、農家(のうか)で女性(じょせい)が赤(あか)ちゃんを産(う)む場面(ばめん)に立(た)ち会(あ)ったのが決(き)め手(て)になり、ベトナム人(じん)も同(おな)じ人間(にんげん)だと思(おも)い直(なお)し、「殺(ころ)すのも、殺(ころ)されるのも、もうたくさんだ」と反省(はんせい)。兵役(へいえき)を解(と)かれてからは、心(こころ)に強(つよ)いショックを受(う)けて発症(はっしょう)する「心的外傷後(しんてきがいしょうご)ストレス障害(しょうがい)(PTSD)」に苦(くる)しめられました。1995年(ねん)に沖縄(おきなわ)で起(お)きたアメリカ兵(へい)の少女暴行事件(しょうじょぼうこうじけん)に心(こころ)を痛(いた)めて来日(らいにち)。各地(かくち)の学校(がっこう)などで約(やく)1000回(かい)の講演(こうえん)を重(かさ)ねましたが、戦場(せんじょう)で浴(あ)びた枯(か)れ葉剤(はざい)の影響(えいきょう)とみられるがんで亡(な)くなりました。
ネルソンさんは戦争放棄(せんそうほうき)を定(さだ)めた憲法(けんぽう)9条(じょう)を知(し)り、「9条(じょう)は日本(にっぽん)を戦争(せんそう)から守(まも)ってきた。世界(せかい)に広(ひろ)めたい」と何度(なんど)も訴(うった)えました。その思(おも)いを受(う)け継(つ)ごうと、石川県加賀市(いしかわけんかがし)の寺院(じいん)「光闡坊(こうせんぼう)」住職(じゅうしょく)の佐野明弘(さのあきひろ)さん(60)たちが「アレン・ネルソン平和(へいわ)プロジェクト」を結成(けっせい)し、ネルソンさんの半生(はんせい)をまとめたDVD「9条(じょう)を抱(だ)きしめて」を作(つく)りました。このDVDと2冊(さつ)の著書(ちょしょ)「ネルソンさん、あなたは人(ひと)を殺(ころ)しましたか?」、「戦場(せんじょう)で心(こころ)が壊(こわ)れて」を1組(くみ)ずつ贈(おく)ります。佐野(さの)さんは「力(ちから)や暴力(ぼうりょく)に頼(たよ)らない道(みち)が必(かなら)ずあるということを子(こ)どもたちに知(し)ってほしい」と話(はな)しています。
問(と)い合(あ)わせは光闡坊(こうせんぼう)(0761・74・0508)。
■アレン・ネルソンさんのメッセージ
I learned that war and violence will never bring peace to our world or our lives.So let’s learn how to live with love and peace.
(私(わたし)は、戦争(せんそう)と暴力(ぼうりょく)が私(わたし)たちの世界(せかい)や私(わたし)たちの生存(せいぞん)に決(けっ)して平和(へいわ)をもたらさないことを学(まな)びました。だから、どうすれば愛(あい)と平和(へいわ)とともに生(い)きていけるのかを学(まな)びましょう)
アレン・ネルソンさんの著書(ちょしょ)「I Know War~Allen Nelson Cries Out for Peace~」(かもがわ出版(しゅっぱん))より
「9条を抱きしめて」 アレン・ネルソンさん (動画あり)