米国トランプ政権の「核戦略見直し(NPR)」と日本政府の姿勢に抗議する!

2018年2月5日

米国トランプ政権の「核戦略見直し(NPR)」と日本政府の姿勢に抗議する

原水爆禁止日本国民会議(原水禁)
議長 川野浩一

2月2日、米トランプ政権は、2010年のオバマ政権以来となる「核戦略の見直し」(NPR)を発表した。「力による平和」を主張するトランプ大統領の意向を反映し、ピンポイントで核兵器の使用を可能とする「小型核兵器の開発」を明記し、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)への搭載や水上艦搭載の核巡航ミサイルの開発などをめざすものとなっている。また、使用条件も緩和し、核兵器使用の目的を核兵器以外の兵器での攻撃へも拡大し、サイバー攻撃も対象から外していない。包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准の追求や「新たな核兵器開発は行わない」としていた前オバマ政権下でのNPRを全否定し、「核なき世界」をめざすとするオバマ前大統領の姿勢をも放棄したものである。「核と人類は共存できない」として核兵器廃絶の運動をすすめてきた原水禁は、米トランプ政権に対して強く抗議する。
トランプ政権の一連の政策は、これまで米国自身が積み上げ、オバマ政権で結実した「核なき世界」の理想を放棄し、米国があたかも世界の平和を支えているとする傲慢な考え方に基づくものである。世界122カ国の賛成で成立した「核兵器禁止条約」に対しても、「全く非現実的な核廃絶の期待である」として否定する姿勢は、世界から理解されることはない。自らが世界のリーダーたらんとするならば、長い歴史を顧みて、核兵器廃絶と核兵器物質の最小化、核兵器の役割低減を求めてきた声に耳を傾けなくてはならない。
一方で、日本政府は、米国の核抑止力を強化するものとして今回のNPRを「高く評価する」とした。米国のこのような姿勢を支持し核兵器禁止条約にも背をむける日本政府を、「唯一の戦争被爆国」として核兵器廃絶を主張しても誰が納得するというのか。今回のNPRには、退役した核搭載型巡航ミサイル「トマホーク」の代わりに、新たな核巡航ミサイルの開発が明記された。米国が、ロシアと中国、朝鮮民主主義人民共和国の核兵器を強く意識している以上、日本への核兵器持ち込みが懸念される。日本政府は、国是である「非核三原則」の危機に対しても沈黙している。被爆者の思いに背を向け、これまでのとりくみを否定する日本政府の姿勢は、許すことができない。
今回のNPRは、核兵器の限定的使用に明確に向かっている。使用可能な小さい核なら抑止力を拡大し世界平和に貢献するなどと言うのは、幻想に過ぎない。世界終末時計は、1月25日、残り2分を指した。水爆実験が繰り返されていた1953年と並び最短となっている。今回のNPRで、過去最悪を更新するのではないかと懸念される。米国とソ連(当時)が部分的核実験禁止条約を結んだ1963年は、12分前に戻っている。核の危機を訴えるのなら、核兵器廃絶への対話をつくり出す以外に方法はない。
原水禁は、米国と日本政府の姿勢に強く抗議するとともに、核兵器廃絶へ向けて更なるとりくみを強化する。

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