辺野古新基地建設工事再開に対する抗議声明

2015年10月29日

 

辺野古新基地建設工事再開に対する抗議声明

 

フォーラム平和・人権・環境

(平和フォーラム)

代表 福山真劫

 

仲井眞弘多前沖縄知事が承認した辺野古の埋め立てを翁長雄志県知事が取り消したために中断されていた沖縄米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事の作業を、沖縄防衛局は29日早朝から再開した。沖縄県民の思いを踏みにじる行為に、平和フォーラムは強く抗議する。

辺野古新基地建設反対を主張して立候補し大差で勝利した翁長知事は、前知事の埋め立て申請の承認に瑕疵があるのではないかとして第三者委員会に調査・報告を求めた。第三者委員会は、今年7月16日に、①埋め立ての必要性に合理的な疑いがある、②埋め立てで生じる利益と不利益を比べると合理的ではない、③環境保全措置が適正と言い難い、④法律に基づく既存の環境保全計画に違反している可能性が高い、などとして承認手続きの瑕疵を認定した報告書を翁長知事に提出した。翁長知事は、時間をかけて慎重に検討した結果として、10月13日に承認取り消しを決定した。政府は、前知事の埋立承認の段階で表明された「環境の保全についての懸念が払拭できない」とする生活環境部長意見や辺野古環境アセスの評価書補正段階で沖縄防衛局が設けた、「環境影響評価に関する有識者研究会」において「研究会は事業によって環境に影響が出るのは避けられないという見解を出したが国は『影響がない』というスタンスに変わった」との横浜国立大学松田裕之教授の証言など、多くの疑問に何ら答えていない。

それどころか翌日14日午後には、沖縄防衛局は、「私人の立場」として、石井啓一国土交通相に対し、行政不服審査法に基づく審査請求および承認取り消し処分の執行停止を申し立てた。国土交通省は10月27日、処分効力の停止を決定した。今回の移設工事の作業再開は、この決定に基づいている。このような、法の目的を逸脱した運用は許されない。岡田正則早稲田大学教授、紙野健二名古屋大学教授など94人の行政法研究者が声明を発表し、「政府がとっている手法は、国民の権利救済制度である行政不服審査制度を濫用するものであって、じつに不公正極まりないものであり、法治国家に悖るものといわざるを得ない」とした。翁長知事も、「同じ内閣の一員である国土交通相に対して審査請求したことは不当と考えている」と述べている。

一方で、政府は、辺野古新基地建設予定地周辺の辺野古・豊原・久志の3地区に対して、地域振興費用を直接交付すると区長に表明した。そもそも行政区は地方自治体の権限の下で委任された事務などに従事する組織であり、法的権限は限定的である。辺野古新基地建設に反対し、基地交付金を受け取らない名護市に対するきわめて政治的な圧力であり、市民社会への挑戦である。今後、支出の枠組みや法的根拠を検討するとしたことは、法治国家の姿とは言えない。稲嶺進名護市長は、「地方自治への介入であり、市と地域の間への分断工作」と強く批判している。

翁長知事は、辺野古新基地に対して明確に反対し、米軍基地の存在が沖縄経済にとってマイナスであるとの主張を変えることはない。沖縄経済の基地依存率は5%にも満たない。沖縄県民は、美ら海と山原(やんばる)に象徴される豊かな自然と独自の文化、そして東アジアの中心としての歴史を大切に、生きていこうとしている。そして沖縄戦という悲惨な歴史の記憶から平和を維持しようとしている。日本政府には、そのような沖縄県民の選択に寄り添いそのことに支援していく義務を持つ。県民の命を軽視しその思いを踏みにじる日本政府の姿勢に、沖縄県民の怒りは収まることはないだろう。

平和フォーラムは、政府の暴挙を許さず、沖縄県民と堅く手を握り、辺野古新基地建設阻止に向けて全力でとりくんでいく。

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