2008年11月18日
第6航空団司令兼小松基地司令
石 野 貢 三 様
石川県平和運動センター
代 表 柚木 光
社民党石川県連合
代 表 宮下登詩子
小松能美勤労協連絡会
会 長 長田 孝志
加賀地区平和運動センター
議 長 森田 恵子
申 入 書
「我が国が侵略国家だったなどというのは正に濡れ衣」。
現職の航空幕僚長である田母神俊雄氏が、政府見解に反し、過去の植民地支配や侵略戦争を正当化する歴史観を、アパグループが募集した懸賞論文で発表していたことが10月31日、明らかになりました。政府見解と明らかに異なることから、浜田防衛相は即日、田母神氏を更迭し、事態の幕引きを図ろうとしました。しかしその後、この懸賞論文は、航空幕僚監教育課の紹介で、小松基地第6航空団の63人を中心に全国の航空自衛隊員97人が応募していたことが判明しました。まさに組織的な取り組みだったのです。
アパグループがおこなった「真の近現代史観」懸賞論文は今回が第一回目の募集です。その制度創設の理由は、応募要領によると「日本が正しい歴史認識のもとに真の独立国家としての針路を示す提言を後押しすること」とされています。さらに創設にあたっては、「報道されない近現代史」を発刊したアパグループ代表・元谷外志雄氏の「正しい歴史認識」への深い思い入れがあったと記されています。つまりこの懸賞論文の審査にあたっての「正しい歴史認識」の判断基準は元谷氏の著書にあるのです。実際、そこでは、田母神氏の論文同様、「日本が好まない対米戦争に引きずり込んだのは・・・ソ連のスパイの数々の謀略である」とする謀略史観が展開され、侵略戦争を否定する歴史観が綴られています。
さらに今後の日本の針路として、非核三原則の見直しや集団的自衛権の行使、憲法改正による真の独立国の実現などの持論も展開されています。つまり、この懸賞論文の狙いは、歴史認識に関する政府見解を否定し、特定の政治的見解を後押しすることにあると言わざるをえません。
マスメディアからは「稚拙」、防衛省内からも「低レベル」と評価される今回の田母神論文ですが、元谷氏の著書が手本ならば、最優秀賞受賞も大いに頷けます。実際、元谷氏は「田母神氏の論文は私の考えとも全く一致」しているとマスコミの取材に対し述べています。
このような懸賞論文に対し、小松基地第6航空団は石野貢三司令名で論文作成を幹部自衛官に命令し、組織的に応募していたのです。いわゆる制服組が、政府見解と異なる政治的見解を組織ぐるみで打ち出す動きを起こしたことに、私たちは大きな驚きと怒り、そして恐怖を感じました。田母神氏は航空幕僚長という要職にあって、また、第6航空団は武力を備えた組織として、シビリアンコントロールに反旗を翻したのです。日本海側唯一の戦闘機部隊が所属し、沿岸諸国と向き合う小松基地が、政府の方針を無視し、独善的な行動をとっているという事実は、日本の平和を根幹から揺るがす事態だと言わざるをえません。田母神氏同様、石野司令の行為も、明らかな職務義務違反であり、懲戒免職に値する重大な違反行為であると考えます。
このような行動の背景には、10年来の田母神氏と元谷氏との付き合い、さらには小松基地と元谷氏が会長を務める「小松基地金沢友の会」との関係も指摘されています。元谷氏のF-15への体験搭乗は、部外者原則禁止の規定の下、田母神幕僚長の承認で、まさに例外として実現しており、両者の異常な関係を象徴しています。また、同会は、会長の元谷氏をはじめとした中心メンバーが、憲法や自衛隊、歴史認識に関し、明確に政府見解と異なった主張を展開しており、協力関係を持つことは不適切であると考えます。
私たちは、当然ながら石野司令ご本人が懸賞論文の組織的応募の経緯を説明し、国民に対し謝罪し、自らの責任を明らかにすべきと考えてきました。元谷氏と小松基地との異常な関係についても釈明があってしかるべきです。しかし、本日に至るまで、何ら石野司令からの発言はありません。そこで以下5点を申入れさせていただきます。明確な回答を求めます。
記
1.懸賞論文への組織的応募に至る経緯を詳細に明らかにすること。
2.第6航空団から応募した論文をすべて公表すること。
3.過去の幹部論文のテーマ、過去に組織として対応してきた懸賞論文のテーマ、隊員の教育カリキュラムを公表すること。
4.政府見解に反する懸賞論文の応募に組織的に取り組んだ石野司令は、国民に対し謝罪し、その責任を明らかにすること。
5.小松基地や所属隊員は、「小松基地金沢友の会」との関係を絶つこと。