全国署名運動、福田首相・甘利経産大臣宛に再稼動反対の申し入れ(3月25日)

2008年3月25日

内閣総理大臣 福田 康夫 様
経済産業大臣 甘利  明 様

北陸電力に原発運転の資格なし!
全国署名運動
共同代表  嶋 垣 利 春

〃  中 垣 たか子

申 入 書

昨年3月15日、北陸電力志賀原発1号機における99年6月の臨界事故隠ぺいが発覚しました。瞬間的には即発臨界状態になっており、条件次第では大規模な放射能災害になりかねない深刻かつ重大な事故でした。決して起こしてはならない臨界事故を起こした北陸電力の原子炉運転管理能力を根本から問い、さらに組織ぐるみで隠ぺいした犯罪行為は厳しく裁かれるべきです。ところが国は、業界全体に蔓延する隠ぺい体質に問題を矮小化し、臨界事故の実相やそれに至る経緯、隠ぺい工作の全体像についてはついに明らかにせず、したがって原因究明についてもまったく不十分なまま、北陸電力に対する実質的な処分なしで幕引きを図りました。国が重大な事故隠しを奨励するような前例がつくりあげられたといっても過言ではありません。北陸電力には原発を運転する能力も資格もないことは明らかであり、国は原子炉の設置許可を取り消すべきです。
北陸電力の再発防止策も評価に値しません。志賀原発の臨界事故隠ぺいが発覚して以降、沸騰水型原発(BWR)で同様の制御棒脱落事故の隠ぺいが次々と明らかになり、中には臨界に至る事故もありました。事故の根本原因はBWRの制御棒駆動機構の構造的欠陥であることは明らかです。ところが、再発防止策ではハード面での抜本的な対策は立てられないまま、運転員・作業員のマニュアル遵守のみが強調されています。致命的な欠陥です。なぜ国はこのような再発防止策を承認するのでしょうか。さらに、いずれの事故も複数の制御棒が脱落する等、安全審査の事故想定条件を超えているにもかかわらず、事故想定条件の見直しはまったくなされていません。国は本当に臨界事故の再発を防ぐ意思があるのか、その根本姿勢が問われています。
隠ぺい体質も変わっていません。昨年12月には、2002年から2003年にかけて実施していた原発沖合いの海底活断層の再評価を公表していなかったことが発覚しました。北陸電力は「評価結果が基準地震動S2を超えていないので安全は確保されている。国にも報告しており、公表する必要はないと判断した」と弁明しましたが、基準地震動S1を超えている活断層が2本明記されています。設置許可申請時にこの事実が判明していれば、志賀原発は耐震設計を最初からやり直さない限り、許可されませんでした。カラスの巣の発見や電球切れは公表されても、住民にとって大切な情報は今後も隠され続けるに違いありません。あらためて臨界事故隠ぺいの再発防止には設置許可の取り消ししかないと断言させていただきます。

本来、設置許可が取り消されるべき志賀原発ですが、仮に再稼動を検討するならば、臨界事故隠ぺいの再発防止だけではなく、原発の耐震安全性の確保も判断基準として欠くわけにはいきません。昨年3月の能登半島地震と7月の中越沖地震は、原発の耐震安全性にあたらためて大きな疑問を突きつけました。2006年3月の金沢地裁判決が指摘したように、原発耐震設計の前提となる「活断層の評価」および「想定される地震動の評価」がいずれも過小であることが、現実の地震によって実証されたのです。さらに柏崎刈羽原発における事故・トラブルの同時多発は、同判決がやはり指摘していた「地震の際、多重防護が機能しない可能性」が杞憂でないことを示しました。
ところがその後の国の対応は、私たちの疑問や不安をさらに増幅させました。本来は原発を停止して実施すべき「新耐震設計審査指針にもとづくバックチェック(耐震バックチェック)」が、志賀原発等たまたま停止中の原発以外は停止させないまま行われたこと、あわや原発震災だった柏崎刈羽原発の被害状況を直視せず、幸いにして運転中の原子炉を冷温停止状態にできたことをもって「安全性は確保された」と強調したこと、そして柏崎刈羽原発の被害の全貌が明らかになっていないうちに、「中越沖地震を踏まえて耐震バックチェックに反映すべき事項」をとまとめたことなど、地震の警告を真摯に受け止め、教訓を得ようとする姿勢がまったく欠けていると言わざるをえません。
決定的に不可解なのは、耐震バックチェックの中間報告の検証を、国自ら「今後厳正に確認」するとしながら、明日にも志賀原発が再起動するということです。志賀原発は、「起こりえないが念のため想定する」揺れS2を490ガルとして設計され、施工されました。ところが、耐震バックチェックでは基準地震動S1・S2の策定および解析手法に関してなんら検証なしに、新しい基準地震動Ss-1(600ガル)が策定され、しかも、それでも志賀原発の「耐震安全性は確保されている」と結論づけています。なぜ旧指針で許可されないものが、新指針で許可されるのでしょうか。志賀原発で実施された補強工事は「本来必要ないが、住民の皆さんの安心のために」と行われ、工事によって耐震安全性がどれだけ増すのか、数値的な説明はまったくありません。一般の建造物では、耐震基準が変われば、それに合わせて補強工事を実施しますが、原発の場合は「設計の余裕」と「施工の余裕」を都合よく引き出して、辻褄あわせをしているだけではないかと危惧します。
はたして耐震バックチェックでは、最新の知見に基づいて断層や地質の十分な調査が行われたのか、そしてその地震動の評価は妥当か、そして志賀原発の施設や機器は新たな地震動に耐えられるのか、厳正な検証が求められます。もちろん安全審査の前提が崩れるならば、許可を取り消し、安全審査をやり直すべきです。それまで再稼動が認められないのは、住民の安全を考えれば当然のことです。

そこで、私たち「北陸電力に原発運転の資格なし!全国署名運動」は、この署名運動に参加した519,458人を代表して、以下の項目を申し入れます。

1.志賀原発の設置許可を取り消すこと。
2.志賀原発1号機の臨界事故およびその隠ぺいの真相を徹底究明すること。
3.活断層評価ならびに地震動評価を見直し、最新の知見にもとづいて安全審査をやり直すこと。
4.志賀原発の再稼動を認めないこと。

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