米ロの軍拡をもたらす米ミサイル防衛見直し(MDR)―極超音速兵器の脅威に宇宙の軍拡で対応

                                                                                                                  湯浅一郎 2019年3月31日

1.トランプ・ミサイル防衛見直しの概要

19年1月17日、トランプ米大統領は、国防総省において米国のミサイル防衛強化に向けた新戦略「ミサイル防衛見直し(以下、MDR)」を発表した。同種の文書は、オバマ政権期の2010年に初めて策定され、「弾道ミサイル防衛見直し(BMDR)」と呼ばれた。今回は、極超音速兵器や高度な巡航ミサイルなど弾道ミサイルに含まれないものを含む、多様なミサイル脅威に対応する必要性を踏まえ、「弾道(B)」が外れ、「MDR」という名称に変更されている。
MDRは、2017年12月の「国家安全保障戦略(NSS)」、2018年1月の「国家防衛戦略(NDS)」、そして同年2月の「核態勢見直し(NPR)」と整合するものとして策定が進められ、2018年春頃に公表されると言われていたが、1年近く発表が遅れた。その要因の一つは、特に宇宙配備センサーやブースト段階での迎撃計画など新時代へ向けた途方もない投資を必要とする構想の妥当性の検証に時間がかかったことが推測される。
まずロシア、中国、北朝鮮、イランの4か国を主な脅威とみなし、現在および将来のミサイル脅威を米本土、及び「海外の米軍、同盟国、協力国」ごとに分析し、現在、及び将来の脅威環境を見直し、ミサイル脅威の多様化とあらたな脅威の出現など環境が大きく変化したとする。北朝鮮への言及が最も多いが、2017年9月の6回目の核実験や、火星15号を含むICBM発射を踏まえて、今や北朝鮮は、米本土を核ミサイル攻撃によって脅かす能力を有すると指摘した。米国政府公式文書において北朝鮮の核ミサイルが米国を攻撃しうると評価したのは初めてである。18年に、米朝首脳会談等により対話と平和への交渉が新たに進んでいることを認めつつも、北朝鮮に対する脅威認識は変化しておらず、米国は警戒を怠ってはならないとしている。
ロシアは、18年3月のプーチン演説(注1)で示されたように、近年、飛翔速度の非常に速い極超音速巡航ミサイルや極超音速滑空体(HGV)(Hypersonic Glide Vehicle)の開発・配備に力を入れている。中国もHGVの実験を行っていることで、近未来の脅威とした。
イランは、中東での米国の影響力を、当該地域の覇者になるという自らの目標の前に立ちはだかる最大の障壁と考えており、中東で最大の弾道ミサイル戦力を有しており、米国を威嚇する能力を持った大陸間ミサイルに応用できる技術の開発を続けているとする。
その上で、これらの脅威に対応するためのミサイル防衛の役割・原則・戦略を位置づけ、現在および近い将来の本土防衛や地域防衛の計画を包括的に検討している。ミサイル防衛の多様な役割として、米本土及び同盟国の保護、攻撃の抑止、同盟国の安全の保証、外交の支えなどを挙げる。ミサイル防衛計画と能力については、本土防衛、地域防衛、さらに巡航ミサイルや極超高速兵器への対応計画を順次、示している。

2 既存のミサイル防衛態勢の強化
現在、米本土防衛として、北朝鮮や潜在的にはイランの核・ミサイル脅威への対処を念頭に地上ベースのミッドコース防衛(GMD)システムが構築されている。具体的には地上配備迎撃ミサイル(GBI)がフォートグリーリイ(アラスカ)に40基,バンデンバーグ空軍基地(カリフォルニア)に4基の計44基配備されている。これを踏まえ、本土防衛のGMDとして2023年までにGBIをフォートグリーリイに20基追加配備し、64基までに増強する。またアラスカ、ハワイ、太平洋地域に、新たなミサイルの追跡及び識別センサーを配備する。
地域防衛では、現在、BMD能力を有するイージス艦は38隻であるが、2023年までにその数を60隻に増やす計画であるとし、その計画はMDR発表後6か月以内に国防長官らに送付される。
さらに本土防衛と地域防衛を統合することで、早期の警戒やミサイル追跡の態勢を強化し、コストを削減する。例えば、米国が日本に配備しているXバンドレーダーは、早期警戒や北朝鮮から米国や日本に向けて発射されたミサイルの追跡に有効であるとする。
さらに「同盟国およびパートナー国との協力」を明記し、インド太平洋地域では、日本のミサイル防衛態勢との協力、相互運用性の強化がうたわれている。日本では、「多数の複合的な経空脅威にも同時対処できる能力を強化する」(注2)との観点から、現在、イージス艦6隻を8隻体制に増強し、中期防では2023年までにイージスアショア2基の配備を決めている。これら自衛隊のミサイル防衛態勢と在日米軍のイージス艦やXバンドレーダーとの相互運用の強化を図ることになれば、平時においても集団的自衛権の行使を前提とした態勢が日常化することになる。また米国からのミサイル防衛への予算増や米装備の購入の要求がさらに増えることが想定される。

3 近未来型のミサイル脅威に対する誇大な構想が目白押し
トランプMDRのもう一つの特徴は、極超音速巡航ミサイルや極超音速滑空体(HGV)などによる新たな攻撃的ミサイルの脅威と不確実性への対応策が多数、構想されていることである。
ここでは、「宇宙の重要性」が強調されている。「宇宙開発によって、既知・不測双方の脅威に対しより有効で弾力性や順応性のあるミサイル防衛態勢が可能になる。例えば、宇宙センサーは、地球上のどの地点から発射されたミサイルであっても観察・発見・追跡することができる。宇宙センサーは陸上センサーに課せられるような地理的制限に服することなく、ある程度自由に動き回ることができ、きわめて有利なことにミサイルの「誕生から死まで」を追跡することが可能なのだとする。」
ならず者国家の保有ミサイルが増加するにつれ、迎撃を宇宙から行うことで、攻撃用ミサイルが様々な報復措置を実施する前の、最も脆弱な初期の上昇段階で交戦する機会が生まれるかもしれない。宇宙からの迎撃により、攻撃用ミサイルの迎撃に成功する可能性が全体として高まり、米国の迎撃機(defensive interceptors)の数を求められている通り減らすことができ、攻撃用ミサイルを標的国ではなく攻撃国の領空で破壊できる可能性が生まれる。国防総省は、宇宙ベース防衛の構想や技術に関する短期間の調査を新たに実施し、変化する安全保障環境における宇宙ベース防衛の技術的・戦略的な将来性を査定するとしている。
極超音速滑空体(HGV)は、弾道ミサイルないしロケットによって打ち上げられたのち、ブースターの燃焼終了直後に切り離され、飛翔体自体の揚力によって大気圏上層で跳躍・滑空を繰り返し、高速で目標に突入する。そのため、高速の巡航ミサイルやHGVは、マッハ5以上の高速で、低空を変則的に飛行するため、地上配備型レーダーをかいくぐることができる。これらに対抗するために、まず複雑なミサイルの脅威を検知、追跡し、効果的に対処できるよう宇宙空間でのセンサー網による監視網の充実をあげる。既に米国は、宇宙配備の赤外線センサー(「宇宙ベース・キルアセスメント(SKA)」と呼ばれる)網を18年末までに軌道上に配置するとしているが、それをも含めた包括的な監視網が想定されている。
またロケットエンジン分離前のブースト段階での攻撃により破壊させる宇宙配備型の迎撃システムの可能性調査などの必要性を訴えている。ここでは、ステルス戦闘機F35や、レーザー兵器を搭載した無人航空機などが検討対象とされる。宇宙に関わるこれらの計画についても、MDR発表後6か月以内に報告書を出すとしている。

4 中ロの反応と核軍拡競争を激化させる懸念
米MDRに対し、中ロはすぐに反応した。まずロシア外務省は、「これらの考えを満たすことは、必然的に宇宙での軍拡競争を招くことになり、それは国際的な安全保障と安定性にとって最大の悪影響となるだろう」と述べた。さらに「米国政府に対し、悪名高いレーガンのスターウォーズ計画をより高い技術レベルで再開するこのような無責任な試みを放棄するよう呼びかけた」(注3)。
また中国外務省の華春栄副報道局長は、2月17日の定例記者会見で「米国は他の国に兵器開発を控えるよう求める一方で、殺傷力の極めて大きな兵器を絶えず強化している。これは米国のダブルスタンダードを示すものだ」と反発した(注4)。
ところで、米国が新たな脅威とする極超音速の攻撃的ミサイルは、米国も開発を推進している(注5)。それを棚に上げて中ロが開発するものは新たな脅威であるとして、それを超えるミサイル防衛態勢を生み出そうとすることは余りにも一方的である。
しかも、MDR発表後6か月以内に国防長官らに報告を出すとされた計画は10件に上ることから見ても、構想の多くは、いまだ夢物語の次元で内容に著しい不確実性があると推測できる。膨大な巨額を投資して、残る成果が見えないことになりかねない代物ばかりである。

米MDRは、トランプ政権のINF離脱などに輪をかける形で、宇宙を始めとした米国とロシア・中国間の際限のない軍備競争をもたらす危険性がある。この問題を考えるにあたり、2002年に米国がABM条約から脱退し、ミサイル防衛(BMD)体制の強化を打ち出したことで、ロシアが、これに対抗して米国のMDを打ち破る兵器の開発に約20年という年月をかけて極超音速兵器の開発などを進めてきた経緯を想起する必要がある。本MDRで米国は、ロシアの動きを理由に宇宙の軍事化などを含むミサイル防衛体制の新たな開発へと向かい、とめどのない核軍拡を引き起こそうとしている。INF条約からの離脱も、上記と同様の新たな軍拡の引き金になりかねない。しかし、今、求められているのは、MD態勢の強化ではなく、軍縮基調を生み出すことである。

注:
1 ピースデポ刊「核兵器・核実験モニター」541号(2018年4月1日)に関連記事。
2 「防衛計画の大綱」、2018年12月18日。
3 「インターファクス通信」、2019年1月18日。
4 「毎日新聞」2019年1月19日。
5 米軍による極超音速兵器開発の現状を示す一。

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【考える広場】我が内なるファシズム  東京新聞より

我が内なるファシズム  2019年3月30日

 イタリアでファシズムが芽を出すのが一九一九年。ヒトラーもその年にナチスに入党した。第二次世界大戦で一掃されたはずのその思想は…。百年後の今、自分の中に潜むファシズムを考える。

 <ファシズム> 国家主義的、排外主義的な運動理念、政治形態。第1次世界大戦後のイタリアで、資本主義の危機、社会の混乱に不安を感じた中間層がファシスト党のムソリーニに率いられて起こした大衆運動。議会政治や言論・出版・結社の自由を否定し、カリスマ的指導者による独裁体制を志向する。対外的には反共産主義を掲げ、侵略政策を取った。

1929年の大恐慌を背景に、ファシズムは欧州や南米諸国に広がり、ドイツではヒトラーが、スペインではフランコが政権を握った。

◆非選挙組織で歯止め 甲南大教授・田野大輔さん

田野大輔さん

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 学生に同じ制服を着せ、野外で行進や他者への糾弾を行わせる「ファシズムの体験学習」という授業をしています。

 糾弾では仕込みのカップルに全員で怒号を浴びせますが、そうしているうちにだんだんと参加者の声が熱を帯びてきます。そこには「許されていることだから構わないだろう」という「責任感のまひ」が見られます。

 それと同時に、参加者はちゃんと声を出さない人を見ていら立ちを覚えるようになります。「集団の力」を実感し、一緒に行動することを義務と感じる「規範の変化」が起きるのです。

 権力の後ろ盾があればいとも簡単に、社会的に許されないことができてしまう。これは一九三八年にナチスが扇動・主導した「水晶の夜」と呼ばれる反ユダヤ主義暴動とも符合します。

 そうした危険は今の日本も無縁ではありません。ファシズムとポピュリズム(大衆迎合主義)には類似性があります。分かりやすい敵を攻撃し、これによって人々の欲求を発散させるという、ある種の「感情の動員」をめざす点です。

 もちろん、敵を攻撃するだけではありません。重要なのは、自分たち多数派の力を実感できるようにすること。ヒトラーは混乱を極めたワイマールの議会政治に代えて、強力なリーダーのもと一致団結したドイツ、「民族共同体」という理想社会を実現しようとしました。これを説得的に提示するため、党大会で壮大な式典を演出しました。

 ナチスによる演出は従来、うそにまみれたプロパガンダ(宣伝)と考えられてきましたが、そうした見方は「民族共同体」の実現に向けたナチスの努力、人々がそこに見いだした真正さを軽視しています。

 ドイツの国民はだまされて動員されたのではありません。自ら積極的に隊列に加わったのです。ナチスは労働者に休暇旅行を提供し、消費水準を向上させるなど、国民の願望を満たそうと努力していました。その結果、「民族共同体」は単なる幻想にとどまらない現実性を帯びることになったのです。

 国民の現実的な支持を得たファシズムをどう防ぐか。私たち一人一人の意識の持ち方も重要ですが、最後の歯止めは司法やジャーナリズムなどの選挙で選ばれない組織です。民主主義を存続させるには、非民主主義的な安全装置が必要なのです。

 (聞き手・大森雅弥)

 <たの・だいすけ> 1970年、東京都生まれ。専門は歴史社会学。博士(文学)。著書に『愛と欲望のナチズム』(講談社)、『魅惑する帝国-政治の美学化とナチズム』(名古屋大学出版会)など。

◆制御し続ける努力を 作家・深緑野分さん

深緑野分さん

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 ホロコーストを知ったのは幼稚園のときです。家の近くにあった教会の日曜学校で、牧師さんから聞きました。ユダヤ民族への迫害。強い恐怖を覚えました。なぜ、そんな恐ろしいことをする人たちがいたのか。でも、自分も同じ人間だから無関係ではないとも感じました。

 第二次大戦中のベルリンを舞台にした小説を出版することになり、昨年一月に現地へ取材に行きました。どこか緊張感が漂う街でした。銃弾の痕、壊れた建物も残っている。ユダヤ料理店の店先には常に警官が立ち、ユダヤ教会の目の前には交番がある。ネオナチを警戒しているのでしょう。冷戦と壁の崩壊。いろいろな時代に翻弄(ほんろう)された街という印象でした。

 ムソリーニがファシスト党をつくり、ファシズムという名前が付きました。しかし、それ以前からファシズム的な志向は存在しました。では、今はどうなのか。ファシズムは第二次大戦を象徴する言葉なので、終戦とともに消えたように思われがちですが、そうではありません。多分、私を含めて誰もがファシズム的志向の要素を持っていると思います。

 差別をしたい、極端な保守主義に走りたいという願望を人は誰でも持っています。差別をするという心の種を持っていること自体が悪いと批判する人がいます。しかし、それを消すことはできません。どうコントロールできるかにかかっています。

 人間は自信を失うと、ファシズム的なものが心地よくなります。誰かが叫ぶ。「私たちが苦しんでいるのは、あいつらのせいだ」。多くの人が同調し、熱狂の中で「あの人たちは敵ではない」という声はかき消されてしまう。より怖いのは、排斥を扇動した者が悪の化身というわけではなく、自分が正しいと心から信じている場合です。ヒトラーもそうだったかもしれません。

 アウシュビッツから生還したユダヤ系イタリア人作家プリーモ・レーヴィが書いています。平和と呼ばれているものは実は休戦状態でしかない。休戦を一日でも延ばすしかわれわれにできることはない-。

 ファシズムは今も私たちの隣にあります。ファシズムの誘惑に転ばないよう努力する。そこに陥っていないか繰り返し確認する。それが休戦を延ばすことにつながると思います。

 (聞き手・越智俊至)

 <ふかみどり・のわき> 1983年、神奈川県生まれ。書店に勤めながら執筆し2013年に『オーブランの少女』でデビュー。『戦場のコックたち』『ベルリンは晴れているか』が直木賞候補に。

◆国難で一気に加速も 慶応大教授・片山杜秀さん

片山杜秀さん

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 「ファッショ」はイタリア語で「束(たば)」です。天皇を「現人神(あらひとがみ)」として国民を束ねたという意味で、明治の国家体制はファシズムと適合的でした。

 しかし、いわゆる「日本ファシズム」が「未完のファシズム」に終わったのも、明治憲法に権力が分散する仕組みがあったためです。国会は貴族院と衆議院に分かれ、一方が法案を否決すれば即廃案。総理大臣の力は今より弱く、行政には枢密院という内閣のチェック機関もあった。陸海軍は天皇の直属です。近衛文麿は大政翼賛会をつくり、東条英機は総理大臣と陸軍の参謀総長などを兼職して、権力を束ねようとしたが、右翼から「天皇に畏れ多い。ファッショだ」と批判されました。

 それと比べると、現在の憲法の方がはるかに強力に権力を束ねやすい。議院内閣制で、国民が選んだ国会が、三権分立のうち立法と行政の二つを握ります。衆参両院で意見が分かれても、衆院優越の原則があります。

 冷戦後、権力の「束」はさらに強くなりました。まず現実主義の自民党と理想主義の社会党が対立した五五年体制が崩壊し、現実主義の政党ばかりになった。似たような価値観の政党ばかり。その中では、経験豊富な自民党が選ばれやすい。

 さらに「決められない政治」として派閥や官僚が批判され、「政治主導」の名の下に内閣人事局が設置され、内閣に官僚は抵抗できなくなった。今の内閣は各官庁の情報を吸い上げて力が肥大化し、戦前・戦中にはなかった強力なファシズム体制を実現させたと思います。

 政治主導を主張したのはリベラルな政治学者やマスコミも同じです。現在の「安倍政治」は勝手に出てきたわけではない。冷戦後の流れの中でおのずと出てきた一つの答えなのです。ヒトラーもムソリーニも、経済危機を立て直そうと出てきました。北朝鮮の動向や米中枢同時テロで「テロとの戦い」「常に危機だ」との論法が成立するようになり、米国や中国も個人情報の把握を正当化しています。

 治安や国防に加え、日本には津波や地震もある。国民に「危機」を訴える生々しい要素です。もし災害や経済危機など本当の「国難」が起きれば、安倍政治で準備されたファシズム的な方向に一気に進む可能性があります。「未完」ではない日本ファシズムが生まれるかもしれません。

 (聞き手・谷岡聖史)

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シナイ半島の多国籍軍・監視団への自衛隊員派遣に反対する声明

政府は4月2日、エジプト北東部のシナイ半島でエジプト軍とイスラエル軍の活動を監視する「多国籍軍・監視団(MFO)」に陸上自衛隊員2人を派遣することを閣議決定した。

シナイ半島の問題をめぐっては、第3次中東戦争でイスラエルがエジプトのシナイ半島を占領し、その後1979年に「エジプト・イスラエル平和条約」の締結を受けて、1982年からMFOが展開し、エジプトに全面返還されている。MFOの主たる任務は、両国軍の活動状況と停戦の監視活動としている。日本政府は1988年から、このMFOに資金援助を行っており、昨年度も約500万円を拠出している。

「多国籍軍・監視団」に自衛隊を派遣できるようになったのは、2015年9月に安倍政権が多数の反対世論を押し切り、強行採決した戦争法(平和安全法制)に関連する法律によるものだ。改正された国連平和維持活動(PKO)法で可能になった「国際連携平和安全活動」が初めて適用される。

従前のPKO協力法が、国連総会、国連の安全保障理事会の決議に基づいて、海外で自衛隊が活動するという縛りがあったのだが、国連が統括しない活動にも自衛隊が参加できるようにしたものだ。PKO参加5原則を満たすことが条件とはなっているが、この間の安倍政権の自衛隊の日報問題等を顧みるだけでも、約束が守られるかどうかはなはだ危うい。

今回の自衛隊2名の派遣について、岩屋毅防衛大臣は「人材育成の面でも大きな意義がある」と自衛隊員の教育を強調し、部隊の派遣については否定している。しかしながら、国連の関与しない他国籍軍に、自衛隊が参加する突破口となることに間違いはないだろう。それも、戦争法(平和安全法制)と一体のものである日米ガイドラインをアメリカと結び、シームレスに日米の軍事一体化がすすめられている現状では、アメリカ主導の戦争関連活動に自衛隊の部隊がかり出される危険が極めて高くなっている。

安倍政権は自衛隊員の命にどのように向き合うのか。自衛隊の現場からの重要な事実を覆い隠した日報問題を引き起こすような政権では、自衛隊員の命は守ることはできない。自民党の内部には、日報の公開そのものに自衛隊の活動の保全の点から異議を唱える議論も見受けられるが、全く逆だ。PKO5原則が順守されるのかどうか、また活動の経過で紛争当事国の状況が的確に把握され、それが公開されない限り、実質的なPKO5原則とのすり合わせはできない。命の問題でもあり、シビリアンコントロールを確実にするためにも必要なことだ。

平和フォーラムは、今回の多国籍軍・監視団への自衛隊派遣に反対を表明するとともに、戦争法に基づく米軍防護が拡大し、日米軍事一体化が進むことに強く抗議する。

 

2019年4月2日

フォーラム平和・人権・環境

事務局長 勝島一博

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3.19安倍改憲NO!発議NO!緊急集会

安倍改憲をなんとしても止めるため、憲法改悪を阻止するため、そして改憲発議をさせないために働く仲間、市民が緊急集会に決起し、安倍政権の打倒まで闘うことを金沢市民、観光客に訴えた。

主催 安倍改憲NO!市民アクション・いしかわ  場所 いしかわ四高記念公園

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被災65周年3・1ビキニデー全国集会

被災65周年3・1ビキニデー全国集会

2019年3月 7日

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■被災65周年3・1ビキニデー全国集会
3月1日、静岡市内の静岡労政会館において、「被災65周年3・1ビキニデー全国集会が」行われました。当日は全国各地から250名が参加し、原水禁運動の契機となったビキニ事件の風化に抗し、核廃絶に向けた想いを新たにしました。
集会は、川野浩一原水禁議長の挨拶で始まりました。川野議長は、安倍政権の憲法改悪への動き、直前の米朝首脳会談の不調などに対する危機感を訴えました。
地元静岡県平和・国民運動センターの渡邉敏明会長のあいさつの後、TBS「報道特集」キャスタ―の金平茂紀さんから「日本人と核」をテーマに講演をいただきました。 金平さんは、なぜ米朝首脳会談が共同声明もだせず、不調に終わったのか、長年の海外取材の経験からその舞台裏を解説していただきました。また広島・長崎への原爆投下以降、日本人がどのように核を認識してきたか、「平和利用」の幻想にからめとられていった過程が語られ、それが2011年3月11日の福島第一原発事故につながっていったと話されました。その上で「人類と核が共存できない」と訴えられました。
その後、静岡の第21代高校生平和大使の取り組み報告や「戦争させない1000人委員会・静岡」からの要請、地元焼津市をはじめ、静岡県、静岡市からのメッセージを紹介し、最後に集会アピールを採択し、ビキニ・デー集会は幕を閉じました。

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「連合通信」のメーデーへ行こう!ポスター

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3.11八周年「真っ先に廃炉にすべき志賀原発!」集会(添田孝史さん講演会)

添田孝史講演会チラシ

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-復興とは何なのか-(311八周年)

『原子力資料情報室通信』第537号(2019/3/1)より

福島はいま9年目に入ろうとして-復興とは何を言うのだろうか-

〈福島復興〉の声がかまびすしい。来年の東京五輪のせいがおおきい。福島はアンダーコントロールと公言して招致した手前もあって、政府は放射能禍が無かったことにしたい。それは、明らかに、被害者を切り捨てることだ。環境に放出された放射能のうち、半減期が約2年のセシウム134は、満8年して4半減期が経過した今日、(1/2)を4回掛けあわせて(1/16)に減った。しかし、セシウム137は半減期が30年なので、あと22年待たないと、(1/2)にならない。
そもそも、フクシマ事故は解明されたのか。事故後、世に4種の事故調報告書が出されたが、いずれも、未完である。しかし、国会事故調に加わった人たちの中に「もっかい事故調」グループができて、その後も事故の因果関係を明らかにする努力が続けられている。議論は新潟県技術委員会の場で公にされつつあって、検証総括委員会(池内了委員長)に有力な知見を提示するだろう。
去る1月末、日本原子力学会「未解明事項フォローWG」の山本章夫幹事は新潟県技術委員会に出席して、73項目に抽出された課題について調査結果の概要を報告した。それによれば-
A:合理的な説明がなされていると判断されるもの、45%
B:既存発電所の安全対策高度化や廃炉作業の進捗の観点から重要でないと考えられるもの、8%
C:重要度は高いが、現時点では、これ以上の調査が困難であるもの、4%
D:重要であり、今後も継続した検討が望まれるもの、43%
だという。本誌今号の石川徳春論文は、Dに属すると思われるが、原子力学会はAだと言うのかもしれない。新潟県技術委員会のメンバーとの今後の真摯な議論を望みたい。原子力学会の言い分を、そのまま受け入れることはできないが、CとDを合わせて、47%もある。あまく見ても、半分しか説明できていないというわけである。
放射能被害に関して幾つか重要な事実が浮かびあがってきた。
①伊達市における住民被ばくに関する分析論文で、住民の同意を得ないデータを用いて、しかも、線量評価が3分の1と低く見積もられていたことが、発覚した。すでにイギリスの専門誌に公表された論文である。また、この論文は放射線審議会における審議で資料として使われていた。
②事故直後、双葉町の11歳の少女が甲状腺等価線量で100ミリシーベルト(全身では4ミリシーベルト)被ばくしていたことが判明した。把握できていないが、ほかにも多数あったはずである。
③三春町では、県の指示に従わずにヨウ素剤を配布し、子どもたちに服用させたことが知られている。実際どうだったか。この1月の京都大学などの研究グループの発表によると、0~2歳児で約半数、3~9歳児で約3分の2だった。
④郡山市の放射能汚染の詳細が私家本『毒砂』(2017年12月刊)で明らかにされた。県職員として事故対応に奔走した故・安西宏之さんが2015年5月から8月にかけて、市内480か所の空間線量率を克明に測定したもの(資料紹介を参照)。
事故被害者たちの受けた底知れなく深い傷は金銭で償えるものではないが、それにしても、東電には責任をとる姿勢がない。浪江町、飯舘村などのADR集団申し立て事件で、東電が賠償金額に同意せず、仲介和解案を拒んだ。損害賠償の解決の見通しが立たない。東電が宣言していた3つの誓いに真っ向から反している。
東電の責任を問う福島原発被害者たちの集団訴訟は全国で約30提訴がされている。また、東京電力の元会長らに対する刑事訴訟は3月中旬の最終弁論で結審する。

あらためて問う。〈復興〉とは何を指すのだろうか。

*3つの誓い:①最後の一人まで賠償貫徹、②迅速かつきめ細やかな賠償の徹底、③和解仲介案の尊重

(山口幸夫)

 

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放射能はゼロでなければ安全とはいえない(レイバーネットより無断投稿)

「放射能はゼロでなければ安全とはいえない」~医学博士・崎山比早子さんが講演

2017年4月2日、医学博士の崎山比早子さん(写真)の講演会が、さいたま市で行われた。主催は「原発問題を考える埼玉の会」。埼玉県に避難している福島の人や、除染・原発作業に携わった経験者など、60名が集まり、熱気あふれる質疑応答が続いた。折しも、3月31日に浪江町、飯館村、川俣町、4月1日には富岡町が避難解除になったばかり。これによって、3万2千人が「自主避難者」となり、住宅提供や精神的慰謝料が打ち切られることになる。「帰れるんだから帰ればいいじゃないか」という人もいるかもしれないが、避難を解除する基準になっているのは“年間20ミリシーベルト以下”。それを正当化する学者や研究者が居座っていることを、崎山さんは「この国の病だ」と断じた。

●年間20ミリシーベルトの意味するもの

一般の人の被ばく線量限度は、年間1ミリシーベルトである。20ミリシーベルトは放射線作業従事者の年間線量限度である。放射線作業者が働く放射線管理区域に18歳未満は立ち入ってはいけないし、飲食、喫煙、就寝などはしてはならない。そもそも事故前には、65%以上の放射線作業者の数年から十数年間の平均累積被ばく線量は0・7ミリシーベルト、20ミリを超えた人は17%だという。放射線作業者が働くのと同じ線量下で普通の生活を帰還する人たち(子どもを含む)に強いるのが今回の避難解除なのだ。もちろん最初は、1ミリシーベルトの基準を目指し除染してきた。しかし、フレコンバックの耐用年数は3~5年。入っているのは土なので、草の根っこが袋を突き破ってしまい封じ込めることができない。3・11後、大気中や水に交じったヨウ素やセシウムで、関東は汚染されているのだが、6年たった今も、福島第一原発の敷地内には事故時に放出された800倍の放射性物質が滞留しているそうだ。これは広島の原爆の13万4千発分の死の灰に相当すると計算されている。

●健康被害の実態

崎山さんは、低線量被ばくのメカニズムを、医学博士の立場から説明した。はっきりわかったのは、遺伝子は傷がついても修復されるものだが、放射線による傷は複雑なのでなおしにくく、なおしても間違いやすいということだ。間違えるとこれががんの原因になることがある。

被ばく者にみられる疾患は、がんだけではない。『チェルノブイリ被害の全貌』(岩波書店)によると、消化器系疾患(慢性胃腸炎、胃潰瘍、肝炎等)、神経系疾患(頭痛、てんかん、学習障害等)、泌尿生殖器疾患(腎障害等)、循環器系疾患(心筋梗塞、脳梗塞など)多岐にわたり、同時に4~5種類の疾病にかかったりするのが特徴で、老化が早まったように見える。

検討委員会は「事故当時5歳以下の子どもからの甲状腺がんが見られないからチェルノブイリとは違う」と言い続けていたが、実は事故の時5才と4才の子どもも発症していた。4歳であった子どもは県立医大で手術を受けていたが、県民健康調査検討委員会に報告されていなかった。検討委員会も甲状腺がん患者が増えているとこと自体は認めている


*帰還政策を急ぐ政府のキャンペーン

●放射線教育の問題点

崎山さんは、「放射能の安全性に閾値はなく、ゼロでなければ安全とはいえない。これは科学者なら誰でも認めていること。にもかかわらず、『不安にさせてはいけない』という理由で公にしない。住民をあまりにも馬鹿にしている」と憤る。福島県内では環境省作成の『なすびのギモン』というパンフレットが、コンビニやスーパー、役所などに置かれている。ネットで観ることもできるし動画にもなっているのだが、ここには「100ミリ㏜以下では他の要因に隠れてがんの増加を証明することは難しい」等といったことが書かれている。また、放射線教育フォーラムの報告書には「原子力の安全性とは、つまるところ放射線の安全性に他ならない。」「現状を放置しておくと人々が僅かな放射線を恐れて、原子力の需要が進まず、エネルギー問題の観点から日本の前途が危うくなる」という記述があり、この価値観のもとに学校教育が行われているということだ。ベラルーシでは小学校に入学する前の子どもたちに、放射能の危険性や食べてはいけないものなどを教えているというのに、福島県では子どもたちに、手袋もマスクもなしで国道六号(福島第一原発から最も近い国道)の清掃をさせている。何ということだろう。

●不安を持つ人が追い詰められないように

会場には、いわき市から埼玉に避難しているお母さんが「甲状腺がんでアイソトープ治療が必要になった場合、将来子どもを産めるのか」といった切実な質問もあった。「福島県内の人は不安を感じていないようなので、県外に避難している自分が発信しないといけない」との思いを強く持っているという。崎山さんは、福島県以外でも甲状腺がんと診断された人のために「甲状腺がん子ども基金」を立ち上げた。「通院に交通費がかかったり、母親が仕事を休まなければならないといった問題を持つ人を支援するための基金だ」という。原発の危険性や放射線の影響については『よくわかる原子力』」というウェブサイトを作っているので、危険性を把握し、対策をたてるのに役立ててほしいと語った。

この報告を書いている矢先に、復興大臣の「原発自主避難は自己責任」発言が飛び込んできた。崎山さんの言葉で締めくくりたい。 「除染作業で数兆円をかけ、作業員を大量に被ばくさせても年間1ミリシーベルト以下にはならない。住民を安全なところに移住させても、数兆円なんてかからないのに。ICRPの放射線防護体系のどこにも、現在の被ばく線量よりも高いところに住民を移動させる政策は見当たらない。日本政府は放射線防護とは逆の政策をし、多くの研究者もそれを批判しない。自分たちの健康を守るためには一人一人が考え、決めていくことが必要。民主的で原発のない社会を築くのは、最終的には個人の力だ」。【有森あかね】

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–新防衛大綱と中期防–  2019.2閣議決定

–新防衛大綱と中期防–

装備や運用で専守防衛政策を突破
―「いずも」型護衛艦の空母化とミサイルの敵地攻撃化-    湯浅一郎    2019年2月28日

 2018年12月18日、政府は、防衛政策の基本指針となる新たな「防衛計画の大綱」(防衛大綱)と防衛大綱に則って2019年から5年間に調達する装備などを定めた「中期防衛力整備計画」(中期防)を閣議決定した。宇宙・サイバー・電磁波などの新たな領域と従来からの陸海空能力を合わせた「多次元統合防衛力」なる新たな基本概念を提示した。また、政策上は専守防衛の継続の姿勢を示してはいるが、護衛艦の空母化やスタンド・オフ・ミサイル導入によって、装備上の観点から見れば専守防衛を突破し、運用態勢にも航行領域の飛躍的な拡大を日常化することで、大きな疑問を残した。

■宇宙・サイバーなど新領域を重視■          
 防衛大綱は、1976年に基盤的防衛力構想として初めて策定され、今回が安倍政権下で2度目、通算で6回目になる。76年の基本概念は、「自らが空白となり、周辺地域における不安定要因にならないよう、必要最小限度の防衛力を保有する」という基盤的防衛力であった。その後、基本概念は、動的防衛力(2010年)、統合機動防衛力(2013年)と変わり、時代状況に応じて拡張の一途をたどっている。今回は、新たに多次元統合防衛力という概念が掲げられた。この内容については後述する。
 大綱は、Ⅱ「わが国を取り巻く安全保障環境」で、「情報通信等の分野における急速な技術革新に伴い」、「現在の戦闘様相は、陸・海・空のみならず、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域を組み合わせたものとなり」、また、中国や北朝鮮の動向を危機感をもって受け止め、「我が国を取り巻く安全保障環境は、格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増して」いると情勢を分析する。全体として大綱は、宇宙、サイバーなどの領域(ドメイン)を重視し、中国を強く警戒する姿勢で書かれている。これらは、2015年4月に合意された「日米防衛協力新ガイドライン」に沿った内容である。
 そのことは、Ⅲ「防衛の基本方針」において、防衛体制において強化すべきとして挙げられている3つの分野にも反映している。

  1. 宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域における能力を獲得・強化する。その上で、これらの新たな領域と、従来からの陸海空の防衛力を多次元に統合し融合させる領域横断作戦等を可能とする「多次元統合防衛力」を構築する。
  2. 新ガイドラインの役割分担の下、引き続き日米同盟を強化していく。
  3. 「自由で開かれたインド太平洋」というビジョンを踏まえて、防衛力を活用しながら、多角的・多層的に安全保障協力を推進する。

■核兵器中心の拡大抑止・日米協議の深化■
 核兵器政策については、Ⅲの前文で次のように述べている。
 「核兵器の脅威に対しては、核抑止力を中心とする米国の拡大抑止が不可欠であり、我が国は、その信頼性の維持・強化のために米国と緊密に協力していくとともに、総合ミサイル防空や国民保護を含む我が国自身による対処のための取組を強化する。同時に、長期的課題である核兵器のない世界の実現へ向けて、核軍縮・不拡散のための取組に積極的・能動的な役割を果たしていく。」
 13年の前大綱では「弾道ミサイル防衛」としていたが、今回は弾道ミサイル、巡航ミサイル、航空機などの経空脅威を総称して「総合ミサイル防空」に変わっているが、13年の前大綱とほぼ同じ文言である。
 しかし、重要な変化が見られる。日米同盟強化の文脈において「日米同盟の抑止力及び対処力の強化」の項目があり、その中で「拡大抑止協議の深化」が明記された。日米拡大抑止協議は2010年から定期化されているが、以前には、日本が米国の核巡航ミサイル廃棄に反対した秋葉文書が暴露された経過がある●1。拡大核抑止協議の深化は、日本が米国の核兵器やその使用政策に関与を深めることを意味するであろう。外交分野において日本の核兵器廃絶への努力どころか、核軍縮政策さえあいまいになっていることと合わせると、大綱の変更は注視する必要がある。

■中期防における主な装備品■
 同時に決定された中期防は、新防衛大綱に則して米軍との軍事一体化、さらにはトランプ大統領のディールに迎合した装備がいくつも盛り込まれた。報道され関心の高い装備が中期防でどのように書かれているかを以下に示す。

  1. 太平洋側をはじめ、「防空態勢を強化するため、有事における航空攻撃への対処、警戒監視、訓練、災害対処等、必要な場合にはSTOVL機●2の運用が可能となるよう検討の上、海上自衛隊の多機能のヘリコプター搭載護衛艦(「いずも」型)の改修を行う」。
  2. 上記に対応して、F35を45機、新規に購入し、そのうち18機は、短距離離陸・垂直離着陸機能を有する戦闘機とする(別表)●3。これが、改修された「いずも」型護衛艦に搭載される。
  3. 陸上配備型弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」2基を整備する。
  4. 相手方の脅威圏の外から対処可能なスタンド・オフ・ミサイル(JSM、JASSM及びLRASM●4)の整備を進める。
  5. 中期防の水準は、おおむね過去最高の27兆4700億円となった。

■専守防衛を破る「いずも」型護衛艦の空母化とスタンド・オフ・ミサイル■
 新大綱と中期防は言葉の上では専守防衛を守るとしている。しかし、実際には専守防衛を破る装備の導入や運用方法が示された。
 第一の問題は、「いずも」型護衛艦をSTOVL機を搭載できるよう改修し、事実上、空母化することである。改修後の「いずも」型護衛艦は、世界中のどこの海からも戦闘機を離発着させることのできる空母となる。
 18年12月18日、岩屋防衛大臣は記者会見で(資料1に抜粋)、専守防衛の保持は、専守防衛を越える装備・能力を持たないことによって担保するのか、もしくは政策として攻撃的な用途に使わないと担保するのかとの記者の質問に、岩屋大臣は、「専守防衛というのは憲法から導き出され、その考え方が今後変わることはない」と答えるとともに、「いずも」にSTOVL機は常時搭載せず、必要な場合にのみ運用するので専守防衛を逸脱しないと答えた。さらに攻撃型空母と見なされない担保はあるのかとの問いに、防衛大臣は、与党協議による修正により、常時搭載しないとすることによって攻撃型空母ではない担保になると説明した。一方、米軍機が離着陸する可能性について、緊急着陸や共同訓練ではありうるとしている。
 専守防衛の担保は3つの分野において必要である。①防衛政策・教義(ドクトリン)、②態勢(ポスチャー)と訓練、③装備の能力である。
 政府の政策として専守防衛を継続することは重要であり、大綱はそれを守ったことになっている。しかし、専守防衛を貫くためには、まずは「先制攻撃が可能な能力を持たないことで専守防衛を担保する」という原則をとるべきである。にもかかわらず大綱は、その点を大きく踏み外している。さらに、大綱は態勢において専守防衛を危うくした。常時搭載しないことは重要な態勢ではあるが、F-35という高度の攻撃能力を持つ装備を、必要時に搭載できるという態勢だけで専守防衛は揺らぐ。しかも、大綱は、インド太平洋派遣訓練に示されるように、自衛艦の平時からの海外プレゼンスを重視する方針を初めて打ち出している。航行範囲に制限をかけないまま、戦闘機が離着陸できる艦船を保有する態勢をとることは専守防衛の観点からしてはならないことであろう。
 第二の問題として、大綱はスタンド・オフ・ミサイルの整備を盛り込んだ。これは「島嶼しょ部を含む我が国への侵攻を試みる艦艇や上陸部隊等に対して、脅威圏の外からの対処を行うため」のスタンド・オフ防衛能力の強化として、敵の射程外からの長距離攻撃ができる巡航ミサイルである。今回ミサイルの射程距離について明らかにしてないが、小野寺・前防衛大臣は、記者会見(資料2に抜粋)で、ジェーン年鑑によれば、それぞれF-35に搭載するJSMが射程500km、F-15に搭載するJASSM及びLRASMはともに射程900kmであるとした。これらのミサイルを搭載した戦闘機は、防衛大臣はその目的を否定するが敵基地攻撃能力を持つことになる。上記の議論で言えば、③装備能力が専守防衛を超えることは否定できない。この間の自民党国防部会で敵基地攻撃能力の保有が主張されてきたことを重ねると、態勢や訓練の透明性が担保されない限り専守防衛の担保にはならないであろう。
 「いずも」空母化、スタンド・オフ・ミサイルのいずれにおいても、装備能力が専守防衛を明確に超えようとしている以上、運用態勢や訓練の情報公開による透明性を高める(例えば航泊日誌、訓練シナリオなどの情報公開など)ことなしに、専守防衛を担保することは困難になる。

注:
●1 本誌546-7号に関連記事。
●2 Short Take-off and Vertical Landing aircraft。短距離・垂直離着陸機。
●3 12月18日、政府は、F35は、将来的に147機体制とし、そのうち42機はSTOVL機能を持つ戦闘機とすることを閣議了解している。これらの文書には明記されてないが、STOVL機能を持つ戦闘機とはF35Bと見られる。
●4  JSM=対艦/対地/巡航ミサイルJoint Strike Missileの略称。JASSM=長距離空対地ミサイルJoint Air-to-Surface Standoff Missleの略称。LRASM=長距離対艦ミサイルLong Range Anti-Ship Missileの略称。

[資料1] 岩屋防衛大臣記者会見Q&A(抜粋)18年12月18日         
Q:日本の専守防衛というのは、専守防衛を越え得る装備・能力を一切持たないことによって、物理的に専守防衛を担保するという考え方なのか、もしくは用途を変えれば、他国の攻撃等、専守防衛を越えるものに使い得るけれども、日本の意思として、政府の政策として、そういう用途には使わないのだということで専守防衛を担保するのか?、つまり能力を持たないことで専守防衛を担保するのか、意思として専守防衛を担保するのかに関しての大臣のお考えは?。

A:専守防衛というのは憲法から導き出される、言ってみれば受動的な防衛の方針。その考え方が今後変わるということはない、変えてはいけないと思っている。軍事技術が想定以上のスピードで進んできている時に、どのような装備であれば専守防衛の枠内に入るか、あるいはどのような運用の仕方であれば専守防衛という枠内に入るか、ということは、常時検討して専守防衛という考え方・方針を逸脱することがないようにしていかなければいけない。「いずも」で言うと、先ほど申し上げたような運用の仕方であれば、それは憲法の精神や専守防衛の方針を逸脱するものではないと考えている。

Q:(前略)攻撃型空母と見なされないような運用をしっかりする歯止めの担保というのは、何か制度とか文書で作るお考えはおありでしょうか。

A:中期防の記述については、与党協議を通じて、一部修正があった。そこには、STOVL機の運用について (中略)具体的に記述をさせていただいたところでございます。当然、この方針に基づいて、運用をしていくということになりますので、これがしっかり歯止めになっていく。

Q:その中に「等」という言葉がある。今後、改修されたいずも型護衛艦に米軍機がそこから発艦したり、あるいは着艦することも可能性としてはあり得るのか。

A:例えば、米軍機が事故で緊急着陸する基地が周辺にない、そこに「いずも」型の護衛艦があるといった場合には、当然、救助のために緊急着艦を認めるということはあると思っておりますし、それから(中略)共同訓練の際には米軍の航空機が「いずも」から離発着するということはあり得ると思います。(後略)。

[資料2] 小野寺防衛大臣記者会見       2017年12月8日
 今般、一層厳しさを増すわが国を取り巻く安全保障環境を踏まえ、自衛隊員の安全を確保しつつ、わが国を有効に防衛するため、相手の脅威圏外から対処できるスタンドオフミサイルとしてF-35Aに搭載するJSM等を導入することとし、本日、防衛省として追加的に予算要求を行う予定です。(前略)スタンドオフミサイルは、あくまでわが国防衛のために導入するものであり、いわゆる「敵基地攻撃」を目的としたものではありません。(後略)。
(中略)
Q:JSM等の導入についてお伺いいたします。まず、JSM等ということは、他にも同様のミサイルを導入するのか、JASSM-ER等も指摘されておりますが、他にも検討をされているのでしょうか。
A:今回、追加要求で検討しておりますのは、F-35に搭載するJSM、F-15等に搭載するLRASM及びJASSMを導入することとし、そのために必要な経費を計上すべく、追加的な要求を行うと考えております。細かいことですが、よくJASSM-ERという言い方がありますが、今JASSMはこのJASSM-ERしか作っておりませんので、このERのことをJASSMと私どもは呼んでおります。
Q:関連ですけれども、それぞれのミサイルの最大射程距離についてはどのように分析をしておりますでしょうか。
A:ミサイルの射程距離は、これを明らかにすることになれば、わが国の具体的な防衛能力を露呈することになりますので、これは従来からお答えは差し控えさせていただいておりますが、その上であえて申し上げれば、例えばジェーンズ年鑑のような公刊資料によれば、JSMは約500km、JASSMは約900km、LRASMは約900kmと承知をしております。これはあくまでも、公刊情報ベースのものであり、自衛隊が導入した場合における実際の射程距離を示すものではありません。
Q:スタンドオフミサイルという言い方をされましたけれども、これはどのような定義で、どの程度の脅威圏外、距離という意味で使っているのでしょうか。
A:これは、私どもが想定しています相手の脅威圏外という考え方で装備するミサイルですので、スタンドオフミサイルと私どもは呼んでおります。
Q:JSMとLRASM、JASSMはそれぞれどのような運用の仕方を想定されているのでしょうか。
A:JSMについては、導入予定のF-35A、ステルスタイプの戦闘機ですが、これに装着する予定になります。JASSM、LRASMにつきましては、F-15に、これは機体の改修等が必要ですが、回収した上で装着する予定と私どもは考えております。

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