石川県平和運動センター活動方針(2001年度方針より抜粋)
【今年の視点】
1.雇用の不安や労働の不安、教育・福祉・環境の不安、そして食の安全性に関する不安や医療ミスの不安、犯罪被害の不安、年金の不安、交通事故の不安、子育ての不安・・・。
不安の種をあげればそれこそきりがないという今日の状況であるが、特に徹底した弱肉強食論にもとづく競争原理の導入、あるいは例外なき規制緩和の推進が私たちの雇用や労働、ひいては労働組合の存在と役割などに及ぼす影響は深刻化の一途をたどっている。企業と企業を徹底的に競争させ、競争に勝ち残った強い企業の力で経済を再生するというのが、小泉首相の唱える「聖域なき構造改革」、「新世紀維新」の本質で、多少の痛みをともなうこともやむを得ないと言うが、競争に敗れた企業は倒産し、中小企業や町工場は競争にさえ参加できずに倒産する。そして街は失業したサラリーマンで溢れかえるのが関の山である。
こうした中、私たちは強者の論理をいやおうなしに選択せざるを得ないところにまで本当に追い込まれているのだろうか。それともそれ以外に解決の糸口を見出すことが果たして可能なのであろうか。いずれにせよ、経営者に対する圧力、あるいは社会的圧力という労働組合本来の力と役割を回復し、これをいかんなく発揮できる環境づくりに努めねばならない。
2.憲法調査会における集団的自衛権導入論議と有事法制の検討、戦争を美化し肯定する歴史教科書改悪問題、憲法の精神をことごとく踏みにじる靖国公式参拝の強行、そしてそうした一連の動きのまさにシンボル的存在、モニュメントとして不気味に立ち続ける大東亜聖戦大碑。どれ一つとってみても、かけがえのない平和がかつて無い危機にさらされていることを痛感せざるを得ない今日の状況である。
そして彼らの行動は、いずれも自らの強い意思と信念にもとづいた「確信犯」の仕業であり、それだけに始末が悪いともいえるが、別の言い方をすればそれはそれで決して侮ることのできない確かな力である。
一方、それに対抗すべき私たちの側の運動は、まだまだ少数派というのが現実で、ともすると実際に始める前から無力感や敗北感、マンネリ感に陥ってしまうこともしばしばであるが、「未来から現在を見る」という発想のもと、自らの運動に揺るぎない自信と確信を持つことができれば、少数派であることを決して恐れる必要はない。
今、私たちに求められていることは、私たち自身がこの壁を乗り越える努力、自己改革を進めることである。まさに何事にも共通する「古くて新しい課題」だが、正念場にさしかかった現実をしっかりと直視し、確実な一歩をともに踏み出そう。
3.中央組織の弱体化が県組織の弱体化を喚起し、県組織の弱体化が地域組織の弱体化を誘発する。他方、地域労働運動の消滅・停滞が県組織や中央組織の停滞をもたらし、結果として労働運動全体が停滞する大きな要因となる。
まさに悪循環ともいえる今日の労働運動をめぐる状況であり、この点にこそ根本的な構造改革が必要である。もちろん、今日的な社会情勢・労働情勢からすれば、簡単に改革を成就することはそれこそ不可能に近いが、この点にメスを入れない限り労働運動の再生はあり得ないという意味であえて問題提起だけはしておきたい。
【組織的な取り組み】
●市民運動との連携強化をめざして
労働組合は市民運動に嫌悪感を抱き、逆に市民運動の側も労働組合を嫌うという一般的な傾向が無きにしも非ずだが、そもそも弱い者が分裂しているようではとても権力に対抗することなどできないわけで、ましてや事実上の自民党一党独裁という今日的な状況下においてはなおさらである。
そのような中、私たち平和センターに求められている役割は、平和・人権・環境などをテーマとした諸運動に関わる様々な団体やグループ・個人が集い、語らい、そして行動につなぐことができるような開かれた「広場」を提供することであるとの自覚にもとづき、引き続いて市民運動との連携・ネットワークづくりを強化・拡大していくこととする。
【大衆運動の取り組み】
1.反戦・平和の取り組み
偏狭なナショナリズムにもとづく国家主義的な動きが急速に強まっている現実を直視し、その危険性や不当性を広く県民・市民に訴える活動を展開したい。
具体的には、「聖戦大碑撤去の会」の活動をはじめ、憲法改悪、特に集団的自衛権の行使や有事法制の制定を許さない取り組み、人間の安全保障という考えを重視し、これ以上の軍事大国化を認めない取り組み、沖縄ピースツアーの継続開催など沖縄と連帯する取り組み、自由主義史観勢力の台頭を許さない取り組み、教育の反動化を許さない取り組み、戦争責任を認め、アジアとの和解をめざす取り組み、あらゆる差別を撤廃し、人権を確立する取り組みなどであるが、従来のようなスケジュール消化型運動ではない新しい運動スタイルを積極的に追求してみたい。
2.反基地の取り組み
沖縄問題の例をあげるまでもなく、基地問題というのは極めて限定的な地域課題として捉えられがちであるが、周辺事態法をはじめとした新ガイドライン関連法の成立によって、いわゆる「全土基地方式」がすでに定着しているという事実を見逃してはならない。つまり、小松基地はもとより、建設工事が進む能登空港や金沢・七尾をはじめとした県内の主要な港が、例え一時的ではあるにせよ軍事拠点になるという話である以上、決して他人事ではない自らの課題として基地問題を捉えることが大切である。
(1).さる6月29日に結審した小松基地爆音訴訟に関しては、県内における反基地運動のまさにシンボル的な闘いと位置付け、引き続き側面的な支援態勢を継続する。また、特に原告団員を有する産別との連携を強化し、裁判傍聴や各種集会への参加、さらには控訴準備などを進めることにしたい。
(2).小松基地航空祭や日米合同軍事演習などの中止を求める申し入れ行動、小松基地の騒音実態を告発する騒音調査や監視行動の取り組みを継続し、静かで平和な空の回復をめざす。
(3).全国基地問題ネットワークへの加盟を継続し、各地の情報交換と運動交流を図ることによって反基地運動の高揚をめざす。
3.脱原発の取り組み
脱原発という潮流が世界に広がる中、わが国は相次いで発生した核施設事故の反省もなく、新たな原子力長期計画のもとで核燃料サイクルを強行実施しようとしている。しかし、その実態は原発推進特措法の制定に象徴されるように、「札束で頬を叩く」ものでしかなく、圧倒的な国民世論の前にその限界性を示している。
しかし、核廃棄物の処理や老朽化による重大事故発生の危険性をよそに、今もなお52基もの原発が現実に稼動していることも事実であり、私たちは核燃料サイクルの中止、防災対策の充実と徹底、自然エネルギーへの大胆な転換などを求める運動に引き続き取り組んでいきたい。
(1).志賀原発
昨年と同様、1号機に対する監視を緩めず、不要な2号機建設中止の立場を堅持して、MOX燃料計画反対、運転・管理マニュアルの公開を求める運動、さらには核燃料の搬出入を許さない取り組みを展開する。
また、2号機差し止め訴訟についても支援を継続するほか、防災計画の見直しに関しては、引き続き県の訓練に対する調査活動と提言活動に取り組むとともに、「命のネット」をはじめとした周辺住民による自主防災運動への支援を強めたい。
(2).珠洲原発
昨年6月に施行された市長選挙の勝利をテコにして、立地可能性調査の早期再開をもくろんだ推進派であるが、その後の県議会における知事発言や周辺自治体首長による慎重発言、さらには起死回生を狙った「電源立地市民フォーラム」の頓挫等によって、調査再開はより遠のいたというのが珠洲原発に対する一般的な見方である。
しかし、貝蔵市長や自民党県連は依然として原発誘致に固執する姿勢を崩しておらず、一部で噂される使用済核燃料の中間貯蔵施設構想への転換ともあいまって、まだまだ予断を許さない状況にある以上、平和センターとしては現地の反連協やネットワークと引き続き連携しながら、監視の目を強めることにしたい。