2000年度活動方針

2000年度活動方針

一、今年の視点

1.競争と破壊の世紀であった20世紀が間もなく終了し、新しい21世紀を迎えるというまさに歴史の大きな転換期に私たちは存在している。時代の変革というビッグウェーブが、政治・経済・社会をはじめとしたあらゆる分野をのみ込み、「危機」と「混迷」、「不安」が新しい時代を象徴するキーワードになりそうな勢いだが、幅広い分野にわたる競争原理の導入、例外なき規制緩和の強行こそがこうした深刻な問題を引き起こす要因になっていることは間違いない。
特に労働分野においては、第145回通常国会における産業活力再生法の成立によって、企業の競争力強化という名のもとでのリストラ強化、失業者の増大や労働力の流動化に一層の拍車がかかるという状況(もちろん、弱い者いじめ、労働者へのシワ寄せといった感が否めない以上、こうした動きそのものに大きな問題があると言わざるを得ないが)の中で、私たち労働組合自体のあり方・方向性が今まさに問われようとしていることも決して例外ではない。

2.衆院選を経た今日の政局は、一見すると「なぎ」の状態を保っているようにも見えるが、一皮剥けば、来年の参議院選挙を視野に入れた次期総理をめぐる水面下での駆け引きがすでに開始される一方、若手議員を中心とした超党派的な世代交代のうねりが表面化するなど、それこそいつ何が起きてもおかしくないという意味で、極めて不安定かつ不正常な状態に陥っていると言わねばならない。
 自公保という今日の連立政権の枠組みもまた同様であるが、自自公政権以降、政治の反動化や国家主義的な動き、特に憲法調査会の設置に象徴される改憲の動きが一気に強まるとともに、市場原理至上主義という経済が福祉の切捨てや雇用不安を増大させ、国民生活や将来への不安を一層増幅させてきたという事実を私たちは決して見逃すわけにはいかない。
 来るべき21世紀は、「国家」ではなくて国境を越えた「人」が主役になる時代だとも言われているが、その担い手たる私たち自身がしっかりと意識改革を行い、まさに政治の主人公に相応しい役割りを果たすことが何よりも大切である。

3.JCO事故を契機とした脱原発の大きなうねり、沖縄問題に象徴される反基地運動の全国的な高まりといった追い風が吹くという今日的な状況であるが、そうした風をうまく活かすどころか、むしろそれに反比例する形で私たち労働組合における反戦・平和運動が年々弱体化しているという現実を直視しないわけにはいかない。
 もちろん、雇用不安やリストラさらにはサービス残業の連続で、とても平和運動どころではないといった状況があることも否定できないが、一方で、政治の民主化や環境保護などをめざす市民レベルの運動が着実な広がりを見せているという状況があることも事実であり、こうした市民運動との連携、目的を同じくする諸グループや個人とのネットワークづくりを進めることも大切な課題である。
 いずれにせよ、この国の現状を見るとき、例え苦しくても誰かがどこかでしっかりと声をあげることが何よりも大切だし、本当にそういったことがないと、取り返しのつかない方向に突き進んでしまうことは間違いないだろう。

4.県レベルにおける選挙運動の連合への一元化が実現し、中央→地方→地方と続く一連の共通課題はいよいよ最終段階を迎えようとしている。同時に、選挙活動への一元化がゴールでないことは繰り返し述べてきたところであるが、運動課題を放棄する、あるいは消滅してしまう形での一元化ではなくて、逆に諸先輩から引き継いだ運動の精神を可能な限り継承する形での一元化が望ましいことは言うまでもない。
 運動の継承・発展と、連合への一元化実現。一見すると矛盾する命題のようでもあるが、地域組織の再編・整備問題と合わせ、全力で行動展開する中から活路を見いだすという視点で取り組みを進め、段階的かつ着実な連合への一元化実現を目指していきたい。
 そう、今年度はまさに「一元化元年」の年である。

二、具体的な活動方針

1.組織的な取り組み
(1)段階的かつ着実な一元化をめざして

昨年7月の「盗聴法、国旗、国家法を考える集会」の開催、そして今年8月の「沖縄平和集会」の開催、さらには大東亜聖戦大碑に関する抗議のアピールの採択など、まだまだ問題の捉え方に若干の違いはあるにせよ、連合石川の名前で標記の集会に取り組んだという事実は、全国的な連合の動きの中でもと特記すべき事柄であろう。
私たちの主要な運動課題である反基地や脱原発の取り組み。それぞれ自衛隊違憲論や原発不要論といった本質論・基本論を曲げないことももちろん大切だが、はじめから上段に構えるのではなく、「騒音問題」や「事故の危険性」、あるいは「住民の合意」や「安全性の追求」といった一致できそうな部分から問題を組み立てるというパーシャル連合(部分的・政策的連合)の道を追求し、運動の広がりを図るという視点も同様に大切なのではないか。
よって、日常的な意見交換や情報交換を連合との間で進めるとともに、各種申し入れ行動をはじめとした共同行動の展開を積極的に追求し、連合運動への段階的かつ着実な一元化をめざすことにしたい。

(2)市民運動とのネットワークづくりを

 運動の裾野を広げ、課題の前進を図るうえにおいて、各種市民グループなどとの連携、ネットワークづくりは極めて有効な手法の一つである。同時に、今日のように個々人のニーズが多様化し、一つの尺度で物事を計ることができない時代にあっては、まさにアンテナの高さ=情報量が物をいうことは確実であり、そうした観点からしても今年度は市民グループなどとの交流や連携を意識的に追求してみたい。
 なお、その一環として、県組織検討部会からの答申を踏まえ「賛助(個人)会員」制度を早急に導入する前提で協議を開始することとするが、第一次案は以下の通り。

賛助会員制度(第一次案)
1. 当面の呼びかけ対象
すべての個人に門戸を開くというのではなく、当面は労組OB、学者、弁護士、各級議員、政党役職員、すでに連携実績がある市民運動組織・グループの活動家などに限定する。
2. 賛助会員の位置付け
 その名が示すとおり、新組織の活動を運動(活動提言など)および財政の両面で支えていただくイメージ。(選手ではなく、あくまでサポーター)
 よって、権利としては各種催し物の案内や参加、総会へのオブ参加、機関誌等の送付・購読、活動に対する助言・提言などに限定。義務としては、会費納入のみとする。(年会費一口3,000円程度を想定)
 資格については、「運営委員会の承認」をその条件とする。

(3)地域組織の再編・整備に向けて

  規約上の上下関係はないが、各単組協議会との支持・協力関係は県組織にとって欠くことのできない貴重な財産である。しかし、全国的な流れの中で、前述したような様々な問題が発生あいてきていることも事実であり、現状の地域運動を維持し、さらに活性化させるという観点に立てば、何らかの抜本的な改革が必要であることは言うまでもない。
 この問題に関しては、すでに地域組織検討部会が中心となって一定の考え方・指針をまとめたところであるが、もちろん相互の自主性を尊重しつつ、来春の各単組協総会における組織改編の完成に向けて、具体的な協議を開始する。

2.大衆運動の取り組み
(1)反戦・平和の取り組み

 わが国の平和がかつてない危機を迎えているという共通認識にたって、まさに「平和運動センター」の名称に相応しい活動をこの一年間全力で展開したい。
 具体的には、軍事ではなくて「人間の安全保障」実現をめざす取り組みが基本となるが、憲法調査会の動きを視野に入れた護憲の取り組み、周辺事態法も発動を阻止し有事法の制定を許さない取り組み、特に学校現場における日の丸・君が代の強制を許さない取り組み、沖縄と連帯する取り組み、戦争美化を許さない取り組みといった個別課題に関する学習活動を継続することと合わせ、必要に応じて大衆集会なども計画・実施し、県民へのアピールと運動の広がりをめざす。

(2)反基地の取り組み

① 大詰めを迎えた小松基地爆音訴訟(早ければ2月~3月の間に結審。結審から3ヶ月程度で判決。いずれにせよ、今年度中に判決が出ることだけは確実)に関しては、原告団や弁護団、さらには小松能美、加賀江沼両単組協と引き続いて連携しながら側面的な支援体制を継続し、裁判闘争の勝利をめざす。
② 小松基地航空祭や日米合同軍事演習などの中止を求める各種申し入れ行動、小松基地の騒音実態を告発する騒音測定調査や基地監視行動の取り組みを継続し、静かな空の実現をめざす。
③ 全国基地問題ネットワークへの加盟を継続し、各地の情報交換と運動の交流を図ることによって、反基地運動の全国的なネットワークづくりをめざす。

(3)脱原発の取り組み

 大口電力の自由化の開始、世界各国でと日本国内でも各産業・企業レベルで脱原発・新エネルギーの転換が急速に進んでいるにもかかわらず、日本政府は原子力政策の全面的な転換を先送りし、核燃料サイクル政策の破綻と国民への矛盾のシワ寄せを強めている。このため、使用済核燃料=核のゴミ問題と、現に稼動している原発を中心とした原子力施設の事故の危険性がさらに深刻な問題となっている。私たちは、52基もの原発が稼動している現実を直視し、末期症状を呈する国策=核燃料サイクル政策の中止を求める運動と、立地地域の原子力政策の徹底を求める運動を強化しなければならない。
① 能登(志賀)原発
1号機に対する監視を緩めず、2号機増設反対の立場を堅持して、核燃料輸送やMOX燃料計画反対、マニュアルの公開を求める運動に引き続いて取り組む。2号機差し止め訴訟についても、恒常的な運動の一環として支援していく。また、防災計画の見直しについては、引き続き県の訓練に対する監視行動と提言活動を行うとともに、周辺住民の自主防災運動に対する支援を強めていきたい。
② 珠洲原発
貝蔵市長ら推進派と自民党は、立地可能性調査の早期再開に向けて知事への圧力を強めている。3電力(関電、中電、北電)の足並みは必ずしも揃っていないが、すでにゼネコン5社を使って広大な土地を隠密裏に取得しており、原発だけでなく中間貯蔵施設などの動きも懸念される状況である。
推進派は今秋末を頃を大きな山場として決着をつけようと必至である。(次の統一地方選挙まで調査を引きずらないという考え)事前調査再開阻止に向け、地元の単組協議会、反連協、珠洲原発反対ネットワークへの支援を引き続き確認するとともに、現地支援だけでなく、情勢によっては県都・金沢における行動展開も考えていきたい。

(4)関係団体との共同行動

 青年・女性運動連絡会、社会法律センター、食とみどり・水を守る県民会議、自治研センターなどに関しては、今後とも密接な連携を図りながら課題の前進に全力をあげる。また、単組協議会代表者会議などを随時開催し、意見交換と運動交流を図りながら全体的な活動の底上げをめざす。

(5)その他

① 各単産が抱える諸問題などに対する相互理解を深める意味で、懇談会等を適宜開催し、密接な連携、さらなる共闘関係の強化をめざす。なお、必要に応じて議員団や弁護団にも協力を求め、問題の解決・前進に最大限努力する。
② 積極的な行動展開と合わせ、機関誌の発行・配布をはじめとした教宣活動を強化することによって、運動への理と広がりを追求する。
③ 「くらしの相談」活動などを継続し、組合員の皆さんに対する世話役活動の推進に全力をあげる。