抗議声明 トリチウム汚染水(ALPS 処理水)の海洋放出に反対する

抗議声明
トリチウム汚染水(ALPS 処理水)の海洋放出に反対する

2021 年 4 月 13 日
石川県保険医協会
会長 三宅 靖

東京電力福島第一原子力発電所の事故発生から 10 年を迎えたが、県や周辺地域の復興は道半ばであり、今なお避難生活を強いられている人が多数存在する。加えて、新型コロナウイルスの影響により更なる暮らしの不安が広がっているが、それでも復興への懸命な努力が続けられている。
こうしたなか、政府が本日の関係閣僚会議で、東電福島第一原発のタンクにたまる汚染処理水の海洋放出を正式決定したことに、驚きと怒りを隠せない。
この処理水にはトリチウムとその他の放射性物質が残存すると言われているが、ALPS で除去しきれないトリチウム以外の放射性物質が 7 割のタンクで残存していることも報道で明らかにされている。一方、その処分方法をめぐっては昨年 2 月に政府の小委員会が基準以下の濃度に薄めて大気放出か海洋放出する案を報告書にまとめ、政府は海洋放出が現実的との結論を出していた。
これに対し、漁業関係団体は猛反対し、福島県では県議会のほか 7 割を超える市町村議会で反対や慎重な対応を求める意見書や決議が採択されている。また、政府が行った意見聴取でも、様々な団体・個人から多数の反対・慎重意見が寄せられていた。
海洋放出は、環境や人体への影響だけでなく、地場産業などに与える影響も計り知れない。
東電は、放射性物質の濃度を法令基準以下になるまで希釈するというが、希釈するにしても放射性物質による海洋汚染は免れず、原発事故の被害を増幅させることにつながる。
また、政府の小委員会は先の報告書の中で、「国民の理解の促進を図り、具体的な風評被害対策を示すことが重要である」と注文を付けていたが、政府は先送り以降、この努力すら怠っている。地元・国民軽視、民主主義に反して行われる海洋放出決定は、決定プロセスの観点からも容認できない。
そもそも、本当に海洋放出しか選択肢がないのか。福島第一原発の敷地内には、廃炉作業に活用する予定がない場所があり、タンク保管敷地を広げることは可能と言われている。トリチウムの半減期は 12、3 年であり、陸上での長期保管には放射線量を低減させる利点もある。汚染拡大を防ぎ、漁業をはじめとする産業を守るためにも、陸上長期保管が合理的選択と言えよう。
以上、石川県保険医協会は命と健康を守る医師・歯科医師の立場から、トリチウム汚染水の海洋放出に断固反対し、決定の撤回を求める。

石川県保険医協会ホームページより無断転載

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