「新型コロナウイルス感染拡大」に乗じた
人権制限=「緊急事態宣言」に反対する声明(3.12)
安倍内閣は10日、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(以下、特措法)に「2年を限度に新型コロナウイルスを加える」改正案(以下、改正案)を提案しました。このことは、この間の安倍政権による「新型コロナウイルス対策」の失敗の批判をかわし、特措法にある「緊急事態宣言」を活用して首相の指導力を誇示し乗り切ろうとする政治的意図を感じざるを得ません。13日には成立が予想されていますが、その内容から極めて危険な法律であると言わざるを得ず、私たちは断固反対します。
特措法では、緊急事態下での行政権の強化と市民の人権制限は、内閣総理大臣が「緊急事態宣言」を発することによって可能となっています。
要件は、「新型ウイルス感染が全国的、急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがある」場合、首相が緊急事態を宣言できるという抽象的であいまいなものとなっており、具体的なことは政令に委ねています。発動や解除については、内閣総理大臣はそれを国会に報告するだけでよく、国会の事前はおろか事後の承認も必要とされていません。これでは、国会による行政へのチェックは骨抜きになり、政府や内閣総理大臣の専断、独裁に道を開くことになってしまいます。
緊急事態が宣言されると都道府県知事に規制権限を与えられ、みだりに外出しないことや感染の防止に必要な協力を住民に要請することができ、学校、社会福祉施設、興行場など多数の者が利用する施設についてその使用を制限し、停止するよう施設の管理者に要請し、指示することができることや、開催者に催物の開催を制限し、停止するよう要請し、指示することができます。
外出については、自粛の要請にとどまるとはいえ、憲法によって保障された移動の自由を制限するものであり、要請にとどまらず指示という形での規制も加え、強制の度合いがさらに強められ、憲法上、とりわけ重要な人権として保障される集会の自由や表現の自由が侵害されることになります。
また、NHKは、他の公共的機関や公益的事業法人とならんで指定公共機関とされ(民放等の他の報道機関も政令で追加される危険がある)、新型インフルエンザ等対策に関し、内閣総理大臣の総合調整に服すだけでなく、緊急事態宣言下では、総合調整に基づく措置が実施されない場合でも、内閣総理大臣の必要な指示を受けることとされている。これでは、報道機関に権力からの独立と報道の自由が確保されず、知る権利も保障されないことになります。
さらに、知事は、臨時の医療施設開設のため、所有者等の同意を得て、必要な土地、建物等を使用することができるが、一定の場合には同意を得ないで強制的に使用することができる。これも私権の重大な侵害であり、憲法が保障する財産権にも深く関わるものです。
これらは、安倍政権が、憲法「改正」論議が進まないなか、「緊急事態宣言」を活用して「先制的に適用」する、まさに「明文改憲」の先取りと言わなければなりません。今回の特措法「改正」は、「コロナ禍」を活用した人権・私権制限に道を開く「独裁条項」であり、組織の総力をあげて反対していくことを表明します。
2020年3月12日
石川県平和運動センター