岸田総理の原発政策方針転換表明に対する抗議声明
岸田総理は8月24日、脱炭素社会の実現に向けた「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」において原発の新増設や建て替えの検討を進める考えを示しました。さらに原則40年、例外60年の運転期間のさらなる延長の検討や再稼働の加速に向け国が前面に立っていく決意も表明し、原発回帰の姿勢を鮮明にしました。福島事故後、安倍政権を含めた歴代政権は「新増設や建て替えは想定していない」とし、曲がりなりにも「原発依存を低減する」方針を掲げ続てきましたが、今回の岸田発言はこの間の政府方針を一気に転換させるものです。原発依存を長期化させ、将来世代に残る負の遺産をさらに深刻化させる重大な過ちであり、私たちは以下の理由により抗議し、ただちに撤回を求めます。
- 福島第一原発事故の教訓を反故にするもの
社会や自然環境に甚大、深刻な被害を及ぼした事故から12年目に入りましたが、いまだ緊急事態宣言は発令中であり、事故原因の究明は道半ば、廃炉作業の見通しも立っていません。多くの住民が故郷を追われ、生業を失い、家族を引き裂かれ、賠償も不十分なまま。多くの子どもたちが小児甲状腺がんを患い、悲痛な声をあげていますが、岸田総理は事故の教訓に真摯に向き合う姿勢が微塵もありません。
- 求められる政策転換に逆行
高レベル放射性廃棄物の最終処分は行き詰まり、核燃料サイクルは頓挫し、使用済み核燃料は溜まり続け、保管されるプルトニウムにも国際社会から厳しい視線が向けられています。廃炉が決まった24基の商業用原発の廃炉作業も課題山積です。ロシアのウクライナ侵略は原発への武力攻撃のリスクも顕在化しました。原発依存に未来はありません。脱炭素にも電力需給逼迫の解決にも役立ちません。いま求められるのは再生可能エネルギーのより一層の推進や需給調整のための仕組みづくりです。
- さらなる安全軽視と懸念される圧力行政
「GX実行会議」が想定する新規建設原発は「次世代型原発」と呼ばれるものです。長年にわたる開発の歴史はありますが、いまだ技術的裏付けはなく、経済性を疑問視する声も根強く存在します。安全軽視でコスト削減という原子力開発の歴史が繰り返されるのではと危惧されます。さらなる長期運転の検討も電力業界のコスト高対策に応えたもので安全確保は二の次、そもそも40年超運転すら危険です。再稼働が進まないのはテロ対策の不備や避難計画の不備、電力会社の説明不足などが主要な要因であり、今後、規制委や関係自治体への圧力、安全審査の手抜きが懸念されます。
- 非民主的政策決定
今回の唐突な政策転換表明に多くの国民は驚きました。7月の参議院選挙に臨む自民党の政策集をみても「安全が確認された原子力の最大限の活用」とはありますが、新増設には触れておらず、選挙期間中の岸田総理の発言も同様でした。直近の国政選挙で国民に争点を提示せず、原発推進の産業界や電力会社の幹部も加わった非公開の「DX実行会議」で重要な政策転換を図る非民主的で姑息な手法は到底国民の理解を得られるものではありません。
2022年8月29日
さよなら!志賀原発ネットワーク
志賀原発を廃炉に!訴訟原告団
石川県平和運動センター
原水爆禁止石川県民会議
社民党石川県連合