福岡高裁那覇支部による「国の関与取り消し訴訟」判決に抗議する声明

沖縄県による辺野古埋め立て承認撤回を取り消した国土交通大臣の裁決が、「違法な国の関与」であるとして、沖縄県が7月に国を相手に提訴した「国の関与取り消し訴訟」について、10月23日、福岡高裁那覇支部は、沖縄県の訴えを却下した。判決では、沖縄県の主張に正面から向き合うことなく、「裁決は国の関与から除外され、訴訟の対象となりえない」として、訴えをことごとく却下した。まったくの不当な判決であり、強く抗議する。

裁判では、本来、私人の権利を救済するためにつくられた行政不服審査法を、国の機関である沖縄防衛局が利用したことについての適法性について争われた。公有水面埋立法では、国が都道府県知事から埋め立て権限を得る場合は「承認」であり、国以外のものは「免許」として別な制度を設けている。このことからも、行政不服審査制度は本来、「承認」という特別な権限をもつ国の機関が利用できるものではないとの沖縄県の主張は、正当なものと言える。

しかし、福岡高裁那覇支部は行政不服審査法について「国の機関と一般私人とを区別することなく同様に扱うことが予定されている」として、国土交通大臣の裁決は違法ではないとした。国の機関による行政不服審査法の利用が認められれば、国は地方の意思を無視して、国の政策を強引に推し進めることができるようになりかねない。この判決は、辺野古新基地建設の違法性の問題にとどまらず、まさに地方自治の否定・破壊であり、決して許されるものではない。

さらに判決は、国が私人と同様に承認撤回処分を受けたことや、普天間飛行場の移設にともなう埋め立て事業を推進した内閣の一員である国土交通大臣による裁決だとしても「中立的判断者たる審査庁の立場を放棄していたということはできない」などとして、沖縄県の主張を全て退けた。本来、中立的な立場で判断を下すべき司法が、完全に国の強引な政策に追随していることは、極めて問題である。

辺野古新基地建設については、選挙をはじめとしたさまざまな形で建設反対の沖縄県民の意志が示されている。さらには、軟弱地盤の改良工事を可能とした防衛省の報告書が、大規模地震を想定していないずさんな報告書であることが明らかになるなど、ますます工事の不当性がはっきりとしてきている。このようななかでも、司法と一体になって、なにがなんでも工事を強行しようとする国の姿勢には、怒りを禁じえない。

本判決に対しては、沖縄県は今後、上告を予定している。また、同時に8月に那覇地裁に提訴されている「行政事件訴訟法」に基づく裁判も進行中である。平和フォーラムは、これら裁判の動向を注視するとともに、さらに全国で、辺野古新基地建設の撤回をもとめ、たたかいを強化していく。

2019年10月24日

フォーラム平和・人権・環境

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