朝鮮学校差別を容認する東京高裁判決に抗議する

朝鮮学校差別を容認する東京高裁判決に抗議する

フォーラム平和・人権・環境

共同代表 藤本泰成

 10月30日、東京高裁(阿部潤裁判長)は、高校支援金制度の朝鮮高校への不適応を違法として、東京朝鮮中高級学校の元生徒61人が国を提訴した訴訟の控訴審において、請求を棄却した1審・東京地裁判決を支持し、元生徒側の控訴を棄却する判決を言い渡した。

 平和フォーラムは、地裁判決を覆し一転原告敗訴とした9月27日の大阪高裁判決と同様に、民族教育の権利を否定し日本で生活する子どもたちの学ぶ権利を剥奪する当判決を決して許さない。

 公判において裁判長は、異例とも言える時間を割いて国側に対し、①文部科学省が朝鮮高校の支援金需給に関して審査が行われていた2013年の2月20日、「公立高等学校に係わる授業料不徴収及び高等学校等就学支援金の需給に関する法律(以下高校支援金制度)施行規則第1条第1項第2号ハ」の規定を下村博文文部科学大臣(当時)が省令によって削除したこと、②根拠規定の「ハ」が削除された同日付で、適正な学校運営を認めるに至らないとして規定第13条に基づき不指定とする旨が決定され、翌日朝鮮高校に送付されていることの矛盾を正すよう迫っていた。

 そのような訴訟指揮を執りながら、一転して判決では、①の違法性には触れず、文科大臣の判断は不合理とは言えず、裁量権の逸脱はないとした2017年9月13日の東京地裁判決を踏襲し、請求棄却の判決を出した。高校支援金制度は、日本国内で生活し学ぶ全ての子どもたちを対象としている。その意味では「ハの削除」は違法と言える。文科省は、そもそも、その規定をもって指定の是非を審査していた。下村文科大臣は、就任直後の2012年12月26日の記者会見において、拉致問題の進展がないことや朝鮮総連との密接な関係があり教育内容、人事、財政にその影響が及んでいるなどと主張し、高校支援金制度からの排除を示唆していた。その結果としての「ハの削除」であり、審査を行う以前に政治的理由をもって不指定が決定していたことは明白といえる。

 弁護団は、裁判長の訴訟指揮から正当な判決が下されることを大いに期待していた。最後に覆ったのは、政権の圧力なのか裁判官の忖度なのか、憲法と法に基づいて社会正義を守る裁判所の意義は失われつつある。

 朝鮮半島では、南北首脳会談、朝中首脳会談や米朝首脳会談が行われ、朝鮮戦争終結や半島の非核化などに動きだし、融和の雰囲気が漂っている。がしかし、日本政府は、その対話の中にはいない。高裁判決と同日、韓国最高裁は、日本が植民地としていた当時、韓国から動員され日本で働いた元徴用工の賠償請求を認める判決を出した。また、韓国外交省からは、日韓慰安婦合意に基づいて設立された「和解・癒やし財団」を解散する考えが示されていると報道されている。日朝・日韓関係は、戦後70年以上を経過してもなお侵略戦争と植民地支配の過去を引きずっている。日本政府の戦後補償に対する強引な姿勢とゆがんだ歴史認識、そして在日コリアンに対する差別意識が、その解決を遅らせていることは間違いない。

 平和フォーラムは、東京高裁判決に対して、その差別性に強く抗議し、日本政府に対して朝鮮学校への高校支援金制度の即時適用を求めるとともに、侵略戦争と植民地支配の反省にたって、多文化・多民族共生社会へのスタートを切るために全力を尽くす。

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