西尾正道氏、ICRPは原子力国際マフィア、トリチウムは心筋系疾患を招く(岩上安身氏インタビューより)

ICRPは「原子力国際マフィア」

(岩上)「そのICRPという組織は何なのですか。3.11以降、あらゆる場面で、ICRPの示した数字が政治的にも科学的にも正しい、と国民に押しつけられています」

(西尾)「その前に補足を。7シーベルトの全身被曝で死ぬと言われるが、体重60キロの人が7シーベルトを受けると420ジュール、熱量換算すると100カロリーでしかない。放射線の吸収線量の定義になると、物理学と生物学の共通基準になっていないのです。

ICRPとは、1928年、医療被曝の問題から医者を中心に議論の場を作ったのが始まり。それが1946年、NCRP(米国放射線防護審議会)が組織を乗っ取り、メンバーも医者ではなく、原爆のマンハッタン計画に関わったような研究者が過半数を占めるようになりました。

原子力利用のための被曝研究組織となり、第1委員会が外部被曝、第2委員会が内部被曝を担当した。しかし、ICRPは公的な組織でもない任意団体です。そして、1952年に第2委員会を潰した。もし、内部被曝の報告が出てきたら、原子力政策が行き詰まるからです。

当時、内部被曝の委員長は、放射線保健衛生の父と言われるカール・モーガン氏。2003年、自著で『ICRPは、原子力産業界の支配から自由ではない。原発事業を保持することを重要な目的とし、本来の崇高な立場を失いつつある』と批判しました。

1952年から、ICRPは、防護や安全への投資に金のかかる内部被曝を隠していました。日本の放射線影響研究所も、1989年に内部被曝の研究を一切中止した。隠すということは、ある人たちにとって都合が悪いから。内部被曝の深刻さを隠したいのです。

胎児は放射線の感受性が高く、遺伝的な影響が一番深刻だから、逆に、ICRPは『遺伝的影響はない』と、あたかも権威があるように言う。デタラメな集団です。

ICRPは民間のNPO団体で、原子力政策を推進する原子力国際マフィアなんです。医者たちは、その指針に従う御用学者になってしまった。西側の国だけではなく、東側の国家も同様です。御用学者は、お金で報告書を書くようになっています。

ICRPは都合のいい論文を集める。チェルノブイリ25年記念で出版された本にも、ICRPの論文が300くらい入っている。2011年、日本のある物理学者が内部被曝の論文を書いたが、日本物理学会は拒否した。学問体系そのものを、原子力ムラが牛耳っているのです。

ICRPは研究も調査もせず、都合のいい論文、報告書を書いているだけの団体。実は、国連安保理が絡んでいるIAEAが一番権力を持ち、ICRPはその下部組織。1959年、IAEAはWHOと連帯し、WHOが把握した健康被害を勝手に発表させないようにした」

ICRPはいかなる点で間違っているのか

(岩上)「IAEAは、国際原子力機関。核保有国の原子力推進を保持する一方で、他国に核を保有させない力も持つ。その上に、国連安保理が絶大な力で存在していますよね」

(西尾)「ICRPは民間団体。宗教団体と同じで何とでも言える。だが、現実には逆らえず、1949年に一般人に対する線量限度を年間44ミリシーベルトから1ミリシーベルトまで下げた。日本政府は、そのICRP勧告まで無視し、年20ミリシーベルトにしている」

(岩上)「日本の、年20ミリシーベルトの根拠がわからない。それに、ICRPが科学的に正当性を持ち、裏付けのあることを言うならわかるが、それがないのに従っているのは、おかしいのではないですか」

(西尾)「ICRPが決定的に間違っているのは、放射線を気体として計測していること。気体ではない形で放射線が存在することを想定せず、『セシウムはガンマ線で、粒子ではない』と言う。しかし、セシウムはマイナスを帯び、物質を引き寄せ、粒子化するのです。

福島で鼻血問題が起こりましたよね。気体か微粒子か、また、そのサイズによっても人体影響はまったく違う。だから、『500ミリシーベルト以上浴びて骨髄がやられないと鼻血は出ない』と主張するICRPの理論は破綻しています。

本来、今の福島で法律を守って生活するには、防護服を着用しないといけないのです。セシウム微粒子は繊維にこびりつくし、髪の毛にも付着する。細かい粒子は洗っても落ちません。実は、深刻なんですよ」

(岩上)「いわきの市民測定所で、食事に気をつけている人がホールボディカウンターで何回測定しても数字が検出されるので、試しに服を脱いで測ったら未検出だった、という話を聞きました。放射性物質が服に付着していたということですね」

(西尾)「ICRPの内部被曝の測定法は、人体60兆個の細胞全部に、いかに放射線がダメージを及ぼすかを算出するという、非科学的な計算方法。線源に近づけば近づくほど、危険度が上がるのです。ICRPのチャンバーによる計測方法は、線源に密着した部分は測れない」

(岩上)「福島の住民でも意見が分かれていて、大丈夫だと言う人もいます。線量が高くても、その場に長時間いなければ大丈夫だ、という人にも会いました」

(西尾)「しかし、付着した微粒子を吸い込んだり、海に落ちた微粒子が魚に入ったりして、いろいろな形で人体に吸収される。海に1ベクレル流れたら、生体濃縮で人間の身体には1000ベクレルで入ってくる。想像力をきちんと持てば、安全とは言えません。

内部被曝も、ちゃんとやれば解明できるんですよ。だが、国が研究費をまったく出さない。研究をさせない。最近の医学の進歩を利用した研究をしていないし、広島と長崎の原爆被害の結果を、いまだに、根拠として使っているのが現状です」

(岩上)「つまり、内部被曝を研究させない仕組みを作り出しているのですね。原爆投下したアメリカと、被爆した日本が一番データを持っているにもかかわらず、研究させない。そんな日米が手を組んでいるから、何もできない」

(西尾)「しかし、トップに立つ人間たちは悪いことをしている自覚もない。ふんぞり返って出世ばかりに一生懸命。真剣に考えている医者は少ない」

トリチウムは内部にとどまる、そして被曝する 

(西尾)放射線の影響とは、吸収線量から出発し、そこにどれだけの時間いたかで決まる。ベータ線は、そこに留まってエネルギーを発散するから危ない。今、危険なのはストロンチウムとトリチウム。ただ、ストロンチウムは8時間で95%排出されます。

子どもは別だが、大人なら深刻にならずに済む。トリチウムは、原発を動かせばダダ漏れ状態です。水素だから、人間のDNAにしっかり取り込まれてしまう。北海道の泊原発の近隣で、がん発症数が多いのは、事故がなくても出ているトリチウムのせいだと思います」

(岩上)「セシウム、ヨウ素とさんざん言われてきたが、最近はトリチウムが注目されるようになりました。福島原発事故で、トリチウムは、何が問題になっているのですか」

(西尾)「トリチウムは大量に出ているが、政府はエネルギーが低いので影響は少ないと言う。トリチウムは、セシウムなどより10万分の1、エネルギーが低い。しかし、それは飛ぶ範囲が狭いことを意味し、ベータ線内部被曝で、逆に集中してリスクが増す。

チェルノブイリで、100ミリシーベルト以下は甲状腺がんは出ない、というのは大ウソ。甲状腺がんの50%は、100ミリシーベルト未満での発症です。内部被曝も、甲状腺全体が均一に被曝すると考えるからおかしい。当たっているのは局所の細胞だけです」

今、10マイクロシーベルトまで計測できるガラスバッジも開発されています。でも、100マイクロシーベルトの感度のガラスバッジを住民に付けさせて、低い線量がうまく計測できないことをいいことに、『反応がないから安全だ』と帰還をうながしている。

ガラスバッジは、実際より1/10〜1/20くらい低い値になる。福島の子どもたちは、確実に年1ミリシーベルト以上、浴びているが、健康診断も一切やらない。

また、放医研の学者が3.11以前に認可させた、ラディオガルダーゼを飲めば、放射性セシウムを40%除去できる。僕は原発の作業員に飲ませるべきだと言ったのだが、一切使わせない。政府は、風評被害になるからと、ラディオガルダーゼの輸入を止めた。

チェルノブイリ事故の時、バンダジェフスキー博士がセシウムの体内蓄積を調べたら、子どもの場合は甲状腺に集まっていた。放射線量の高い場所に住まわせることのリスクは拭えない。50歳、60歳の8〜9割は心臓疾患で死んでいる。

福島の学校給食は地産地消で、感度の悪い検査機器で放射性物質を測定して、キロ当たり10ベクレル。県庁の食堂は最新機器を使い、同1ベクレルだ。原発事故のセシウムは自然放射線とはまったく形態が違うので、カリウムチャンネルがやられてしまう

つまり、カリウムを伝達する受け口に、セシウムの微粒子がはまり、機能を阻害、心筋系疾患を招く。いわゆる電解質バランスが崩れ心電図異常が現れる。アメリカの死刑はカリウム注射。それほどカリウム、カルシウムは人体に怖い物質なのです。

 

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