名古屋高裁金沢支部(内藤正之裁判長)は本日、大飯原発3、4号機の運転差止を認めた福井地裁判決(樋口英明裁判長)を覆し、再稼働を認める判決を下した。
本件は、基準地震動の想定の妥当性が最大の争点であり、昨年4月には島崎邦彦元原子力規制委員会委員長代理による「基準地震動が過小評価されている」という重大な証言があった。これを受け原告は、具体的に大飯原発の基準地震動策定の欠陥を明らかにする石井吉徳元物理探査学会会長の証人申請をおこなったが内藤裁判長はこれを却下した。さらに伊方原発差止訴訟広島高裁仮処分決定の根拠となった火山の影響評価についての山元孝広産業技術総合研究所主幹の証人申請も却下した。十分な審理を求める原告らの訴えを無視し、昨年11月20日、内藤裁判長は審理を打ち切り、強引に結審し、その後の再三再四に渡る原告からの弁論再開の申し立ても拒否し、今回の判決に至った。
司法が十分な審理を尽くそうともせず、原子力規制委員会の判断に追随する今回の判決は、司法の責任放棄と言わざるを得ない。結審後、西川福井県知事が再稼働の同意を表明し、今年3月14日には大飯3号機が、5月9日には4号機が再稼働した。まさに再稼働の動きと軌を一にした国策推進判決であり、福島第一原発事故を招いた司法の責任の欠片すらも意識しない今回の判決は、人権の砦としての裁判所の役割を自ら放棄するものである。
一方、志賀原発1、2号機の差止めを求める私たちの訴訟は早期の結審、判決を求めている。一見、正反対の主張とも映るが、根底にある問題は共通している。有識者会合の評価書は、志賀原発敷地内の断層が将来動く可能性は否定できないとし、活断層との評価で一致しているにもかかわらず、金沢地裁加島慈人裁判長は、原子力規制委員会の審査を見守るのが相当とし、司法の判断を回避する姿勢を示している。名古屋高裁金沢支部と同様、司法の責任放棄である。フクシマを忘れ去るかのような司法の逆行を私たちは絶対に許さず、「裁判で原発を止める」取り組みを強化しなければならない。
私たちはこの間、大飯3,4号機差止め訴訟を担ってきた「福井から原発を止める裁判の会」と連帯し、裁判の傍聴行動や弁論再開を求める裁判所包囲行動にも参加してきた。今回の不当判決に対して共に怒りの声を上げ、今後も志賀1,2号機、そして大飯3、4号機の廃炉を、さらには全原発の廃炉、原発のない社会の実現に向けて、福井の仲間と連帯し今後も奮闘する決意をここに表明する。
2018年7月4日
志賀原発を廃炉に!訴訟 原告団