東京電力の福島県内全ての原発の廃炉決定に対する原水禁声明

東京電力の小早川智明社長は、6月14日、内堀雅雄福島県知事に対して、東京電力福島第二原子力発電所の4基全てを廃炉にすることで、検討に入ったことを表明しました。これにより、福島県内の10基の原発がすべて廃炉になることとなります。福島第二原発の「廃炉」決断に7年も要したことは、遅きに失しその責任は大きいと言わざるを得ません。   福島県民は、2011年3月11日の福島第一原発事故以来、「原発のない福島を!県民集会」を毎年3月に開催し、福島第一原発の廃炉のみならず、第二原発の廃炉も要求してきました。今回の東京電力の決定は、両原子力発電所の現状からいって当然の結果であり、福島県民の要求にかなうものです。原水禁は、脱原発社会への歩みの一段階として評価したいと考えます。東京電力は、今後、両原発の安全な廃炉に総力を挙げるとともに、再生可能エネルギーを中心とした福島県の復興に、尽力していくことを期待します。

一方で東京電力は、中越沖地震で大きな被害を受けた柏崎刈羽原発5・6号機(新潟県柏崎市・刈羽村)の再稼働にむけて準備を進めています。また、建設中の東通原発(青森県東通村)の計画も放棄していません。福島第一原発の過酷事故は、多くの人々から日々の生活を奪い、地域の文化を奪い、故郷を奪い、そしてかけがえのない命を奪いました。どのように抗弁しようが、東京電力の責任は逃れることはできません。しかも、事故の収束の作業は、その端緒についたばかりで、今後、膨大な時間と費用が必要となります。国民負担も増え続け、国家財政に与える影響は極めて重大です。東京電力は、溶融した核燃料の取り出しなどについて、明確な作業方法や工程・終了時期なども明確にできないでいます。事故の収束は、今後の研究・開発に待つというきわめて不透明なものであり、増え続ける汚染水の解決策も見えていません。そのような中で、原発の再稼働や新規原発の建設などに着手するなどは、言語道断と言えます。

現在進められている「エネルギー基本計画」の改訂作業では、2030年度時点で原発の電源構成に占める割合を20%~22%する方針を堅持していますが、達成のためには原発30基程度の稼働が必要となりますが、福島第二原発廃炉でさらにその達成は現実的に困難となりつつあります。また、再生可能エネルギーの割合が22%~24%に押さえられ、化石エネルギー依存度の低減を図る姿勢も見えてきません。このような、政府の姿勢は、再生可能エネルギーの将来を塞いでいます。計画の根本的な見直しを強く求めます。

東京電力は、福島県内の全原発の廃炉という決断を機に、政府の方針の拘泥することなく、再生可能エネルギーを基本とした日本の将来を牽引する電力会社としての姿勢を明確にして、日本の市民社会の負託に応えていくことを希望します。加えて、福島第一原発事故の責任を回避することなく、誠実に事故による市民の被害に対する賠償に応じていくことを求めます。そのことは事故を起こした東京電力の責任であり、そのことによってしか市民社会の信頼を勝ち得ることはできません。原水禁は、東京電力が新たな道を歩むことを求めるとともに、脱原発社会へのとりくみをさらに強化していくことを表明します。

   2018年6月15日

原水爆禁止日本国民会議

(原水禁)

議長  川野浩一

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