安倍晋三政権のスポークスマンでもある菅義偉官房長官の記者会見が東京新聞の社会部記者の参戦によって雰囲気が一変した。この記者が臆測による質問や延々と質問を続けるためだ。(※憶測による質問や延々と質問を続けるという表現がすでに「印象操作」だ)
「共同通信の調査では国民の77%が政府の対応に納得していない。もう少し開かれた対応をしていただきたい」。6月6日、学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画をめぐり、舌鋒鋭く質問する見慣れない記者が会見場に現れた。いまや永田町で有名人となった東京新聞社会部の望月衣塑子記者だ。次から次へと質問をたたみかける姿は、国会で与党を追及する野党議員と比べても遜色はない。
望月記者は同月8日も会見に参加し、20回以上質問を浴びせた。官邸側の司会者が「同趣旨の質問は控えてほしい」と注意しても「きちんとした回答をいただけていると思わないので繰り返し聞いている」とひるむ様子はない。記者会見の様子はインターネット上で配信されている。菅氏に食い下がる望月記者は一部で「ジャーナリストの鑑」のようにたたえられた。(※おしどりマコケンとともにジャーナリストの鑑だと思う。)
菅氏の記者会見は原則、平日の午前と午後の1日2回、首相官邸で開かれ、日本政府としての公式見解が示される。会見は官邸内にある記者クラブ「内閣記者会」が主催する。現在は新聞やテレビ、海外メディアなど正会員、オブザーバー会員を合わせて187社が加盟している。官邸の会見場には、クラブ加盟社の官房長官を担当する「長官番」をはじめ多くの記者が集まり、長官番がその社を代表して質問するのが通例だ。会見に時間の制約はなく、早ければ5分程度、長いときは30分以上のときもある。
長官番の主な仕事は、その日の朝までに起きたニュースに目を通し、政府見解を聞くための質問を考えることだ。会見の質疑は記録に残るため、質問内容に事実誤認がないか入念にチェックし会見に臨む。会見後は、締め切りに間に合うよう原稿を執筆するため、質問は簡潔にまとめて最小限に抑えることが、各社の長官番の間では、大前提となっている。
ところが、望月記者の特徴は、まず一つの質問が長い。さらに、質問に引用元が定かでない内容や私見が多く含まれ、結局、同じことを繰り返し聞いている。菅氏は当初、一つ一つ質問に答えていたものの、最近では「主観に基づく質問には答えない」と苦言を呈している。フリーランスの記者から菅氏に「東京新聞などの質問はしつこいと感じているか」との質問が出たこともあった。望月記者の質問が長引いても他の記者は制止しない。一部報道で、望月記者の態度を問題視し、東京新聞に対して抗議したと報じられていたが、これは事実と異なる。基本的にどのような会見でも他の記者の質問を制約しないのが、会見に出席する記者の共通認識となっている。
とはいえ、政府の公式見解を問う場で、延々と質問を浴びせ続ける姿勢はどうなのだろうか。記者は当然、権力を監視するという役割を果たすと同時に、本質を見極めるための「質問力」を磨く必要もある。ちなみに、望月記者は6月21日、市民団体が主催して国会内で開いた集会「安倍やめろ!!森友・加計問題の幕引きを許すな!」に出席し、参加者から拍手喝采を浴びた。この集会には、社民党の福島瑞穂副党首や共産党の国会議員も出席している。東京新聞に対し、長官会見での望月記者の取材方針について見解を求めたところ編集局名で次のような回答が戻ってきた。
--望月記者の質問に対し、菅氏は「主観に基づく質問には答えない」などと述べることがあるが、望月記者は主観に基づいた質問をしている認識はあるか
「関係者への取材や資料などに基づいて質問しています」
--記者会見の司会から「質問は簡潔にお願いします」「同趣旨の質問は控えてください」などと注意を受ける場面があるが、改善の必要性についてどう考えているか
「質問に対して明確な答えが得られない場合は、繰り返し質問することもあります」
--官房長官の記者会見にはどのような姿勢で臨んでいるか。今後の方針は
「国民が疑問に感じていることを率直に聞きたいと考えて、記者会見に臨んでいます」
[用語解説] 東京新聞 中日新聞東京本社が発行する関東のブロック紙。安倍晋三政権に批判的な論調で、「反原発」や「反基地」の姿勢を明確に打ち出す。同社の長谷川幸洋論説委員が1月、自身が司会を務めるテレビ番組で沖縄の米軍基地反対運動について「テロリストみたい」と表現した際、「事実に基づかない論評」が含まれていたとして謝罪記事を掲載し、話題となった。(政治部 広池慶一)