核兵器禁止条約の採択を受けての声明
2017年7月10日
原水爆禁止日本国民会議
議長 川野浩一
事務局長 藤本泰成
国連本部で開催された核兵器禁止条約の交渉会議で7月7日、122ヵ国の圧倒的な賛成により核兵器禁止条約が採択されました。国連の場でこの条約が出来るまで70年以上の時間がかかったという事実が、核廃絶の難しさを現しています。9月20日から署名が開始されれば、発効基準が50ヵ国の参加なので間もなく、核兵器時代を終わらせるための原則、約束、仕組みをこの条約が提供することになります。
ここに至るまでの、声をあげたヒバクシャ、世界の市民運動、中小国の外交官の粘り強いとりくみを思うと、故森瀧市郎さんが核実験抗議の座り込みをしていた時に、座っていることが何の役に立つのかという少女の問いかけにあって考え至ったという言葉、「精神的原子の連鎖反応が物質的原子の連鎖反応にかたねばならぬ」が思い起こされます。人道性を追及する人々の精神の連鎖反応が、ついにこの条約にまでたどり着きました。条約のはじまりに、「国際連合憲章の目的及び原則の実現に貢献することを決意し」という文言があるように、1946年の国連憲章から始まる議論の積み重ねの成果です。
一方で「唯一の被爆国」日本は、核兵器国と非核兵器国の橋渡しをすると公言しながら、交渉会議に参加しませんでした。この条約の実効性を担保するには、核兵器国の参加が重要です。そのためにも日本政府がまず条約に参加し、各国に対して条約に署名、批准するよう働きかける立場になるべきです。
さらに、国連での議論に注目するだけでは見えない重大な日本政府の核・原子力政策の問題があります。世界各国へ向けて、核兵器禁止条約の実現を呼びかけるのと同時に、国内で政策をどうするかの現実に向き合わなければなりません。その上での議論の積み重ねを、国連の会議の場に負けない形で日本の国会でも実現させなければなりません。
おりしも、7月5日、フランスから核兵器90発分以上にあたる736㎏のプルトニウムを乗せた輸送船が日本へ向かいました。日本の原発の使用済核燃料から再処理して取り出されたプルトニウムです。核セキュリティーサミットで公約したプルトニウムなど核兵器物質の最小化に明らかに反する政策を日本はとっています。核弾頭数千発分もの48トンもプルトニウムを保持しながら、来年秋には六ヶ所再処理工場を本格稼働させる予定で、さらに年間8トンもプルトニウムを増産する事態が進められています。
核の役割縮小にも反対の政策をとっています。日本政府は、核兵器以外の攻撃に対しても核兵器で対抗するオプションを維持することを米国に要請、「先制不使用」政策を検討した米国の足も引っ張りました。
さらには、核不拡散条約(NPT)に加盟せず、核兵器開発を続けるインドに対しても、日印原子力協定を5月16日に国会で承認しています。
核と人類は共存できないとして、反核の想いを同じくする世界中の人々と、原水禁は運動を続けて来ました。核兵器禁止条約の実現を歓迎すると共に、原水禁は人道性を求める人々の連鎖反応に希望を新たにし、今こそ、これらの日本の政策を変えていくことに真摯に取り組みます。