「教育勅語」容認の閣議決定に対する平和フォーラム見解

2017年4月3日

「教育勅語」容認の閣議決定に対する平和フォーラム見解

フォーラム平和・人権・環境

(平和フォーラム)

共同代表 藤本泰成

 3月31日、安倍内閣は民進党初鹿明博衆議院議員の質問趣意書に答える形で、教育勅語は「憲法や教育基本法に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」との閣議決定を行った。教育勅語は、1948年に、日本国憲法や教育基本法に反するとして、軍人勅諭とともに衆議院で排除に関する決議・参議院で失効確認に関する決議が行われている。今回の閣議決定は、衆・参両院の決議との整合性がとれず、憲法違反の決定であることは明らかだ。

「朕惟フニ」で始まり「朕カ忠良ノ臣民タル」と呼びかけ「朕爾臣民ト俱ニ拳々服膺シテ咸其德ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ」で終わる教育勅語は、主権在君の明治憲法下のものであり、主権在民の日本国憲法の理念とは相容れない。また、「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」との文言が、国家への忠誠を強要し、徴兵制の下で戦争遂行の基となった。排除・失効の決議が軍人勅諭と一緒に行われたことの意味を考えるべきだ。

「爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ德器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ」との部分をさして「教育勅語の内容は現在でも通用する」との主張が聞かれる。根幹に流れる考えは、長幼の序を基本とした儒教的精神であり強固な家父長制度と長子相続制、男尊女卑にあることは間違いない。明治の時代性を現代に当てはめることの愚を犯してはならない。日本国憲法は、明治憲法下における侵略戦争の時代の反省に基づき「平和主義」「民主主義」「基本的人権の尊重」を基本に、主権在民、男女平等、個人主義に立脚している。何処をとっても教育勅語が憲法に反しない教材になり得る要素は存在しない。今回の閣議決定は、「ポスト・トゥルースの政治」そのものであり、日本政治における「知性の崩壊」と言わざるを得ない。

教育勅語を唱和し、軍歌を歌い、「安倍首相ガンバレ」を宣誓する塚本幼稚園の映像は奇異である。安倍首相は、当初国会答弁で「いわば私の考え方に非常に共鳴している方」「妻(ママ)から森友学園の先生の教育に対する熱意は素晴らしいと聞いている」と、塚本幼稚園の教育へ賛辞を送った。稲田朋美防衛大臣は、「道義国家をめざすとする教育勅語の精神は、取り戻すべき」と国会で述べた。日本会議とともに戦前回帰の国家主義をめざす安部政権の本質が象徴的に表れている。

教育基本法容認の閣議決定に先立って、小学校及び中学校の指導要領が改定になった。小学校用の道徳の教科書では、「パン屋」が「和菓子屋」に変えられ、「公園の遊具」が「和楽器店」に変更された。2006年の第1次安倍内閣で成立した改正教育基本法に示された「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」とする教育目標に沿った修正意見と思われるが、あまりにも偏見に満ちた浅薄な考え方でしかない。そもそも、伝統と文化を支える地域社会を壊してきたのは、戦後保守政権・自民党が進めてきた高度経済成長政策ではなかったか。古から諸外国の文化に学びながら、それを自らのものとして獲得してきた日本文化の本質を、安部政権はもっと真剣に学ばなくてはならない。

一方で、中学校の指導要領では「武道」に「銃剣道」が導入された。銃剣道はフランス軍隊から学んだ西洋銃剣術を基本に、日本の槍術などを組み入れて旧日本軍の戦闘訓練に取り入れられたものである。木銃を手に行う競技であり、その長さは旧陸軍の三八歩兵銃を基本にしている。自衛隊などでは訓練として導入され、競技人口の多くが自衛官でしめられている。地方の道場・クラブの多くが自衛隊駐屯地内に存在する。このような特異な競技を、中学生に教えることの意味が何処にあるのか。戦場における戦闘を想定する銃剣道の導入は、平和憲法の理念に反する違憲の教育と言わざるを得ない。

日本会議と結びついている安部政権の教育改革は、子どもたちを侵略戦争と植民地支配に明け暮れたアジア・太平洋戦争の時代、明治憲法下の天皇制の時代へと誘う。国家主義的な教育は、国家や「公」なるものに対する個人の犠牲を強要し、そのことを美化し、個人主義を否定してゆく。一方的・画一的な価値観を植え付け、多様な個性と多様な価値観を認めない社会は、衰退への歩みを進めるだろう。集団で一斉に教育勅語を唱和するような社会としてはならない。平和フォーラムは、安部政権の教育改革に抗し、平和と民主主義、基本的人権の尊重を基調とする戦後教育の更なる発展にとりくんでいく。

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