声 明
2016年7月20日
フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)
事務局長 勝島 一博
参議院選挙後を見計らったように、安倍政権は沖縄県に対する攻勢を強めてきている。
7月11日早朝、沖縄防衛局は、米軍北部訓練場のヘリパッド建設に向けた資機材の搬入を、住民らの抗議行動を排除して強行した。人口150人に満たない東村・高江地区に、警視庁、千葉、神奈川、愛知、大阪、福岡の各県警機動隊500~1000名が、本格工事の着工を前にして、抗議行動を排除するために派遣された。すでに米軍施設ゲート前で住民らの座り込みを強制排除しているほか、東村の生活道路では、違法な交通検問すら行われ、住民生活にも支障をきたしている。一方で米軍車両は、そのまま素通りだという。
元米海兵隊の女性暴行殺害事件を受けて、安倍政権が再発防止のために創設した「沖縄・地域安全パトロール隊」の警備要員を、辺野古新基地建設および高江ヘリパッド建設での抗議行動に対処するための要員として充てる計画すら進められている。そもそも米軍犯罪の防止の効果が疑問視されていたが、底の見え透いた国の対応に開いた口が塞がらない。
さらに、国は県との話し合いすら誠実に進めようとしていない。国が県に対して和解直後に出した「是正の指示」について、国地方係争処理委員会は「是正の指示」の適否の判断しなかったものの、「普天間飛行場の返還という共通の目標に向けて真摯に協議」を求める決定が下されていた。国は県と真摯に協議することを優先すべきであると思うが、国は裁判での決着に固執し、地方自治法に基づく違法確認訴訟を提起しようとしている。
また、和解に基づき辺野古新基地建設にかかわる工事は一時中断していたが、米軍キャンプシュワブ内の陸上部分は「中止対象にならない」として、工事を再開しようとしている。
沖縄に対する、これら矢つぎ早の攻勢を押し進める安倍政権の意図は明らかだ。辺野古と高江で抗議行動を分散させ、機動隊の圧倒的な力を背景に、県民の意思を崩そうという魂胆だ。力による解決を図ろうとする安倍政権には、政権を運営する上での品格はみじんも感じられない。
幾度となく繰り返された「県民のみなさまにご理解いただけるよう、ていねいに説明する」ということが、協議をないがしろにし、圧倒的多数の機動隊を派遣して住民意思を踏みにじることなのか。沖縄のこれまでの選挙で幾度となく民意が示され、先の参議院選挙でも、自民党現職大臣に10万票以上の票差をつけて辺野古新基地建設反対の伊波洋一さんが当選を果たしている。この県民の民意に耳を傾けることこそが、政治に携わる者の使命ではないのか。
平和フォーラムは、沖縄県の民意を踏みにじり、言行不一致きわまる安倍政権の暴走を許さない。沖縄県民の意思に寄り添い、連帯の腕を固く結び、辺野古新基地建設および高江のヘリパッド建設阻止に全力を注いでいく。
2016年7月25日
国は沖縄県民の立場に立って解決に向けて話し合え
-高江ヘリパッド建設再開と違法確認訴訟に抗議する-
フォーラム平和・人権・環境
(平和フォーラム)
共同代表 藤本泰成
7月22日、米海兵隊辺野古新基地建設をめぐって仲井眞前沖縄知事の辺野古沖の埋め立て申請承認を取り消した翁長知事が、その撤回を求めた国の是正指示従わないのは違法であるとして、福岡高裁那覇支部に対して地方自治法に基づく違法確認を求める訴訟を起こした。これにより普天間基地の移設計画をめぐる政府と沖縄県の対立は、再び司法の場に持ち込まれることとなった。国地方係争処理委員会は、6月に審査結果を公表し、国の是正指示の適否を判断せず国と県の話し合いに問題解決を託した。真摯な話し合いの姿勢を見せず、裁判によって決着を急ぐ国の姿勢はきわめて問題だ。
6月の沖縄県議会議員選挙では、翁長県知事の掲げる「辺野古新基地建設撤回」の姿勢を支持する与党会派が、過半数の議席を得た。7月10日投開票の参議院選挙では、現職の沖縄北方問題担当大臣を破って辺野古新基地建設反対を主張する野党候補が大差で勝利した。沖縄県民の民意は明らかで、国は、「辺野古が唯一の解決策」との考えを改め、沖縄県とともに、県民が納得する解決をめざしてあらゆる可能性を求めて話し合いを継続すべきだ。
1872年の武力威圧によって明治政府に組み入れられた琉球処分以来、沖縄は差別と偏見の中にあった。1945年、侵略戦争の最後には、本土決戦の捨て石として幾多の市民が戦闘に巻き込まれ命を失った。そして戦後は、米軍政下で筆舌に尽くしがたい辛酸をなめた。その歴史に思いをはせ、国は日本国憲法の理念に基づいて沖縄県民に向き合わなくてはならない。
しかし、参議院選挙前に起こった女性に対する米軍属の殺人事件では、何度も繰り返される凶悪事件に対して沖縄県民は「米海兵隊の撤退」を要求として掲げたが、国は、遺憾の意を表明しながらも「県民大会は超党派ではない」などと問題を矮小化し、本質的な解決にはほど遠い、地位協定における軍属の範囲を絞ることで決着を図った。また、参議院選挙に現職大臣が敗れた翌日、沖縄県民の意志を踏みにじるように東村高江のヘリパット工事の再開を強行した。警視庁などから500人規模の機動隊を導入し、工事に反対する市民を強権的に排除した。警察察車両と接触し負傷する市民も出ている。沖縄県議会(新里米吉議長)は、7月21日、東村高江でのヘリパッド建設の中止を求める意見書を賛成多数で可決した。市民の抗議活動を、徹底して力で封じ込める政治のあり方は、日本国憲法の民主主義に反する。平和フォーラムは、直ちに機動隊を退去させ工事を中止することを求める。
国は、辺野古新基地建設を普天間基地移設の唯一の解決の道と主張している。しかし、米国内からは、「沖縄への基地の集中は、軍事的にも不利」「計画変更を考える時期に来ている」などの声も聞かれる。米国の東アジア政策に必ずしも辺野古新基地が必要であるとは、米国内の議論からは感じられない。日本の安全保障上も、説得力ある議論は聞かない。辺野古新基地建設を求めているのは、日本政府ではないかとの疑念も生まれている。
翁長沖縄県知事が、県民世論に立って行動していることは明らかだ。国は、県知事とともに沖縄県民の意志を踏まえて行動すべきだ。そこに必ず解決の道筋が見えてくる。平和フォーラムは、沖縄県民とともに辺野古新基地建設阻止、そして高江ヘリパッド建設阻止に向けて全力で闘っていくことを確認する。