「戦争法(安全保障関連法)」施行に対する抗議声明
フォーラム平和・人権・環境
共同代表 福山真劫
本日3月29日、「戦争法(安全保障関連法)」が施行された。平和フォーラムは、憲法に反する集団的自衛権行使に道を開き、米軍とともに地域的制約なく自衛隊の世界展開を可能にする同法の施行に強く反対する。
安倍晋三首相は、消費税増税先送りの是非を問うとして2014年12月に衆議院総選挙を行い、多数を確保すると、安全保障法制改革の信任を得たかのように主張し、世論の動向に配慮することなく、昨年9月に「戦争法」を強行成立させた。憲法学者のほとんどが、野党が、一致して違憲とする集団的自衛権行使を容認し、反対する者を「安全保障に無責任な勢力」として一方的に断罪する政府と安倍首相の姿勢は、国民の負託を受けて民主主義国家の運営にあたる者としてふさわしくない。
菅義偉官房長官は、「今後とも国民の一層の理解をいただけるよう説明していきたい」と発言しているが、今日まで、そのような政府の努力を見ることはない。「戦争法」が違憲であるかどうかの疑いが晴れることはなく、むしろ懸念は広がっている。
安倍首相は「国民の命をまもるために必要な措置は何か、考えぬいた結果」と、「戦争法」の異議を強調しているが、例えば世界に紛争地で難民などの支援に当たる民間のNGOからは、「軍隊と一線を画すことが、安全につながる。自衛隊の駆けつけ警護は、自らを攻撃対象とすることになる」との主張がある。このように「戦争法」の有効性についても疑問の声があがっているが、政府からは何ら納得できる回答はない。
それどころか、政府は参議員選挙をにらんで、PKOに派遣する自衛隊の「駆けつけ警護」や米軍への兵站を担うための日米物品役務相互提供協定(ACSA)改定案の国会提出など、「戦争法」施行にともなう自衛隊の新たな任務については、今秋以降に先送りする方針とされている。野党は「安保法廃止法案」を国会に共同提出しているが、自民・公明多数の中で審議入りの目処も立っていない。政府は、国民の理解をいただくと言うならば、「戦争法」施行に基づく実際の自衛隊の運用方針を示し国会で与野党の議論を開始しなくてはならない。
実際の任務に当たる自衛官や家族からは、不安の声があがっている。任務とされる兵站支援や駆けつけ警護は、戦闘を前提としておりきわめて危険な行為である。自衛隊が、この「戦争法」の施行にともなって戦死者を出すことがあれば、第2次大戦後も世界各地で「自由と民主主義」のためと称して戦争を行い、今日の世界の混乱を招いてきた米国軍と何が違うのか問われることになるに違いない。それは、そのまま日本の戦後が問われることと同義である。
平和フォーラムは、日本国憲法9条の下、集団的自衛権行使を否定し実際の戦闘から距離を置くことで、他国にはできない日本独自の平和への役割があると考える。「戦争法」施行によって「普通の国」にならんとする現政権の理念なき野望に抗し、参議員選挙での野党勝利、「戦争法」廃止、改憲阻止に向けて、全力でとりくんでいくことを決意する。