高浜原発運転差し止め仮処分命令取り消し決定に関する見解

高浜原発運転差し止め仮処分命令取り消し決定に関する事務局長見解  平和フォーラム

12月24日、福井地方裁判所(林潤裁判長)は、本年4月14日に関西電力高島原子力発電所3・4号機の運転差し止めを命じた同地裁の仮処分(樋口英明裁判長)を取り消す決定を行いました。本決定では、「新規性基準の内容や規制委員会の判断には不合理な点はない」とし、基準値振動についても「規制委員会の議論は専門的・技術的知見に基づき、中立公正な審査が担保され合理的である」としています。なぜ同地裁において、わずか8か月にも満たない中で、全く異なる判断が下されたのか、司法はしっかりとした説明責任を果たすべきです。

原子力規制委員会は、再三「安全審査ではない」「あくまでも新規制基準への適合審査である」と述べてきました。田中俊一規制委員会委員長は、「私は安全とは言わない」と表明しています。本決定では、原発再稼働に不合理な点はないとしながら、「想定を超える地震の可能性を否定できない」とし、「炉心溶融などの過酷事故への備えなくてはならない」としています。しかし、その備えがきわめて困難なのは福島原発事故の実態を見れば明らかです。放射性物質の飛散の方向と範囲の確定は、被ばくを防ぐ避難計画は、溶融した核燃料の処理はどうするのか、どれをとっても不確かであり安全が確保されているとは言えません。

本決定は、エネルギー問題を経済的側面のみを以て判断する中で、過酷事故の可能性を社会通念上無視しうる範囲としています。しかし、その可能性が現実となった場合に、周辺地域の広範囲にわたって放射性物質の汚染で人間生活が拒絶されることは、福島原発事故が証明しています。高浜原発の過酷事故では、関西地方住民の水源である琵琶湖の汚染の可能性が高く、きわめて深刻な事態の招来が予想されます。2014年5月21日に福井地裁(樋口英明裁判長)で出された大飯原発運転差止請求事件判決では、「たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である」と断じています。

原発の再稼働の結果として、万が一の事故が将来したなら市民生活にどのような影響があるのか、そのことを合理的と考え得る範囲で回避できないのか、本決定は、そのことを真剣に考えたとは到底言えません。現在、九州電力管内を除いて原発は稼働していませんが、電力不足の話はありません。また、電力の高騰によって輸出産業が危機に陥っているという話も聞いていません。日本においても、太陽光発電や風力発電、地熱発電などの再生可能エネルギーの割合は拡大しています。火力発電や水力発電、また小水力発電やバイオマス発電などを組み合わせることで、合理的な範囲において脱原発社会を実現することは可能であり、結果として原発の過酷事故を回避できるこのようなとりくみが、日本の社会にとってきわめて有益な判断であることは論を俟ちません。

本決定が論拠とする社会通念は、福島原発事故以前の「原発の安全神話」に基づいたものです。事故以降の市民社会は圧倒的に脱原発を志向しており、その意味で本決定の内容は、現在をも見つめることのないきわめて無分別で無責任なものであるといえます。原発のリスクを社会的合理性の中に組み入れることはできません。福島原発事故とその後を見つめながら、日本の社会通念は、原発事故の可能性をみじんも許さないものとなっています。原水禁は、脱原発社会こそが、そのことへの不断の努力こそが、日本の将来を明るいものに変えていくと考え、圧倒的多数の市民とともに、脱原発社会実現へのとりくみを一層強化していきます。

 

2015年12月28日

原水爆禁止日本国民会議

事務局長 藤本泰成

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