対テロだけじゃない 欧州で台頭する「極右」との闘い(日刊ゲンダイより)
欧州中が「次はウチか」と震え上がっている。フランスのバルス首相は16日、「数日あるいは数週間以内に再びテロが起きる可能性がある」と警告。次の標的はフランスとは限らず、欧州全域が狙われていると強調した。欧州全域で、テロへの怒りや不安が増幅されるほど、移民排斥を掲げ、「ネオファシズム」と呼ばれる極右政党の勢いは増すばかり。2度の大戦を経て克服したはずのナショナリズムが、今や欧州各国で再び頭をもたげている。
昨年のEU議会選で国民戦線はフランスの第1党に躍進した。今年3月、大統領選の前哨戦と位置づけられた全国県議会選でも前・後半の合計でEU選を上回る票を獲得。前半の得票率25.24%は与党の社会党(21.78%)を上回った。
「2011年に父親から党首の座を引き継いだルペン氏は、国民戦線のイメージを刷新。従来の反ユダヤ主義を後退させ、労働者の権利確保など『国家社会主義』の色合いを強めた。この“ソフト路線”が功を奏し、支持層を拡大させました。巧みな演説で大衆の心を掴んでいますが、彼女の『押し寄せる難民が低賃金の労働者となり、我々の仕事を奪っていく』といった主張は排他主義そのもの。雇用創出を隠れみのにしたスケープゴートは、オンナ版ヒトラーを彷彿させます」(国際ジャーナリストで早大客員教授の春名幹男氏)
問題は、極右政党が台頭する国がフランスに限らないことだ。英国も昨年のEU議会選で反EUを掲げる極右政党「イギリス独立党」が第1党となり、イタリアは極右政党「五つ星運動」が若年層を中心に支持を広げている。ドイツでも先月末から難民施設への襲撃が激増中だ。
反イスラムの「自由党」が閣外協力で政権の一翼を担い、ブルカ禁止法を制定させたオランダ。移民排斥を唱える極右政党が国政第3党の座を占めるスウェーデン。非白人移民の国外追放を求める過激な「国民党」が政権中枢に入るデンマーク……など欧州全土にナショナリズムの嵐が吹き荒れる最中に、今回のテロが起きたのだ。
しかも、自爆犯1人の遺体近くからシリアのパスポートが見つかり、イスラム国の戦闘員が難民を装って入国したとの報道が続く。その真相を問わず、難民を治安上のリスクとみなす見方が広がり、ポーランドの新政権はEUで合意した難民割り当てを拒否する方針を表明済みだ。
「欧州で移民排斥の極右政党が支持されるのは、域内の人々の間で固定化する経済格差へのイラ立ちが蔓延しているから。今回のテロを機に、欧州全域が現状への不満や憎悪などの感情論に支配された『反知性主義』に染まりつつある風潮に、薄ら寒いものを感じます」(春名幹男氏)
前出の「服従」は2022年の大統領選も描いている。そこでは衰退著しい既成政党が、イスラム穏健派による政党と連立政権を樹立。イスラム教徒がルペン氏を破って大統領に就任するのだが、もはや「荒唐無稽」とは言い切れない。