2015年10月 6日
フォーラム平和・人権・環境 事務局長 藤本 泰成
9月30日からアメリカ・アトランタで開かれていた環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の閣僚会合は、異例の延長を繰り返した後、10月5日午前(日本時間5日夜)に「大筋合意」に至ったとの発表がなされました。今回の「大筋合意」はもっぱらアメリカの大統領選挙などの政治日程を優先して強引に決められたものであり、国民への事前の説明もなく一方的に合意したことに対し強く抗議します。
TPP交渉は、当初2013年中に合意する予定でしたが、何度も見送られてきました。それは、アメリカ主導のもとで、多くの分野で急進的な市場開放や経済ルールの統一化を図ろうとすることに、多くの国から反対の声が上がったためです。また、今回の医薬品のデータ保護期間をめぐる交渉にみられるように、TPP交渉が多国籍企業の利益優先のために行われ、多くの人たちの命と暮らし、人権や主権を脅かすことにつながるものであることが明らかになりました。
日本においては、「TPP交渉参加反対」を公約にして政権交替を勝ち取った安倍政権が、自らの公約を破って2013年に交渉に参加しました。さらに、交渉参加にあたって衆参農林水産委員会で行われた決議で「重要農産品は再生産可能となるよう除外または再協議の対象とする」とされていたにも関わらず、日米協議で譲歩を重ね、コメの輸入枠設定や牛・豚肉の関税大幅引き下げなどを受け入れました。また、食の安全や医療、企業が相手国を訴えることが出来るISD条項(投資家対国家間の紛争解決条項)などでも国会決議を踏みにじることにつながる懸念は払拭されていません。
このように安倍政権は、自らの公約や国会決議、さらには「説明不十分」という国民世論も無視して秘密交渉を続け、終始、交渉「合意」に前のめりの姿勢を取り続けました。これは、民主主義をも破壊する暴走であり、戦争法案とともに、米国追従、日米同盟の強化を目論んだものと言わざるをえません。
今回の「原則合意」を受けて、今後、各国では協定の発効に向け、議会の批准などの手続きが行われます。それらにあたって最低限、これまでの交渉の内容を全面的に明らかにするとともに、徹底した国民との意見交換などを行うことが必要です。そして、国会決議に違反する場合は交渉からの離脱も含めて検討するよう求めます。
私たちはこれまで、全国で多くの人たちと力を合わせて、宣伝や集会、学習会、フォーラムや国際シンポジウムなどを展開してきました。また、世界の人たちとも連帯し、不公正な通商交渉に反対してきました。今後とも、国内外の関係団体とともに、TPP交渉の問題点を追及し、国会決議違反、民意を無視したTPP協定の発効は許さない取り組みを展開します。