憲法理念の実現をめざす第52回大会(護憲大会)開催の呼びかけ(案)
1945年8月15日、中国東北部へのソ連軍の侵攻と2度の原子爆弾の投下を経て、日本はポツダム宣言を無条件に受諾し、1931年以来15年にわたったアジア・太平洋戦争に終止符を打ちました。それは、空爆と機銃掃射、言論弾圧と特高警察、勤労動員と飢餓、徴兵の赤紙と戦死公報におびえる毎日から解放された瞬間でした。そして、アジア諸国においては日本の侵略と植民地支配から開放された瞬間でした。
敗戦の翌年、1946年11月3日に発布された「日本国憲法」は、死に怯え物言えぬ戦争国家から人権尊重と民主主義の平和国家へ、期待を膨らませた日本の市民社会に心から歓迎されました。以来、70年にわたって日本の市民は日本国憲法を大切にして、日本は、曲がりなりにも戦争への参加を是とすることなく、平和国家の歩みを続けてきました。そして、侵略と植民地支配の歴史の反省に立って、世界各国の信頼を得るために努力を重ねてきました。戦後50年にあたっての「村山首相談話」は、加害の責任を明確にして真摯な反省とお詫びの気持ちを表しています。
日本社会は、敗戦の原点を忘れることなく、平和国家の歩みをさらに続けていかなくてはなりません。侵略戦争と植民地支配に苦しんだアジアの同胞が、信頼と友好を持って日本社会を受け入れる基本がそこにあります。
昨年7月1日、安倍晋三内閣は「憲法9条は集団的自衛権行使をはばまない」とする閣議決定を行い、憲法を変えることなく戦争への道を開こうとしています。米国の世界覇権に協力し、共に闘うことが抑止力を増し安全保障に資すると主張しています。しかし、その主張が何をもたらすかは歴史が明らかにしています。再びアジア諸国を敵対国として戦争への火種を抱え込み、日本社会そのものがテロリズムの標的になると言うことです。「ホルムズ海峡は日本経済にとって死活的」と言う安倍首相の言葉は、「満蒙は日本の生命線」として15年戦争に突入したあの時代を想起させます。日本社会の誰が戦争を望んでいるでしょうか。誰が、もの言えぬあの暗い時代に戻ろうと考えているのでしょうか。私たちは、再びあの時代に戻ってはならないのです。
自民党が表した憲法改正草案では、憲法13条の「国民は個人として尊重される」と言う条文を「国民は人として尊重される」と書き換えています。「個人主義」は憲法の基本であり近代社会の基本なのです。このことなくして、私たち一人ひとりの幸福追求の権利は存在しません。下村博文文部科学大臣が、今日でも通用する考え方とした教育勅語の「一旦緩急あれば義勇公に奉仕以て天壌無窮の皇運を扶翼すべし」と言う文言は、まさに「個人主義」を否定するところに存在します。軍機保護法と同様に言論を弾圧する特定秘密保護法が強行成立され、今また、戦争法案を多くの反対を一顧だにせず強行に成立させようとしています。数の力を持って、何ら議論なく、戦後の長きに渡って日本社会が大切にしてきた平和主義を捨てることを許してはなりません。
憲法の平和と民主主義、人権尊重の理念を日本社会において実現しようと、私たちは半世紀以上にわたって努力を積み重ねてきました。「憲法理念の実現をめざす第52回大会」は、今年11月134から16日にわたって青森県青森市で開催します。憲法の危機にあたって政府の姿勢を正し、私たちが真にめざす社会のあり方を明確にしていくために、ぜひ全国からお集まりいただき、議論への参加をいただきますよう心から呼びかけます。
2015年*月**日
憲法理念の実現をめざす第52回大会実行委員会