サイバー対策、個人情報の分散化、原発の廃炉、軍隊の災害救助隊化、軍事費の削減、耐震住宅への改築援助、学童保育の解消、教育の無償化、年金額の補償、生活保護費の倍増などなど、安倍政権が進めている政策を「逆転」すれば実現できる。(以降は日刊ゲンダイより)
安倍首相は「国民の安全と平穏な生活を守る」と意気込んで、夏までの安保法案成立に血道をあげているが、何をかいわんやだ。戦争法案に邁進する足元で、暮らしに直結する年金情報の流出により、「国民の安全と平穏な生活」を揺るがすオソマツ。その責任について、安倍首相は行政府の長でありながら、全く無自覚のようだ。
ネット社会と呼ばれて久しい今、国民の安全を揺るがす「事態」は大きく様変わりしている。いくら自衛隊を強化し、地球の果てまで派遣できるようにしても、サイバー攻撃を防げない政府には国民の平穏な生活を守ることはできない。安倍首相は戦争法案の成立に注ぐ情熱を少しはハッカー対策に振り向けたらどうなのか。
ましてや来年1月にはマイナンバー、いわゆる「国民総背番号制」が開始される。国民一人一人に届く12ケタの番号には家族構成から税金の支払い状況、所得や不動産などの資産情報、生命保険や治療履歴など93項目に及ぶ個人情報が結びつくとされる。将来的には預貯金口座との結びつけの義務化も視野に入れているから、金融資産の多寡によって年金受給額を増減させようと狙っているのかもしれない。
これだけ膨大な個人情報が流出したら、その破壊力は年金情報の比ではない。もちろん堅牢なセキュリティーシステムの構築は不可欠だが、政府はマイナンバー導入による初期投資に約2700億円、システム維持コストに毎年300億円程度を投じる見込みだ。とはいえ、サイバー攻撃の技術は日進月歩。対策を講じる政府がハッカーとイタチごっこを続ければ当然、維持費は跳ね上がっていく。
政府はマイナンバー導入のメリットに行政事務のコスト削減を挙げるが、個人情報の一元化によるハッカー対策に巨額の税金を費やすようになれば本末転倒だ。悪いことは言わない。漏洩リスクを考えれば個人情報を分散させておくことが、最大のハッカー対策となる。