世界は大軍拡の時代に

《被爆69周年原水禁世界大会に向けて 》
世界は大軍拡の時代に

-核兵器の近代化・増強と、非核兵器の高度化・多様化-

きっかけは米国のアフガン、イラク侵攻
いま、軍拡が世界中で広がりつつあり、法の論理よりも力の論理が主流となりつつあります。そのきっかけを作ったのは、ブッシュ前米大統領による、アフガニスタン、イラクへの侵攻にあるでしょう。イラクではシーア派とスンニ派、さらにクルド人を含めて激しい攻防が続いており、次第に統一国家としての姿を失いつつあります。アフガンも米軍の撤退後を見通すことは不可能といえるでしょう。現政権の腐敗は民衆の憤激をかっていて、タリバンが勢力を回復するのは時間の問題ともいわれています。リビアは国境はあっても、国家としての形はとっくになくなっています。シリアでも政府軍と反政府軍の戦闘を誰も抑えることは不可能な状況です。
このような状況のなかで、ウクライナ問題が発生したのです。クリミア半島にはロシアの重要な軍港があり、ロシアはどうしても手に入れたい要衝であったのですが、そもそもウクライナのEU入りをためらった大統領への反政府デモの中で銃撃戦が始まり、大統領はロシアに亡命します。この発端から非民主的な力の論理が働いていたのです。
ただロシアは大国であり、G8にも参加しています。またロシア自身も国内にイスラム過激派を抱えていて、各国との共同行動が必要です。こうしてロシアは一度は、ウクライナ東部の親ロ派を切り捨てようとしましたが、最近ではまた戦車をロシアが提供するなど、状況は二転三転しています。
          ロシアのSu-35長距離多用途戦闘機SU35(スホイ35 F22の対抗馬)

熾烈なロシアと米国の戦闘機開発

 こうしたなかロシアは中国との結びつきを強め、強力なロ中関係を作り上げつつあります。ロシアはまず、天然ガスを中国に輸出する合意を結び、一方、中国はロシアの最新型迎撃ミサイルS-400トリウームフをロシアから購入し、さらにSU-35戦闘機の購入にまで進んでいます。S-400は射程400㎞で、中国軍は東シナ海、黄海の沿岸部に配備するとしています。SU-35は米空軍のF-22ラプターに匹敵するといわれる、ロシア最新の戦闘機です。
これまでF-22はステルス性能、推力偏向ノズル、超音速巡航性能を持つ世界最強の戦闘機といわれてきました。2005年から配備が始まり、09年までに200機弱が米空軍に配備されたのですが、米国防総省は余りにも高価な上、装備の漏洩を恐れて、他国には一切売却しない方針で、日本も購入を要請しても売却されませんでした。1機が1億5千万㌦といわれる高価な戦闘機です。
ロシアのSU-35がどれほどの威力をもつのかは、明らかでありませんが、かなりの威力を持っていると考えられます。中国に対して強気な発言を続けている安倍政権ですが、中国がロシアのSU-35を購入したとなると、航空自衛隊の戦闘機・F-15では歯が立たないでしょう。米軍がF-22の後継機種として開発を進めているF-35は航空自衛隊も購入予定ですが、生産は遅れに遅れています。

広範囲に拡散する爆弾も
米国は非核兵器でも威力のある兵器を開発しています。米軍が保有する非核兵器で、広範囲に衝撃波を発生させる威力を持つ兵器が「燃料気化爆弾」です。秒速2000mで広範囲に拡散し、高温・高圧で燃焼する爆弾で、この燃焼による被害はもちろん、多くの酸素を使うことによる酸欠でも死をもたらします。
さらにクラスター爆弾があります。国際的な禁止運動によって条約ができ、日本も所持しないと署名していますが、米軍はCBU87、CBU103の名称で所有しており、高高度、中高度から投下して、数百メートルの高さで200個ほどの殺傷力をもつ兵器としてはじけます。範囲は約5Kmといわれイラク戦争で米軍が使用しています。また、アフガン戦争で米軍が使用した、「地中貫通爆弾(バンカー・バスター)」があります。タリバンが山岳地帯に逃げ込んだ際に使用し、多くの兵士が殺傷されています。
現在、米軍が開発を急いでいる兵器に、1時間以内に地球の裏側を攻撃出来るミサイルがあります。「即応型宇宙システム兵器」とも言われれますが、日常的に地球をまわる衛星で、あらゆる情報を収集し、なにかことがあれば、直ちに攻撃するミサイル兵器といえます。
現在、アフガンで使用している無人航空機攻撃もあります。無人航空機は攻撃するだけでなく、情報収集も行っていて、個人情報をため込み、精度を高めて攻撃を行っています。いまや個人情報はどこで収集されるかわからない時代に入りつつあるといえます。また、劣化ウラン弾もあります。
このような軍拡が続く中で、2015年に核不拡散条約(NPT)再検討会議が開催されます。これについては次号で述べます。
(原水禁専門委員和田長久)

 

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