被爆69周年原水禁世界大会への参加の呼びかけ
1945年8月、広島と長崎への核爆弾の投下は、核時代の幕開けを告げる悲惨な体験でした。1964年までに核兵器保有国は、米国からロシア、イギリス、フランス、中国の5カ国へ広がりました。1970年に核不拡散条約(NPT)が発効して以降も、インド、パキスタン、イスラエル、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)へと拡大しています。ヒロシマ・ナガサキの惨劇から70年を迎えようとする今日まで、核兵器廃絶を願う世界中の声も届かず、現存する約1万7千発の核兵器は、人類の大きな脅威となっており、その廃絶は急務です。
一方で、核の「平和利用」としての原子力発電所は、全世界で400基を超えて展開されてきましたが、1979年のスリーマイル島で、1986年のチェルノブイリ原発で、そして2011年の福島第一原発で、重大な事故を経験してきました。一旦外部に放出された放射能が人間の制御を超えてはかりしれない被害を及ぼすことは明らかです。核不拡散条約の「原子力の平和利用は全ての締約国の奪い得ない権利」という考え方が問われる状況です。
原水禁は、「核と人類は共存できない」との理念のもと、核兵器にも原発にも反対し運動を展開してきました。科学が人間の生命の尊厳を冒してはならない。科学技術は人間の存在を脅かしてはならない。その思いは、人類共通のものなのです。
福島第一原発の過酷事故の経験から日本社会は「脱原発」を望み、市民は大きな声をあげ続けてきました。しかし、安倍政権は、新しい「エネルギー基本計画」を閣議決定し、原発再稼働や破綻したプルトニウム利用計画を含め原発推進政策の継続を決定しています。
今年3月にオランダのハーグで開催され、安倍首相も参加した「核セキュリティサミット」では「プルトニウムや高濃縮ウランなど核物質保有量の最小化」を求める「ハーグ・コミュニケ」が採択されました。オバマ米大統領は、核拡散の防止の観点から「分離プルトニウムをこれ以上増やすべきではない」と表明してきました。NPT加盟の非核兵器保有国で唯一日本だけが、使用済み核燃料の再処理を行い現在44トンものプルトニウムを保有していますが、福島原発事故後の状勢から利用計画も作成できないでいます。核開発を行う北朝鮮とプルトニウム利用政策に固執する日本の間にあって、韓国は、米国との原子力協定の再交渉で使用済み核燃料の再処理、すなわちプルトニウム利用の権利を認めるよう要求しています。日本が認められる再処理・プルトニウム利用政策が、なぜ韓国やその他の国に認められないのかとの声があがりつつあります。
被爆から70年目にあたる2015年、NPT再検討会議が開催されます。日本政府は、被爆国として核兵器廃絶にとりくむ責任があります。そのためにも、日本政府は、自らプルトニウム利用政策を放棄し、世界に向けて核兵器廃絶・核不拡散のための実効的とりくみを提起しなくてはなりません。東アジアの平和にとって、そのことがどれほど有効であるかは論を待ちません。
原水禁は、被爆69周年の原水爆禁止世界大会にあたって、日本政府が、プルトニウム利用政策を放棄し、脱原発社会に向けての新しいエネルギー政策を積極的に導入していくことを要求します。このことは、ヒロシマ・ナガサキ、そしてフクシマの人々の確固たる願いです。
原水禁は、被爆から70年目の2015年NPT再検討会議に向けて、今大会を新たな運動のスタートと位置づけ、多くの方々の参加と賛同を訴えます。福島と広島・長崎に集い、核廃絶、脱現発、ヒバクシャ援護・連帯に向けて、多くの課題を学び共有化し、新たな世界の構築に向けた運動に結びつけましょう。
2014年4月22日
被爆69周年原水爆禁止政界大会実行委員会
実行委員長 川野 浩一