「エネルギー基本計画」の1月中閣議決定が延期

「エネルギー基本計画」の閣議決定が延期
原発を「重要なベース電源」と位置づけ

1月6日までのパブリックコメントを済ませた後、1月中にも閣議決定をする予定だった、「エネルギー基本計画」が、中長期的なエネルギー政策の方向性を示す重要な決定をあまりに拙速にすぎると与党内や原子力委員会からも批判が相次ぎ、延期となりました。
民主党政権時に広範な国民的議論を行ない、2030年代までに原発ゼロを目指して決定した「革新的エネルギー戦略」を放棄しようという安倍政権の方針に待ったがかかったかたちです。原発・エネルギー問題を、ちょうど始まった東京都知事選挙の争点にしたくないという与党の意向があるのかもしれません。また、年末年始の期間にもかかわらず1万9千も寄せられたパブコメの影響もあるでしょう。
締め切り後10日経っても、資源エネルギー庁は「集計中」だとして意見の内容を公表していません。2012年の「革新的エネルギー・環境戦略」のパブコメでは、40日間に8万9千もの意見が集まり、締切り5日後から国家戦略室のウェブサイトに次々掲載されたのとは対照的です。当時、原発ゼロシナリオを選択した人が9割で、8割が即時原発ゼロでしたが、今回もそれほど変わらないものと思われます。

あまりにも無責任な内容 与党からも批判
今なお継続する東京電力福島第一原発事故では、これまでの政府、規制当局、事業者、学者、マスコミを含めた無責任態勢が原因の人災であったことは、国会事故調も指摘したところです。その反省も事故後3年を前に忘れたのか、旧態依然の無責任態勢に回帰しようというのが今回の「エネルギー基本計画」です。
経済産業省・資源エネルギー調査会の基本政策分科会で行われた審議の中では、原発を「エネルギー需要の安定性を支える基盤となる重要なベース電源」と位置づけた素案が提示されたのが、第12回会合(12月6日)、12月13日に若干の修正が加えられ、わずか2回の審議で原子力の位置づけが変えられました。省内の一審議会が、討論型世論調査などを含めた国民的議論を行った結果である「革新的エネルギー・環境戦略」をまったく無視するという、民主的手続きを欠いたものです。その内容も、革新的エネルギー戦略策定のプロセスの中で行った、コスト等検証委員会の議論(エネルギーコストの比較を行い、バックエンドコストなど未確定な部分を指摘して、原子力エネルギーが高くつくことを明らかにした)が無かったかのような、ごまかしの数字を使っています。
原子力委員会でさえ、電力システム改革など電力各社の経営環境の変化で「従来の原発の運営体制は、重要な電源として維持・活用していく観点から最適といえない」と、経済産業省の不透明で拙速な審議を批判する意見書を1月9日に発表しました。近藤駿介委員長も「原子力ありきで決めていく問題ではない」と、これまで原子力基本法に基づき原子力政策を決めてきた委員会からの懸念を表明しています。
自民党エネルギー政策議員連盟も、「使用済燃料に関しては、放射性廃棄物の処理方法や核燃料サイクル技術の確立が鍵になるが、これまで巨額な投資をしてきたにも関わらずその解決の目処がたっていない」、「こうした議論が未熟なまま原子力政策がなぜ推進されてきたのか、特に電力業界や原子力を推進してきた官庁との過度な相互依存関係がなかったかなど、さらなる検証を行う必要がある」として、「エネルギー基本計画への提言」を行うと発表しています。

問題を先送りする核燃料サイクル
使用済核燃料の問題は、「核燃料サイクル」という実現しないごまかしによって先送りにされ、すでに大量に溜めてしまっています。各原発サイトのプールなどに約14,300トン、六ヶ所再処理工場のプールに約3000トンと膨大です。「中長期的なエネルギー安全保障に資する」という不可解な文言で、すでに無用の長物が明らかなもんじゅの延命と六ヶ所再処理工場の稼働方針の維持は、さらに将来へ問題を先送りし、拡大させるだけです。

「十分な理解を得て進める」とされる核燃料サイクル施設
(経済産業省・資源エネルギー調査会の基本政策分科会資料より)

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