民主主義を否定し市民を愚弄する暴挙に、重大な決意をもって抗議

2013年12月 8日

「特定秘密の保護に関する法律」の成立に抗議する

フォーラム平和・人権・環境
代表 福山真劫

 12月6日、参議院国家安全保障特別委員会において強行採決された「特定秘密の保護に関する法律案」は、即日本会議にかけられ成立した。平和フォーラムは、この民主主義を否定し市民を愚弄する暴挙に、重大な決意をもって抗議する。

 本法律は、次期通常国会にも提出されるとする「国家安全保障基本法」と対をなし、集団的自衛権の名の下に、自衛隊の戦争参加を可能にし、米国の世界覇権に協力するものである。第二次世界大戦を経験した多くの人間が、警鐘を鳴らしている。ジャーナリズムに関わる多数が反対し、国会周辺では連日多くの市民が反対の声を上げている。国連機関を含め海外からも懸念が示されている。福島市で強行された公聴会では、7人の公聴人全員が反対を表明した。しかし政治の場においては、これらの声は無視された。これが民主的手続きとは言えるのか。「特定秘密の保護に関する法律」は、その成立の過程からみても憲法の理念に反する。

 秘密の範囲、取材の制限、秘密取扱者のプライバシー、漏洩への厳しい罰則、「知る権利」に対する多くの懸念は全く払拭されていない。それどころか懸念は深まるばかりである。憲兵と特高警察に怯え、物言えぬ戦前の社会が作られるとき「そうします」といった者はいない。「そうはならない」と聞きながら、「そうなってしまった」時の悲劇は計り知れない。多くの人々がそのことを指摘している。憲法が、基本的人権として「知る権利」を規定するのは、それが民主主義を構成する重要な要素だからだ。そのことなくして民主主義は成立しない。「情報は国民の財産」である。政府・官僚に情報を隠蔽し廃棄する権限はない。

戦争の遂行を目的とした戦前の社会は、大本営の発表のみが事実とされ、連戦連勝の虚偽報道のみが続く中で、出征兵士の多くは白木の箱で帰還した。日本国内は空襲の嵐に襲われ、沖縄では住民を巻き込んだ凄惨な地上戦が、最後には原子爆弾が広島・長崎に落とされた。日本の戦争犠牲者は310万人とも言われている。アジア諸国の多くが日本の侵略戦争の犠牲となり、その数は1900万人とも言われる。
これらの犠牲の上に、日本は国民主権、平和主義、基本的人権の尊重を3大原則とする民主憲法を手に入れた。戦後68年、日本は侵略戦争の反省に立って憲法を守り続けてきた。侵略国家であった日本は、戦争をしないことで世界の信頼を醸成してきた。New York Times は11月29日に「秘密保護法案によって日本は戦後の平和主義から離脱するのか」と主張している。これは、多くの国の偽らざる感想に違いない。戦後培ってきた日本の信頼を失いかねない事態である。

日本国憲法と民主主義を基本に、平和に徹してきた戦後社会が重大な危機に瀕している。平和フォーラムは、歴史に学ぶことなく、戦前・戦後を通じて国の名の下に失われた多くの「命」を踏みにじる安倍晋三内閣の姿勢を許すことなく、憲法に示された市民社会の権利を守るために全力で闘う。日本社会のみならず、全世界の平和勢力を糾合し、日本が決して再びアジアの脅威とならないために、全力で闘う。
日本国憲法は、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意し」「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」としている。このことを、私たちは決して忘れてはならない。

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