「特定秘密保護法案」に反対する声明

2013年9月24日  フォーラム平和・人権・環境  代表 福山 真劫

  警視庁テロ捜査情報流出や尖閣ビデオ流出事件を契機として、有識者会議が開催され報告が出されるなど、秘密保全法制については政府内部での検討が行われてきましたが、安倍晋三内閣は9月3日、「特定秘密保護法案」の概要を示し、パブリックコメントを9月17日に締め切り、10月15日開会の臨時国会で成立をめざすとしています。
 本法案は、国家安全保障会議とセットとして成立させ、集団的自衛権を具現化する「国家安全保障基本法案」の呼び水となる法案です。憲法の理念を法律でねじ曲げ、平和主義をないがしろにし、戦争実行のためにする政治的策動です。
 国民が国政に参加する権利は、「国民の知る権利」によって成り立っています。憲法21条「表現の自由」の条文は、広くはこの「国民の知る権利」を保障するものであり、「特定秘密保護法案」は、「国民の知る権利」を真っ向から否定しています。 「秘密にできる権利」を高め、情報操作する権能を強くする国家ほど、戦争をたやすく出来る国家であることは疑いようもありません。
 「特定秘密保護法案」は、日本社会の今後の在り方を左右するものであり、歴史の反省の上に立ち、断じて許されるべきものではありません。
  平和フォーラムは、以下の視点から、「特定秘密保護法案」に反対します。
①秘密の範囲が、政府の恣意的判断で広がりかねないこと。特定秘密に「公共の安全および秩序の維持」の概念を差し込み、国家の無制限な恣意的判断を許している。特定秘密を指定するのが当該行政機関とされていることからすると、重要な国家情報に関して、恣意的な情報統制・情報隠しが、より容易にできるおそれがある。
②「公共の安全」「秩序の維持」が、民主主義よりも高い価値であるという社会規範を広めようとするものであること。
③国の重要な情報ほど、秘密にされ、また秘密にされる期限が限定されず、無期限・非公開などの措置を可能にし、「秘密にしたまま」担当省庁の判断で廃棄され、歴史的記録からも抹殺される可能性があること。
④「軍機保護法」などによりきびしく報道が規制された戦前の軍国主義社会を考えると、国民の知る権利は民主主義の原則であり、そのことをないがしろにする法制度は現代社会に相容れないこと。
⑤公務員には懲役10年の最高刑が示され、国民の不利益に対する内部告発などは全く不可能になること。公務員に対する報道機関の取材も制約され、結果として国民の知る権利が侵害されるおそれがある。
⑥国会議員の全てに情報の共有が保証されず、一部与党や官僚による情報の占有が危惧されること。
⑦特定秘密を取り扱う人のプライバシーについて、公私を問わず、調査し管理する「適性評価制度」が提案されており、秘密を取り扱う人への思想統制、差別、人権侵害が起こるおそれがあること。 

 集団的自衛権を容認し、米国と一体となって戦争をするための「国家安全保障基本法案」の第3条2項において「教育、科学技術、建設、運輸、通信その他内政の各分野において、安全保障上必要な配慮を払わなければならない」、また、3項において「我が国の平和と安全を確保する上で必要な秘密が適切に保護されるよう、法律上・制度上必要な措置を講ずる」とされており、「特定秘密保護法案」と「国家安全保障基本法案」は、一体の関係にあります。 

 「武力で平和はつくれない」を掲げ、徹底して憲法の平和主義を具現化するとりくみをすすめてきた私たち平和フォーラムは、憲法理念に反する「特定秘密保護法案」および「国家安全保障基本法案」の成立阻止に向け、全力でとりくんでいくことを決意します。
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