国民保護実動訓練に対する抗議声明発表(11月9日)

2009年度国民保護実動訓練に対する抗議声明

Ⅰ.はじめに

昨日(11月8日)午前8時から石川県と七尾市、そして国(内閣官房、消防庁)は、県庁や七尾市内(七尾国家石油ガス備蓄基地、七尾マリンパーク、崎山地区、北大呑地区、東湊小学校などを会場として、県内外の93機関、約1,000人の参加の下、県内では3回目、七尾市内では2回目となる国民保護実動訓練を実施した。

Ⅱ.2009年度実動訓練の特徴

1.国民保護計画は、そもそも武力攻撃事態対処法を上位法とする有事法制の中に位置づけられる国民保護法を根拠とするものであって、県民を戦時体制に巻き込んでいくものである。今回の実動訓練は、過去2回の実動訓練同様、まさにこのような計画の実効性を確認するものであり、基本的な問題点として以下3点を指摘する。

①自衛隊を街に登場させ、日常生活の軍事化を押し進めている。

 崎山地区の福浦集会所、三室町会館、蓮照寺の各一時避難場所からマリンパークへの住民避難にあたって、陸上自衛隊の軽装甲機動車が住民を乗せたバスを先導している。自衛隊の活動をアピールすることを優先したこのようなシナリオは、ジュネーブ条約の軍民分離の原則に照らしても妥当ではない。避難住民をかえって危険にさらす行為であり中止すべきである。

②住民の参加を事実上強制し、戦争訓練に巻き込んでいる。

住民参加の狙いは、住民に周辺諸国からの侵略はあり得る、テロ攻撃はあり得るということを日常的に意識させ、自衛隊や海上保安庁が武力で「テロ」や侵略を阻止できるとアピールすることにある。参加の呼びかけにあたっては、町内を班割し、親戚や隣近所に呼びかける体制がつくられている一方で、訓練の目的を明示せず、単なる避難訓練とだけ伝えるケースもあり、人集め優先の方針となっている。

③いたずらに「テロ」の危機感をあおり、近隣諸国に対する敵対意識を高めている。

 サイレンや町内放送、パトカーや消防車による爆発物発見の放送にはじまり、化学剤処理訓練からテログループの制圧に至るまでの一連の訓練は、近隣諸国への脅威を煽るに十分なシナリオである。特に前回に続いての海上保安庁巡視艇「はまゆき」と「おぎかぜ」による不審船の追跡、そして岸壁前での挟み撃ちによる銃撃(空砲)は、「テロ」に対しては武力だと市民に対し大々的にアピールする場となっている。

2.さらに加えて、今回の実動訓練の新たな問題点として以下5点を指摘する。

①はじめて国が主催団体として参加。

国は自治体に対し訓練内容の検討段階から詳細に指示を出している。住民保護は自治体の役割という建て前を否定し、有事体制の国一元化を図ったものである。

②参加機関が拡大。

前回の52機関から93機関へと大幅に拡大した。国関係機関や報道機関、交通・通信機関、医療関係機関、住民組織などを巻き込んだ総動員態勢的な訓練に向かっている。

③住民参加の拡大。

今回の訓練では前回の230人を大きく上回る400人を目標に参加者を募る方針が示され、避難区域を崎山地区に加え北大呑地区にも拡大し、一時避難所も前回の11ヶ所から14ヶ所へと増やして実施された。最終的に私たちの監視行動の集計では避難所まで行った住民は前回並みの人数にとどまったが(一時避難場所で帰った人もいる)、住民を戦争訓練に巻き込むことは許されないということを引き続き強く訴えたい。

④七尾市で2回目の実動訓練。

3回も実動訓練を実施している都道府県は稀である。また、石川県国民保護計画に記載された主要施設は七尾国家石油ガス備蓄基地も含め県内各地に23施設ある。こうした中、七尾市で訓練を繰り返すのは異常である。七尾市内では2年前に武器を携行した陸上自衛隊員の徒行訓練も街中で強行されている。重要港湾である七尾港のテロ対策での活用を視野に、訓練を繰り返すことによる住民の意識変化を意図していると思われる。

⑤学校施設の利用、子どもたちの参加。

 東湊小学校が避難施設として使用された。今回は休日であったとはいえ、県内の訓練での学校施設の使用は初めてである。地震や台風などの自然災害対策とは決定的に意味合いが違うことを訴えたい。また、今回の避難訓練では複数の子どもたちの参加が確認されている。子どもたちに「テロの恐怖」、周辺諸国に対する敵対心を植え付けるものであり、平和教育推進の観点から許されることではない。また、子どもたちを巻き込んだ戦争訓練につながる怖れもあり、断固抗議する。

Ⅲ.石川県平和運動センターの取り組み

1.石川県平和運動センターは2003年の武力攻撃事態対処法など有事3法、2004年の国民保護法など有事関連7法に対し、戦争をする国づくりを進め、国民を戦争に巻き込むものであるとして立法化に反対してきた。2006年1月に策定された石川県国民保護計画に対しても具体的な問題点を指摘し、計画策定に反対をしてきたところである。
2.2006年に金沢港を舞台として実施された第1回の実動訓練、翌2007年七尾市内で実施された第2回の実動訓練に対し、石川県平和運動センターは自治体に対する申し入れや抗議集会をおこない、訓練中止を求めてきた。さらに訓練に対する監視行動も実施し、訓練の実態が住民を巻き込んだ戦争訓練であることを明らかにしてきた。
3.本年の訓練実施にあたっても、過去2回の実動訓練の問題点を踏まえ、10月27日に石川県および七尾市に対し訓練の中止を申し入れてきた。さらに街宣行動やビラの配布等を通じて七尾市民に向けて訓練反対と訓練への参加拒否を訴えてきた。にもかかわらず、昨日、訓練が強行されたことは非常に残念であり、あらためて強く抗議するものである。
4.昨日の訓練に対して、石川県平和運動センターは当日9時30分から七尾労働会館で約200人が参加し「武力で平和はつくれない!国民保護実動訓練反対11.8七尾集会」をおこない、引き続き市内のデモ行進を実施し、七尾市民に訓練中止をアピールした。また、訓練実施会場すべてに監視行動班を配置し、監視行動を実施した。

Ⅳ.さいごに

  国民保護法など一連の有事法は自公政権下、ブッシュ政権追随の中で制定されてきたものである。鳩山新政権は東アジア共同体を掲げ、アジア重視の外交方針を示している。近隣諸国への敵対心を煽りたてる今回の戦争訓練が時代の流れに逆行していることは明らかである。石川県平和運動センターは今回の実動訓練強行に対し抗議し、引き続き実動訓練の問題点を多くの県民に訴え、このような訓練が二度とおこなわれることのないよう大衆運動をさらに強化していく決意を表明する。
  
2009年11月9日

石川県平和運動センター

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