2009年6月11日
内閣総理大臣
麻 生 太 郎 様
石川県平和運動センター
代 表 柚 木 光
抗 議 文
麻生内閣は今年3月、ソマリア沖での海賊対策を名目として海上自衛隊の護衛艦2隻を派遣しました。自衛隊法の明らかな拡大解釈であり、平和憲法の空洞化につながるものであるとして石川県平和運動センターとしても抗議文を送付してきたところです。
ところがその後も麻生内閣は海上自衛隊P3C哨戒機2機を派遣し、さらに機体警護のために陸上自衛隊、物品や人員の空輸のために航空自衛隊も派兵しました。海外ではじめての陸海空すべての自衛隊の統合運用となります。これらの動きに法的な根拠を与え、さらに活動を拡大させようとするのが海賊対策法案です。現在、参議院で審議中ですが、政府与党は参議院で否決後、またもや衆議院で再可決をする方針と報道されています。石川県平和運動センターは、憲法前文と第9条に示された平和主義を守る立場から、海賊対策法案の成立と、ソマリア沖・アデン湾での自衛隊の活動に反対します。法案の撤回と自衛隊の撤退を求めます。
海賊対策法案は平和憲法に反する数多くの規定が盛り込まれています。①外国船舶を含めたすべての船舶を対象とするため、海賊との接触機会が増え、殺傷する危険性も増大します。②武器使用基準が緩和され、任務遂行のための危害射撃、先制攻撃を容認しています。③海賊行為の定義があいまいで、誤認事件発生の可能性があります。④海外での自衛隊の活動について、地理的な制約がなくなります。⑤活動期限のない派兵恒久法です。⑥犯罪である海賊行為に対する司法手続きが困難です。⑦国会の承認手続きが欠如しています。このように、法案は自衛隊の活動領域を憲法や日米安保の枠からさえも大きく逸脱させ、しかも従来のような特別措置法という例外扱いもしていません。
法案では、第一義的に海賊対策は海上保安庁の役割としていますが、衆議院での審議の過程で、麻生内閣の本音が明らかになっています。海上保安庁は東南アジアで海賊対策の実績をあげ、民間船舶と海賊対策の訓練も積み重ねてきましたが、麻生内閣はこれらを評価せず、今後の海上保安庁の充実についても検討していません。海賊がロケットランチャーを保有していることを主な理由として自衛隊しかないとしていますが、ロケットランチャーの威力さえ把握していません。まさにはじめに自衛隊派兵ありきです。
自衛隊派兵の狙いは、海上輸送の安全確保(海賊対策)という国益を掲げての初めての武力行使の既成事実づくり、派兵恒久法への地ならし、なし崩し改憲、そして米軍を中心とした他国の軍との集団的自衛権行使にあります。
このような海賊対策法案は絶対に容認することはできません。衆議院の再可決はせず廃案にすべきです。石川県平和運動センターは最後まで海賊対策法案に反対し、ソマリア沖・アデン湾から自衛隊が撤退するまでたたかい続けることを表明します。