2008年石川県原子力防災訓練に対する調査行動(11月14日)

2008年石川県原子力防災訓練に対する調査行動(11月14日)

● アンケート結果・pdf資料 ●


第9回原子力防災訓練・住民アンケート結果

第9回原子力防災訓練のアンケートは、前回初めて訓練対象となった高浜地区と、毎回訓練対象になってきた福浦地区で実施し、283人の地区住民から別表のとおりの回答を得た。福浦では約3割の世帯、高浜では2割の世帯から住民の声を聞くことができた。

1.高浜の参加意識は高い―福浦は参加者の固定・選別を改めて呼びかけを 【問1】

 高浜地区では、訓練に「参加する、参加したい」が40%。「参加したいが、仕事や家事の都合でできない」28%を合わせると7割に近く、やはり訓練への希望、参加意識は高い。
問題は福浦。「参加するつもりはない」人が38%もある。理由ははっきりしていて、いつも老人会などの役員が対象で、呼びかけられたことが殆ど無いため。毎回の訓練経験を活かすためにも選別・固定化を改め、ひろく参加を求めるべきではないか。弁当の都合もあると聞いたが、そうした慣行はやめれば良いのでは。

2.老人家庭など災害弱者に対応する訓練が望まれる 【問1】

また、福浦では「都合で参加できない」人が4割もある。大半は仕事や家事ではなく、丹和の急坂を上り下りして参加するのは大変という身体の事情だった。
能登半島地震の際、老人家庭への救援は阪神大震災と比べ非常に迅速だったと聞く。その経験がなぜ原子力防災訓練で活かされないのか。小浦地区の不在確認訓練が今回の目玉だったが、最も災害弱者である老人家庭への対応も今後の訓練の課題であろう。

3.訓練も9回を迎えたのに否定的評価・反応が増えている 【問2】

 【問2】の結果は率直に言ってショックであった。①「やはり避難訓練を」、②「現行でも意義あり」のどちらもが、前回の22%、35%から12%、22%と大幅に減り、「何をしてもムダ」が30%に達した(福浦で40%、高浜でも前回の20%から28%に)。「分からない。その他」も前回の10%から25%と、倍以上に増えている。
原因は2つ。1つは臨界事故隠しと中越沖地震で、原子力防災計画が初動時から機能しなかった事実が強く印象に残っていること。2つ目は訓練を重ねても、「訓練のための訓練で実際にそぐわない」という声が住民の中に強くなっていることである。(しかし、福浦では原発がより近くにあることから、避難訓練を望む声は22%あり、「現行でよい」17%より多い)

4.行政も本気だと示すため、本格的な避難訓練の実施を 【問2】

「重大事故時には何をしてもムダ」という人は、毎回2割近くはあった。行政不信や原子力災害への認識不足が原因で、諦めになってしまったものだ。それが9回も訓練を重ねた今回、3割に急増した結果を行政も深刻に受け止めてほしい。このまま現行の訓練を重ねれば重ねるほど、住民の訓練離れの意識が強まるのは避けられないからである。
福浦では、集合した住民を除染訓練を行なう武道館へ運ぶバスが来ない、やっと来たが武道館の場所を知らないという事態があった。いくら訓練とはいえ、福浦側からは原発に近づくことになる。真剣に住民の避難を考えていないことがお粗末な事態の背景にある。
県と各自治体は、退避(=住民を町内に閉じ込める)ではなく、放射能災害から住民を守るという本来の目的にたって、真剣に避難計画を考え実施するべきだ。原発運転能力の劣化、安全軽視の体質が深まっている上に、原発震災の危険が迫っているからである。

5.大半の人が原発は危険・不安を持っているのだが・・・【問3】

 タービン事故、臨界事故隠しによる長期停止、能登半島地震・中越沖地震もあり、「原発は安全、必要」という人は前回の27%から12%に激減した。「地震国日本に原発は危険」とする人31%はもちろん、その他の人も原発は危ないと不安を持っている。
 しかし、志賀町の状況は複雑だ。「わからない。その他」22%は、「危険だが、表立って反対と言えない、どうにもならない」と、「危険だが、電力は必要」に分かれている。また旧志賀町地区では、各町会で使い道の議論が終わり、いよいよ41億円もの巨費が町会に下ろされる。(旧富来町・福浦は交付されないが、北電から漁協への補償金が下りている)
「不安はあるが財政に寄与」35%は、こうした事情を反映している。原発の安全管理と国のチェックのずさんさが明らかになっていても、「原発の金への依存」が強まっている。それがまた、国・電力の安全軽視を強めるという悪循環が深まっているのである。

<アンケートに寄せられた住民の声>

●防災訓練、防災対策についての意見

1.屋外の防災無線は聞き取りにくい。(3件)
2.訓練が知らされていない。参加も全員へのよびかけがなく、役員中心の指名参加では意味がない。今日の調査や報道ではじめて知った。(福浦で多数)
3.退避訓練ではだめだ。とくに福浦では学校では原発に近づくことになる。退避は昔の防空壕に入る訓練のようでムダである。避難訓練だというが近すぎる。(4件)
4.船員時代、きびしい防災訓練をうけたが、それでも実際の事故時にはミスが起きた。訓練は繰り返し必要だし、もっと実効性のある具体的な訓練が必要だ。
5.自分は高齢で体の都合も悪く、退避訓練参加もできない。病気なので無理。歩行困難、歩くのは辛い。(老人家庭で多数あり)
6.事故隠しをされたのでは、訓練そのものの意義がなくなる。(2件)
7.事故の規模を小さく想定してやっても意味が無い。
8.仕事がある。参加を広げようと思うなら、やはり休日に実施を。(4件)
9.能登は老人が多い。自力で避難できない人への対策が無いから、参加しない人が多くなるのではないか。
10.安全と信じているので参加しない。北電も努力している。地盤は大丈夫だ。(3件)
11.地震対策をしっかりと!地震があればやはり不安。地震と原発事故が重なれば、逃げられない。(4件)
12.マンネリ化、真剣さが薄れている。防災ヘリなど、県や町のパフォーマンスだ。(2件)

●原発問題全般についての意見

1. あくまでも安全第一、事故のないことを願う。(原発への賛否を問わず多数)
2. 原発はやはり恐い、不安であり財政の問題ではない。原発は要らない。放射能は目に見えず不安。核廃棄物ができてしまう。何十年後にはどうなるのか心配だ。(7件)
3. 8年前の事故がなぜ発覚したのか?北電内部の体制が問題。能登半島地震で震度計が振り切れたのは大問題だ。
4. 事故を知らせないなど隠すことが多すぎる。信用できない。(2件)
5.危険だと思うし不安はあるが、できてしまったものには何も言えない。(4件)
6.安全だという前提で、この地で暮らしている。
7.危険だとは思うが、電力の必要性もあると思う。(3件)
8.危険・不安だと思うが、町の財政に寄与している。
9.地震はどこでも起きるので、それだけでは原発がとくに危険とは言えない。
10.現状は不安だが、やむなし。太陽光など安全な発電方法のより有効な開発の完成を祈るのみである。

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