志賀原発「暴走事故」と事故隠しに対する声明(4月13日)

2007年4月13日

志賀原発「核暴走事故」と事故隠しに関する声明

石川県平和運動センター
代 表 嶋垣 利春

志賀原発「臨界事故」について北陸電力は3月30日と4月6日、2本の報告書を提出しました。これを受け、一部には運転再開への道筋をつくっていこうという動きも出始めたように思えます。しかし、この2本の報告書は、真相究明にはほど遠く、とても再発防止策とは言えない内容であり、ここに石川県平和運動センターとしての見解を表明します。

Ⅰ 北電の報告書に対する評価について

1.不正は出尽くし、すべてが明らかにされたか?

さっそく4月6日には、日立担当者に制御棒が3本抜けた場合の解析を依頼し、さらにそれについての口止めを要求していたことが日立の報告書で明らかとなっています。4月11日には日本原子力技術協会が「即発臨界」という各暴走状態に陥った疑いがあるとの解析結果を明らかにしました。この他の事実関係においても、本店の関与が本当になかったのかということも含め、まだ隠していることがあるのではないかとの疑念は消えません。他電力の報告書の提出に合わせ、急ごしらえでまとめた感は否めません。

2.核暴走事故だった

 今回の事故は、通常の原子炉容器の中で起こる臨界を運転員がコントロールできなくなったという意味での臨界事故ではなく、即発臨界という、あってはならない急激な核反応が生じており、核暴走事故との表現に変更すべきです。

3.再発防止策について、メーカー(日立)との関係がまったく記載されていない

志賀原発のこの間のトラブルは、北電の日立任せの姿勢と日立の杜撰な品質管理体制によるものがほとんどです。今回の事故の手順書の作成や当日の試験にも日立の作業員が関わっています。そういう意味で、日立との関係が記載されていない今回の報告書はきれいごとを並べたてた、絵に描いた餅だといわざるをえません。

4.原子力本部の志賀町移転は隠ぺい体質の改善にはつながらない

 北電は事故隠し問題の原因分析として下記3点が挙げていますが、いずれも原子力本部移転で解決する問題ではありません。
① 現場で判断した
そもそも、緊急停止について通報するかしないかの判断をする権限は発電所の現場にはありません。安全協定に照らせば、「停止することが必要になったとき」に直ちに当直長が連絡責任者を通じて通報すべき事項であり、今回は事故直後から権限外の判断をしています。
② 経営陣に伝わらなかった
では、経営陣に隠ぺい体質はないのでしょうか。隠ぺいにかわった発電所次長が取締役となり、8年間、隠したままでした。今回の問題発覚も彼から明らかにされたわけではなく、1人の社員の告白から始まりました。
③ 8年間表にでなかった
この間、何度も公表する機会があったにもかかわらず現取締役自ら隠し続けています。さらに現取締役含め10人が臨界との認識をもちながらこの8年間隠し通してきました。つまり経営陣から現場の作業員に至るまで隠ぺい体質が染みついているのです。とりわけ臨界事故時には原子力部門の幹部にさえ事実が伝えられないという(本当かどうか疑わしいが)、異常さです。
以上のように、原子力本部の志賀町移転は、隠ぺいにつながった上記の問題を何ら解決しません。原発のそばに人身御供のように幹部を常駐させて、運命共同体として安全対策の向上をアピールするのは住民に対するごまかしでしかありません。
8年前、原子力本部が志賀町にあったならば、このような隠ぺい工作はおこなわれたでしょうか。原子力本部の志賀町移転はなれあいの原子力ムラの拡大であり、今後も経営陣ぐるみの隠蔽工作に走らせない保証はどこにもありません。

5.通報義務違反の重大性に触れられていない

 地元住民から見た今回の事故の最大の問題点は、「核暴走事故を直ちに国、自治体に通報せず住民の生命を危険にさらした」ということです。原発防災の原則は「1分でも1秒でも早く遠くへ逃げる」であり、通報は止めてからではなく「停止することが必要になったとき」にただちにおこなわなければなりません。
報告書では「臨界事故の技術的再発防止策」と「事故隠しの再発防止策」は記載されていますが、臨界事故を直ちに通報しなかったことの重大性について、その認識も、反省も、その原因究明もありません。今後の対策として「迅速かつ確実な対外通報・報告体制の整備」が盛り込まれたが、事故隠し防止対策という意味合いからであり、対象は第一報のみ。これでは幹部がそばに来ても、万が一のときには幹部にだけ緊急情報を伝達し、幹部と自分たちだけが逃げるでしょう。

Ⅱ 北電に対する処分について

1.原子炉設置許可の取り消しを!

すでに甘利経済産業大臣が「点検で安全性が確認され、現状では問題ない。停止命令には該当しない」と発言していますが、今回、経産省が停止命令を出した判断や、今回の報告書の内容について保安院が精査し、保安院独自の報告書をまとめる作業をしていることに鑑みれば大いに矛盾した発言と言わざるをえません。
今回の事件は、引継を定めた保安規定第14条、制御棒の操作を定めた第32条、反応度停止余裕を定めた第33条、異常時の措置を定めた第42条、異常時における原子炉の手動停止を定めた第43条、記録について定めた第90条など数多くの保安規定に違反し、あるいは抵触することは間違いありません。
以上の保安規定違反に加え、1号機建設段階以降の数多くの事故で明らかなように、品質管理を日立に丸投げしてきた北電にはそもそも原子炉等規正法24条にいう「原子炉の運転を的確に遂行するにたりる技術的能力」を擁する事業者に該当しないことは明らかであり、原子炉設置許可の取り消しをすべきです。

Ⅲ 国の原子力行政の責任について

1.運転管理専門官の責任を明らかにし、謝罪せよ

当時(8年前)の運転管理専門官が、志賀原発の運転の監視、点検の役割を全く果たしていないことが明らかになりました。組織が変更になったから免罪されるものではなく、国はその責任を明らかにし、謝罪すべきです。

2.安全審査の誤りを認めよ

 制御棒3本の脱落は想定されていません。想定の誤りを認めるべきです。

3.電力会社の隠ぺい体質を助長する保安院の秘密主義をなくせ

電力会社を指導すべき立場にある保安院みずからに隠ぺい体質、秘密主義があります。これでは真相究明ができないばかりか、電力会社の隠ぺい体質を温存、助長することになります。まず、保安院の報告書作成にあたっての審議状況を国民の前に明らかにし、透明性を確保すべきです。

Ⅳ BWRの構造的欠陥について

1.保安院はBWRの構造的欠陥を認めよ

技術的再発防止策として、操作手順の改善、運用管理面の改善、設備対策がまとめられたが、基本的に操作を誤ったら制御棒が抜け落ちるというBWRの構造的欠陥を前提にしたものです。
その後あきらかになったBWRの制御棒の脱落、護送乳児湖は明らかにされただけでも下記の通りです。
福島第1-3脱落(78年)、第1-5脱落(79年)第1-2脱落(80年)、女川1脱落(88年)、福島第1-2誤挿入(91年)、浜岡3脱落(91年)浜岡1脱落(92年)、福島第2-3脱落(93年)女川1誤挿入(93年)、浜岡2誤挿入(94年)、柏崎刈羽6脱落(96年)、浜岡3脱落(96年)、福島第1-4脱落(98年)、志賀1脱落(99年)、柏崎刈羽1脱落(00年)、浜岡1脱落(00)、女川3語挿入(03年)、柏崎刈羽3誤挿入(05年)、福島第1-2誤挿入(06年)
このように繰り返される脱落・誤挿入事故は、まさにBWRの構造的欠陥を示しており、保安院は直ちに全BWRの運転停止指示を出すべきです。

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